え?そんな秘密があったの?
「一週間だけの恋人?……」
俺が聞く。
すると楓姉ちゃんが
「そうだよ」
と笑顔で答えた。
俺は歩きながら言う。
「駄目だよ。そんなの。結婚する旦那さんに申し訳ない」
俺は断った。
「でも、結婚するって言ってもデートもしたことないんだよ。その人と」
楓姉ちゃんが言った。
「でも、流石にそれは駄目だよ」
俺は笑って言った。
「安心して! 法律的には問題ないから」
と笑顔で楓姉ちゃんが言った。
「そういう問題では……」
ないんだけど。これは道義の問題だ。
「ねぇ。ユウくん。付き合ってる人いるの?」
楓姉ちゃんは聞いた。
「いな……いや、いるよ」
俺は言った。
「えっ?」
っと振り返る楓姉ちゃん。俺は段々イライラしてきた。何がやりたいのか。楓姉ちゃんは。
もうすぐ結婚するっていうのに俺と彼女になりたいなんて。普通に考えたらビッチじゃん。自分が結婚相手なら普通に引くわ。
正直ウサ先輩や葵のことを別に言わなくてもいいと思っていたがこうなりゃ言ってやる。
「いるよ。彼女くらい」
俺は言った。
「そっか」
楓はそう言う。俺に彼女がいないとたかをくくっていたのがバレバレだった。
「楓姉ちゃん。その相手の人どんな人なの?」
「……んーとね。20歳くらい歳上で大企業の会社役員やってるんだって。お見合いみたいな感じかなぁ。向こうの男性の方から私と結婚したいって言ってきて……って感じ」
楓姉ちゃんはそう言う。
「楓姉ちゃんはその人のことが好きなの?」
俺は聞いた。
「んー。分かんない。優しいと思うし、それに結構お金持ちだから親が結婚しろってうるさくて」
楓姉ちゃんは言う。
「結婚したい?」
「分かんない」
俺たちはしばし無言になる。俺は楓姉ちゃんの言葉の真意を計りかねた。結局結婚前にこの人で良かったのか分からなくなったってことか。それで俺と付き合うことで自分の気持ちを確かめたいってことかな。本当にその彼氏のことが好きなのか、それとも好きじゃないのか。
俺は少し気分が悪くなった。まるで俺が当て馬として利用されているだけのような気がした。
「楓姉ちゃんは一体どうしたいの?」
「分かんない」
……
なんなんだ一体。
「ねぇもっと楽しい話しようよ。せっかく帰って来たんだからさ」
楓姉ちゃんが言う。
「うん」
「学校どう? 楽しい?」
楓姉ちゃんが聞いてくる。
「ま、それなりに」
俺は言った。
「彼女ってどんな人なの? 教えて?」
ワクワクしたような顔で楓姉ちゃんが俺に言ってきた。
一体どっちなんだろ。葵の方かウサ先輩の方か。どっちが俺の彼女なんだろ
「あの……」
俺は言いかけると
「あーー凄い!」
と楓姉ちゃんが叫んだ。
「ここ大っきなショッピングモール出来たんだ。5年前は無かったよね。確か」
「うん。最近出来たから」
「ちょっと入ってみようよ」
「うん」
俺たちはショッピングモールの中に入った。
「うわっ! 凄い! メチャクチャ広いじゃん! こんな田舎にも出来たんだね」
店内をグルグル見回しながら言う楓。
「うん」
「ちょっとなんでそんなにテンション低いの!」
楓姉ちゃんが怒ってきた。
「いやだっていつも来てるし」
俺は言った。
「んんん!! もぅ!!」
なんだか楓姉ちゃんは怒っている。
俺たちはショッピングモールの中を歩いていた。
「あっ」
楓姉ちゃんがとある店の前で立ち止まった。その店はいわゆるアニメショップだった。
「……」
楓姉ちゃんは少しその場で立っていたが……やがて離れた。ん? なんだ。知り合いでも働いているのか?
「どしたの? 知り合いでもいるの?」
俺は聞いた。
「いや、そういうんじゃなくて……うーん……私本を出してるんだよね」
楓姉ちゃんが言う。
「本? えっ? 出版してるってこと?」
俺は聞いた。
うん。と楓姉ちゃんはコクリとうなずいた。
「え? 本って文字の本? それとも漫画? タイトルは」
俺は聞いた。そういうば楓姉ちゃんは昔から話作りの才能があった。子供の頃によく楓姉ちゃんの自作の作り話を聞いていた。その時、俺は子供だったので楓姉ちゃんは本気で天才だと思った。
その時の俺たちにはどんなアニメや漫画より楓姉ちゃんの口からでる物語の方が面白かった。
「タイトル……んーー! 付いてきて」
と言って楓姉ちゃんは俺の腕を掴んでアニメショップに入った。
色々なオタク向けの漫画やアニメDVDなどが置いてある。楓姉ちゃんは脇目も振らずにその奥に向かった。
「楓姉ちゃん! そっちは!」
おい! 18禁コーナーじゃねぇか!
俺はそこには入れないって。
「いいから!」
と行って楓姉ちゃんは俺を18禁コーナーに連れて行った。
色々な半裸の女の子の漫画やアダルトアニメなどが沢山置かれていた。俺は変な気分になる。
「ん?……」
なんだここは……えっ? 男同士のその……
なんだかイケメンの男同士がキスしているなんだか危ないゾーンに入った。え? ここで買い物するのか?
「あっ! ゆず先生の新作出てるんだ」
と言ってテンション上がり気味で楓姉ちゃんは言う。
そして
「これっ!」
っと言って俺にとある本を見せた。
それは……
『鬼畜メガネ上司と自己肯定感強めの新入社員。〜俺が骨の髄までお前の自己肯定感を消し尽くして俺に服従させてやる。お前が服従する相手は俺だ〜』
ってタイトルだった。
「えっ? なにこれは」
俺は戸惑う。
「これっ! 私が書いた本なんだ」
とうつむいて赤面しながら楓姉ちゃんは言う。
「えっ? なにこれは」
動揺していた俺はもう一度聞いた。
「これ? 内容は女性に対するセクハラが完全禁止にされた世界線なんだよね。それでも自分の支配欲を抑えきれない男性上司は、やはりと言うべきか幼い顔をした男性新入社員に当然の如くセクハラを敢行するのね。それで最後は立場が逆転してその新入社員がまた新しい新入社員をセクハラするって内容で。これ一部で結構人気があって」
楓姉ちゃんが俺に言う。俺は微動だに動かない。
「読者の方からは新入社員が堕ちていくさまがたまらないって言われてたんだけど……聞いてる?」
「えっ? あっ! えっ?」
楓姉ちゃんは腐女子になっていた。
◇
新作書きましたので読んでください!
うつ病でボロボロだった俺のところに姉妹が二人看病にやってきた。で、二人とも俺のことが好き?うえええええ!!?
https://kakuyomu.jp/works/16816700427633060712/episodes/16816700427633140355
面白いと思った方は★ハートフォローお願いします!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます