最終話 シャークバスターズ
一年後の、網底島の海岸。
「陽葵! そっち行ったぞ!」
「はい!」
鯱の声に応じた陽葵は、砂浜の監視台の上から毒矢を射かけた。浅瀬から陸に乗り出そうとするシュモクザメの脳天に、その矢は突き刺さった。
今でも、悪霊は力を弱めながら存続しているのだろう。あの件から一年経った後も、網底島などの離島では奇妙なサメが現れることがある。
同じ頃、東京都の立川市では、ドナルドが女の子と一緒に映画館デートとしゃれこんでいた。ポニーテールが特徴的なこの女子は、ガールフレンドの理沙である。
「あたしこれ見たかったんだぁ」
「これ……?」
「『最恐西洋人形2 デス・パペットVSエクソシスト』! おっきなフランス人形がチェーンソーで人を追っかけるやつ! これ初代が面白かったんだよね~グロくて」
「ええ、グロいデスか……」
理沙は少々変わった映画の趣味をしているようで、ドナルドの顔には戸惑いが浮かんでいる。
二時間後、映画館から出てきたドナルドは、顔を青くしていた。対照的に、理沙の方は満足げである。
二人は駅から離れた住宅街を歩いていた。すっかり日も暮れていて、白い街灯が寂しく道を照らしている。
公園の近くを通りかかったとき、不意にドナルドはよからぬ気配を感じた。恐る恐る、公園の公衆トイレの屋根に視線を移すと……
「で、出たぁ!」
尾びれの代わりにタコの脚を生やしたシュモクザメが、トイレの屋根に乗っていた。腰の刀を抜こうとしたドナルドであったが、自分がもうサメ狩りをやめていて、帯刀もしていないことに気づいた。
このままでは、自分も理沙も死ぬ……予期していなかったサメの襲撃に、ドナルドは恐れおののいた。
そのとき、ドナルドの背後から、聞き覚えのある声がした。
「やはりここにいたか……
「な、凪義サン!」
チェーンソーの唸る音とともに現れたのは、左目に眼帯をした葦切凪義であった。
必殺! シャークバスターズ 武州人也 @hagachi-hm
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