第14話 プランB フロム・ディープスペース

 林を超えた鯱は、ある場所を目指して走っていた。

 彼が目指していた場所……それは、山の麓から斜面にかけて設置された、ソーラー発電所であった。


 鯱の体力は、もう限界に近づいていた。気力で無理矢理体を動かしているような状態である。それでも、この少年は逞しい腕を振って走り続けた。サメと戦い、サメをうち倒す。ただその義務を果たすために。


 巨大ザメは、鯱の背を追っていた。その巨体が、とうとうソーラーパネルを押し潰した。


 ――巨体を襲ったのは、強烈な電流であった。ソーラーパネルは太陽の光がある限り発電しており、破損したパネルに触れれば当然感電する。しかも、巨体によって多数のパネルが破壊されたため、流れる電流も相当なものだ。


 凪義が出発前に教えたプランB……それは、ソーラー発電所に誘い込み、敵を感電させることだ。出発前ではまだ敵の切り札の正体は分かっておらず、また誘い込むまでの被害も大きくなるだろうことから、あくまでプランBとしたのである。


 爆発に耐えた巨大鮫も、電流には耐えられなかった。蓮が満を持して持ち出した大鮫魚メガロドンは、ここに絶命したのであった。


***


 島の南岸沿いの地区は、甚大な被害を受けた。幸運だったのは、死者を一人も出さなかったことである。それは住民の避難が迅速であったことと、巨大ザメが避難所を襲わなかったことによる。まこと不幸中の幸いというより他はない。


「凪義サンに鯱サン、無事だったんデスね!」


 体育館でサメ狩り三人が一堂に会したのは、その日の夜のことであった。鮫人間との戦闘を終えたドナルドが、凪義と鯱を出迎えた。


「……これが無事に見えるのか?」

「オレだって大変だったんだぜ。デッカイのにぶっ飛ばされるしよぉ……」


 凪義も鯱も、すっかりボロボロであった。その姿を見れば、一目で激闘ぶりが分かる。

 体育館には、あちこちに灰山ができあがっていた。それを見た凪義は、この場で何があったかを察した。


 ――蓮、僕はお前を許さない。


 蓮によって鮫人間に変えられなければ、あの灰の山は築かれなかった。凪義は拳を握りしめて、怒りに身を震わせたのであった。

 

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