うつ病でボロボロだった俺のところに姉妹が二人看病にやってきた。で、二人とも俺のことが好き?うえええええ!!?

水ManJu

え?導尿カテーテル?

「うつ病ですね」

医師からそう告げられる。主人公である、俺神谷一樹はいわゆるブラック企業で働いている。

毎日のように浴びせられる怒声、当たり前のようにある休日出勤、そして職場内のイジメ。


俺はある日強烈なめまいに襲われた。そして吐き気がし、体が動けなくなった。

俺は仕事中に突然気分が悪くなり職場の床に倒れ込んだ。

すると上司からの一言。


「なにをやってる! そんなとこで寝るな!」


俺はもう限界だった。

俺は体調不良を訴え病院に行った。

「吐き気とめまい、そして急に動けなかったり手が震えたりします」

「体に異常はないので心の問題でしょう。うつ病です」


俺は自宅で休職することになった。しかし、俺は動けなかった。日がな一日寝ていた。飯も食わずに。


買い物に行くことも出来なかった。うつ病は怠け病だと言う人もいる。だが酷いうつ病になると俺みたいに体さえ動かなくなる。


ピンポーン


突然インターフォンが鳴った。

「あああ……誰だ」

俺はゆっくりと起き上がった。フラフラする。今にも倒れそうだ。


ガチャ


「カズヤ大丈夫だったか?」

と冷静な声が聞こえる。


「ちわっす。元気だった?」

と元気そうな声が聞こえる。


「えっ?」

俺は驚いた。そこにいたのは二人の姉妹だった。

この姉妹の名前は如月一花と如月仁愛だった。

姉がイチカ。妹がニア。イチカはボーイッシュでクール系なんか軍人っぽい感じだ。ニアは活発でテンション高めの女の子。確か二人とも看護の専門学校に行ってるハズだが。


「どうしたの? お父さんは?」

俺が聞く。


「父親はここに行くのは大丈夫だと言ってたぞ」

と軍人っぽくでイチカが言う。


「じゃあお邪魔しますね」

とそう言ってニアがほぼ無理矢理に俺の家に入った。


「えっ? そんな無理矢理……」

俺はニアを追いすがる。


「あーーメチャクチャ部屋汚いじゃないですか! ちゃんとご飯食べてますか?」

とニアは俺に言った。


「いやっ……全くご飯食べてなくて」

俺は正直に言う。


「うつ病って聞いたんですよ! お父さんから。カズヤくんが大変そうだからお見舞いに行けって! ご飯食べてください!」

ニアが俺に怒る。


「そんな怒るなってニア。ただでさえ……俺大変なんだから……」

そう言って俺は気が遠くなる。

「あれ……ヤバイ……」

そう言って俺はバタンと倒れた。そして意識を失った。


「ねぇ。イチカねぇ。大丈夫かな。こんなことして」

「大丈夫だって。これも実習みたいなもんだから」


「お腹パンパンだね。カズヤくん」

ニアの声だ。

「オシッコ出来てなかったんだろ。多分」

イチカの声だ。


チクリ


「!」


股間が痛む。てか股間がムズムズする。ん? ヌルヌルする? なんか違和感が強烈なんだが。


「おっ……出てきた出てきた」

「すごーーい。溜まってたんだ」


なにやらトタン屋根を叩く雨のような音が聞こえる。チチチチチ……ぴちゃ……ぴちゃ……


なんだか俺はスッキリしたような気分になった。


「ほらちゃんと洗わないと」

「手袋持ってきたよね」


なんかまた股間に違和感を感じる。


「これ大きくなったらどうしよう」

ニアの声だ。

「大きくなったら洗いやすくていいじゃん」

イチカの声が聞こえる。


ん? なにをしている……俺は意識が朦朧としている。

「ほら一緒に洗うよ」

ニアの声だ。

「えーー。まぁしょうがないか」

とイチカの声が聞こえる。


なんだか股間をマッサージされているような感じが……


「ほら。流すね。イチカねぇ」

「ちょっと待って! あっ! ダメっ! 溢れる!」

二人でなんだか騒いでいる。


「あーー失敗した。イチカねぇのせいだ」

「そんなこと言うなって。ニアのせいだろ」


「あとは……ブリーフを履かせて」

「そっち持って。ニア」


「記念に撮っとこ」

カシャ!

「マズいってニア!」

「ほら、イチカねぇも一緒に」

「しょうがない」

カシャ!

