ウサ先輩の恋愛相談室
「相談ってなんだね」
ウサ先輩は突然の俺の相談にちょっと引いたように反応する。
「人生相談の人生相談ですね。僕がある人から人生相談を受けてそれをウサ先輩に相談するっていう」
俺は言った。
「うーーむ」
ウサ先輩は考え込む。
「ま、でも孕んでしまったものは仕方ないな。君も男だから気持ちは分かるが。若気の至りでついトチ狂って発射してしまったんだろ? だが……女の子は妊娠するものだからな」
ウサ先輩は言う。
ん? 何の話だ。
「なんでちゃんと避妊しなかったんですか! 酷いです! 悠斗くん!」
とミカゲが言う。
「いや、なんの話だよ! なんにも考えてない高校生カップルかよ!」
俺は突っ込む。
「それでぇ〜親にも相談出来なくてぇ〜あたしもうどうしたらいいのかぁ〜分かんなくてぇ〜。ぴえん。ぴえん丸。でもごめん! 優子ちゃん。俺責任取れないよ!優子ちゃん自分の体だろ!自分でなんとかしてよ!」
ってやつじゃないのか。ウサ先輩は女から男への声真似をシームレスにこなした。
「男の方、さいってい!」
ミカゲが叫ぶ。なんなんだ毎回このノリは。
「なんですか? そのバカな高校生カップルのモノマネは。ガキがガキを産む最悪のパターンじゃないですか。いやそうじゃなくて!」
俺は言う。
「知り合いの女性が悩んでるんです!」
「で、その内容とは?」
「BLです」
◇
俺は理科室に来ていた。ミカゲとウサ先輩が胡散臭そうに俺を見ている。ウサ先輩はビーカーに入れたコーヒーをアルコールランプで抽出していた。
「さてと話を聞かせてもらおうか」
ウサ先輩は言う。
「つまりはこうです」
俺は話し始めた。
楓姉ちゃんという知り合いがいること。最近結婚する予定とのこと。夢を諦めてそうになっていること。その夢とはBLだということ。それで俺がモヤモヤしていること。俺は全部言った。
「で、それで君は一体どうしたいんだね」
とウサ先輩は言う。
「あっ……それは……その」
それは考えていなかった。
「その楓さんは一体どうしたいって言ってるんだ」
ウサ先輩は言う。
「楓……さんは今のままでいい。結婚するつもりだって」
俺は言った。
「じゃあ問題ないじゃないか。その楓お姉ちゃんは結婚して幸せになる。君はその楓姉ちゃんとの関係を断ち切ってボクと幸せになる。全員ハッピーじゃないか」
ウサ先輩は言う。
「あ……あう……」
俺は言葉が出てこない。確かにそうかも知れない。ウサ先輩はグイッっとコーヒーを飲む。
「なんですか! ユウトくん! はっきり言ってください!」
ミカゲは言う。
「まるでボクはドラクエ5に出てくるフローラの気分だよ。せっかく縁談が決まりそうになってたのに、謎の幼なじみがやってきてそれを潰そうとする。一週間だけ恋人になってだと? ふざけるのもいい加減にしろよ。つまり結婚もしたい。でも、その前にちょっと恋愛ごっこも楽しみたい。幼なじみにいる私に気がありそうな子を利用して少しの間だけ恋愛を楽しみたいってことだろ?」
ウサ先輩はビーカーに入ったコーヒーを持ちながらそう言う。
「あっ……そうかも知れないです……けど」
確かに言われてみればそうかも知れない。楓姉ちゃんの行動だけ追ってみればそう受け取られても仕方ない部分もあるだろう。
「全く幼なじみは最強だね。しかし、ボクからすればその楓さんは最低だよな。ボクという彼女がありながらキミにちょっかいをかけてるんだろ? しかも、おめでたいことにキミはそれをボクに相談している。さぁボクはそんなデリカシーのないキミにどうやってボクの痛みを分からせたら良いと思う? とりあえず指の爪でも剥ごうか」
ウサ先輩はなんだか猟奇的だ。
「お手伝いします。ウサ先輩! 私ペンチ持ってきます! 人差し指が1番痛いらしいっすよ」
ミカゲがいった。
「やめてくれよ! 化学室で人体実験するんじゃねぇよ!」
俺は突っ込む。
「とりあえずその幼なじみと一発ヤッて別れましょう! 男の人ってHしたあと急に冷静になって、え? なんで俺がこんな女と……って思うみたいですから」
とミカゲは言う。
「なんなんだよ! それ! 無茶苦茶だろ!」
俺は言う。
「まぁしかしだ。これは中々ややこしいお悩み相談だぞ。その楓姉ちゃんも心から納得し、君も納得する。そんなアドバイスはあるハズないからな。ボクからアドバイス出来ることは……その楓さんの言い分をちゃんと聴け。だよな。その楓姉ちゃんが本当はどうしたいのか。君もよく分かっていない。そうだろ? だからちゃんとコミュニケーションをとってその人の言い分を聴きたまえ」
「ウサ先輩……」
なんだかんだ言って優しいんだな。アドバイスしてくれて。自分のことも顧みず。やっぱりいい人だったんだな。
「そうやってしっかりと話し合った方がいい。その……クソビッチと……」
ウサ先輩は容赦なく言う。
「ウサ先輩?」
いい人なのか?
