必殺! シャークバスターズ

武州人也

葉栗鼠島編 バトル・オブ・シャークアイランド

第1話 おかしなサメたち

 唸り声をあげる回転刃が、サメのどでっ腹を切り裂いていく。勢いよく噴出した鮮血が、深緑の詰襟を赤く染めた。

 サメが事切れたのとほぼ時を同じくして、血に濡れた少年――葦切よしきり凪義なぎは砂浜にへたり込んだ。血管の透けるような白い頬は紅潮しており、少女めいた華やぐ顔貌には疲労が見てとれる。潮風が静かに吹き寄せてきて、背にまで達する長い黒髪をやんわりと撫でていた。


「サメなのに地面に潜るなんて……」


 戸惑う少年。その傍らで、目尻の切れ上がった白髪の老爺が口を開いた。


「普通のサメに、こんな能力は備わっていない。これはサメだ」

「これが……僕の敵……」

「そうだ。これからお前が戦うクソったれのフカヒレどもだ」


 しわがれた声で語る老爺。その話を聞いて、凪義はぎりりとチェーンソーを固く握った。

 

「サメと戦うか、凪義」

「……はい、最後の一匹を殺すまで」

「ことが終わったら、ワシがお前の首をもらう」

「ええ、承知の上です」


 少年のまなこに、迷いはなかった。

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