……


意味不明な音が聞こえる。


俺は目が覚めた。そばにはイチカとニアが俺を見下ろしていた。


「大丈夫? カズヤくん」

ニアが言う。

「カズヤ大丈夫か?」

イチカが言った。


「気を失ってたのか。なんか最近全く起きれなくてさ。急に立つと立ちくらみをするんだ」

俺は言った。


「カズヤくん! ちゃんとオシッコしてますか?」

と言いながらニアは急に俺の腕を掴んできた。


「え? いや……俺は……あれそういえばトイレに行ってない」

俺はトイレに行ってなかった。自分でそのことにすら気づいていなかった。酷い状況だと思う。


「メチャクチャオシッコ溜まってましたよ! ほら」

と言ってニアはバケツに入った小便を俺に見せてきた。


「え? どういうこと? なにこれは」

「カズヤくんがちゃんとオシッコ出してくれなかったので、私達が代わりに出しちゃいました」

とニアが笑って言う。


「これカズヤのオシッコだよ」

イチカがそう言う。


「えぇ……」


「ええええええええええええ!!!!!!!」

俺は絶叫した。


「そっ、そんなに驚くことか?」

イチカは俺のリアクションを見て逆に驚いている。

「ほら、カズヤくん。これだよ。ジャジャーン!」

と言ってニアは細長い透明の管のようなものを俺に見せた。


「これで導尿したんだよ。このカテーテルで。大分溜まってたからね」

と言ってニアは俺の尿にまみれたカテーテルを手袋越しにだが手に持って笑う。


「そうだぞ。カズヤ。ちゃんとオシッコしないと駄目だぞ。尿をしないと腎臓の方に尿が逆流するんだから」

イチカは言う。


「ちょっと待ってくれよ! 勝手に俺の股間を出してカテーテルで尿を取ったのかよ!」

俺はニアに怒鳴った。


「取りましたけど! だって危なかったんだよ! カズヤにぃ! 死にかけてたんだから!」

とニアが怒鳴る。目には涙を浮かべている。


「ご、ゴメン……俺が言い過ぎた。俺のことを考えてしてくれたんだな」

俺はニアに謝罪した。


すると

「うえーーーーーーん」

とニアはイチカの胸で泣き始めた。


「酷い! 酷いよ! カズヤくん! 私達あんなに頑張ったのに! なんで褒めてくれないの?」

とニアはイチカの胸で泣いている。


「ニア。確かに私たちも悪かったことは確かだ。看護師の免許もないのに医療行為をしてしまった」

イチカは言う。


「えっ?」

と意外そうな顔でニアはイチカを見つめる。


「ただ、カズヤに謝罪をしないといけないことではない。私たちの看護学校の教官からは怒られるがな」

とイチカは言う。


「そっ! そんな! バレたら! ヤバイ」

ニアは驚く。


「カズヤさえ黙っていれば良いだけの話だ。どうだ。私達のために秘密を守ってくれるか?」

とイチカは俺に言う。なんでこいつ女の子なのに軍人みたいな喋り方なんだよ。


「う……でも申し訳ないよ。君のお父さんには随分お世話になってるからね。だから、君たちのお父さんには、ここであったことは全部言うよ」

と俺が言うと


「では不本意だが仕方ないな。これを拡散するか」

と言ってイチカはスマホの画面を俺に見せた。するとそこには導尿されながらオシッコを出している俺の間抜けな姿と、両方の姉妹が笑顔でピースサインをしている姿が写っていた。


「うわああああああああああ!!!!!」

俺は叫び声をあげた。


「もう一度聞く。秘密を守れるか?」

まるで黄門様の印籠のように俺にスマホの画面を見せてくるイチカ。


「はっはい」

俺は脅迫されてしまった。



「ちょっと待ってて! 今ご飯作るから!」

と言ってエプロン姿になったニアは台所で料理を始める。

トントントントン……包丁の音が聞こえる。

「なぁなんで俺のためにここまで……」

俺は言う。


「それは私たちがカズヤのことが好きだからだ」

と表情一つ変えることなくイチカは言った。


「えっ?」


「なにを言ってる。女が二人、男の家に来て看病するなんて普通に考えたらそういうことだろ」

とイチカは言う。


「いやっ! でも俺は……」

子供の頃から二人を知っていた。告白もされたことがある。子供の頃だが……ただ今は……


「ごめん……本当に……ありがたいんだけど、俺は君たちのお父さんに本当に親切にしてもらってるから……俺はそんな関係には……」

俺は言いにくかったが、恋愛関係をさり気なく断る言い方をした。


「なにを言っている。家族だろ?」


「え?」


「私たちは家族みたいなものだからここに来ているんだ。勘違いするな。カズヤ。これは純粋な親切心だ」

たイチカは言う。


「そっか……」

俺はその言葉にホロリときた。


俺は思い出していた。


職場でのパワハラの数々を。女子社員からはクサイと罵られ、どれだけ頑張っても陰口一つで俺の評価が捻じ曲げられる。嫌な仕事は全部押し付けられ、それで出来なかったらお前のせいだ! みんな自分のことしか考えていなかった。