「ま、確かにクソビッチですよね。ユウトくんを一週間レンタル出来ると思ってるんだから。あっその人のレンタルが終わったら私がレンタルしますのでよろしく」
ミカゲが言う。ん……なんなんだこの会話は……
◇
「ただいまーー」
俺は家に帰り靴を脱ぐ。するとリビングから女の笑い声が聞こえてくる。
「でさー聞いてくださいよー。でその子が私の好きだった人盗っちゃって。もう最悪ですよ」
「あーもう駄目だ。その女駄目! 男も全員バカばっか! こんなに可愛いのにあんたの魅力分かってないんだから!」
キャハハハハ!!
ん? なんなんだ。なんの会話だ。ガチャリ。俺はリビングに入ると俺の母親と楓姉ちゃんが酒を飲んでいた。え? まだ夕方くらいだぞ。
「おかえりーー。飲んでま~~す」
とビールを片手に楓姉ちゃんが俺に言う。
「あー! 悠斗お帰り! 今日はお母さんお休みだから! お金渡すからどっかで食べてきて」
と言って千円札をピラピラっと見せてきた。
「駄目ですよ。真知子さん! 千円なんてこいつに勿体ないですよ! 五百円で十分! 甘やかしちゃ駄目です!」
とゲラゲラと楓姉ちゃんは笑う。あの……昨日のしおらしい姿どこいったんだよ。
「分かった。外で食べるよ……」
俺はそう言い残すとリビングから離れた。
そして自分の部屋に戻る。
下のリビングからギャハハハと笑い声が聞こえる。
「クソっ! 心配して損した! ウサ先輩も親身になって話を聞いてくれたのに! 全然元気じゃないか! 今日一日ちょっと楓姉ちゃんの悩みに共感して落ち込んでたのに! 返せよ! 俺の時間」
俺はひとり言をつぶやく。
トントン 俺の部屋のドアがノックされる。
「あぁ! もうクソっ! 腹立つな!」
俺はそれに気づかずいると
ドンドンドンドン!!
と扉がノックされた。
「え? はいはい。今出るよ」
えっ? 楓姉ちゃんか。誰だよ。
カチャリ
ドアを開けるとそこにはパジャマ姿の病的な肌の白さの妹のヒナがいた。ヒナは俺の両腕を掴み言う。
「おにぃ! ヤバイ! おにぃ! ヤバイ!」
と言いながらヒナがピョンピョン跳び跳ねる。
「ん? ヤバイってなにがヤバイんだ」
俺は聞く。
「オシッコ漏れそう! もう無理! おしっこ漏れそう!」
とヒナがそう言って顔面蒼白になりながら俺に訴えかけた。
◇
え? そっち系?
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新作書きましたので読んでください!
うつ病でボロボロだった俺のところに姉妹が二人看病にやってきた。で、二人とも俺のことが好き?うえええええ!!?
https://kakuyomu.jp/works/16816700427633060712/episodes/16816700427633140355
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