最終話 激闘の後

 戦いから一週間後――


 サメ狩り隊の拠点となっている木造家屋の二階で、怪我から復帰した凪義は一人、椅子に腰かけていた。左肩に開けられた大穴は、すっかり消えていた。傷の治りが異様に早いのも、鮫人間であるからだろう。

 凪義はそっと、腕をまくって見た。ざらついた鮫肌は、すっかり消えてしまっている。


 大鮫魚メガロドンの血を飲んでから、鮫肌が表に現れることはなくなった。それがサメ化の完全な停止を意味しているのか、それとも一時的なものに過ぎないのかは分からない。

 

 ……元々、凪義はあの戦いで蓮と刺し違えるつもりでいた。自分はもう鮫人間なのだから、生きている資格などない。ゆえに命を捨てる覚悟で戦ってきた。けれども自分は生き延び、蓮の生死は不明である。

 自分の戦いは、人間がサメを殺すのではなく、サメがサメを殺すのと同じことだ。だからこそ、人間には背負えないような罪も背負うつもりで、なりふり構わず戦ってきた。自分は鮫人間で、許されざる生き物だ。ことが終われば、潔く自らの命に決着をつけるつもりでいる。


 凪義はまくった袖を元に戻した。ちょうどそのとき、ポケットに入っているスマホが鳴り出した。サメ狩りの諜報員からの電話だ。


「頭が六つあるサメが火を噴いて暴れています! 場所は……」


 まだ死ねない……報告を受けた凪義はチェーンソーを掴み、階段を降りていった。

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