俺一人に仕事が押し付けられ、ヒィヒィ言ってる中、みんなが談笑していた時があった。流石に手伝うように言ったが……

「仕方ないな。神谷さんって仕事遅いからなー」

とそいつらは笑っていた。

俺は反論する気さえ起きなかった。


地道な努力。誠実さ。優しさ。そのすべてが裏目に出た。結果だけを求められ、平気で嘘をつく人間が出世し、笑顔で人を平気で陥れることが出来る人が上司になった。俺はひょっとしたら会社勤めに向いていないのかも知れない。


「はいー出来たよー」

と言ってニアが料理を持ってきた。こ、焦げてる。


「あーごめん! ごめん! 火加減強すぎて! でも野菜たっぷりだから! カズヤくん食べて」

ニアが言う。


「ニア流石にこれはマズいだろ。まっ黒焦げすぎるだろう。病人にこんなものを食べさせるなんて」

イチカは言う。


「でも頑張ったんだよ! 必死で!」

ニアはイチカに反論する。


俺はおもむろに箸を取り出した。そして、その黒焦げのものを食べた。もぐもぐ……苦い。


「あっ……大丈夫? カズヤくん」

ニアは不安そうだ。


「うん……焦げてて美味しい……くはないけど、俺の好きな味だよ」

俺は言った。


「ごめん。なんかダメダメだったね。こんな料理作っちゃってゴメンね」

とニアは泣きそうだ。


「いや、でもニア。ご飯を作ってくれて本当にありがとう。嬉しいよ」

俺は言った。


「カズヤ……」

「カズくん……」


「ニアが頑張ってくれた。ニアが必死に献立を考えてくれた。ニアの優しさが入っているんだ。この料理の中には。もちろんイチカの優しさも」

俺は言う。


「これってさ。漫画でよくあるシチュエーションだよな。ヒロインが料理作ってくれてそれが失敗作で、で主人公が美味しい美味しいって言って我慢して食べるって」

俺は言う。


「俺その主人公の気持ち分かんなくってさ。どうして我慢するのって。不味いものは不味いじゃん。嘘つくなよって」

俺は言う。


「うん……」

「そうだな……」


「でも、その主人公の気持ち分かったよ。自分のために頑張ってくれた人がいることが嬉しいんだ。だから、どれだけ失敗作でも食べなきゃダメだ。だからありがとう。ニア。これは全部食べるよ。一つも残さずにね」

俺は笑顔で言った。


するとニアは涙くんで俺に抱きついてきた。


「カズにい。ありがとう! 愛してる!」

ん? これは家族としてだよな。


「そ、そうだな。では私もいただくか」

と言ってイチカの焦げたニアの料理を食べると思いきや

「私も抱きしめるぞっ!」

っと言って俺に抱きついてきた。


3人の間に親和的な空気が流れる。俺が求めていたものはこれだったのかも知れない。誰かの頑張りを褒められること。誰かの思いやりを褒められること。誰かが誠実であることを褒められること。


その人らしさを認められること。


それが俺が本当は求めていたもの。

それが本当の人間らしい生活なのかも知れない。俺はそう思った。



「なんか3人で食卓囲んでさ。私たち家族みたいだね」

ニアが笑う。


「そうだな。昔はカズヤと一緒に我が家でご飯を食べていたからな。それを思い出したぞ」

イチカが言う。


この二人も俺と同じようなことを思っていた。俺たちはまるで家族みたいだって。


「じゃあやりますかーー」

ニアが言う。

「そうだな。やるか」

イチカが言った。


「ジャンケンポイッ」

「ジャンケンポイッ」

「ジャンケンポイッ」


ん? なにをやってるんだ。イチカとニアの二人がジャンケンを始めたが……食器の後片付けでも決めるのか? 俺がやるのに。


「あの……なんのジャンケンだ? 食器の後片付けぐらい俺がやるけど」

俺が言った。


「これはそういうんじゃないんです。乙女の戦いなんです」

ニアが言う。

「そうだぞ。賞品は黙っておけ」

イチカは言う。意味が不明なんだが、


「本当なんのジャンケンなの?」

俺は聞いた。


すると

「今日カズくんとどっちがHするかのジャンケンです」

「今日カズヤとどっちがHするかのジャンケンだ」

とニアとイチカは同時に言った。


「ええええええええ!!! 家族どこ行った!!!!!」

俺は叫んだ。



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