なんだよ漏れそうって!
「ヒナなんだよ! 漏れそうって!」
俺は言う。
「だって! だって! 楓さんがずっとリビングでお酒を飲んでいて怖くて一階に行かないんだもん!」
ヒナが言う。
「えっ? なにそれは……」
どういう理由だ?
「なんでおにぃ。引きこもりの気持ちを分かってくれないの?! 一階で笑い声が聞こえたら怖くてトイレに行けないじゃん! ヒナ本気でペットボトルデビューしようとしてたんだから」
ヒナは言う。
ペットボトル? あぁペットボトルに尿をするって意味か。
「お前車中泊の運転手みたいなことしなくて良いんだよ。ほら一緒にトイレ行くぞ」
俺はヒナの腕を引っ張ろうとする。
「うん」
ヒナはうなずいた。
階段を降りていく途中ヒナは
「あっ!」
とうめき声を上げた。
「おい、ヒナ漏らしたか?」
俺は聞いた。
「大丈夫……ちょっとだけ……」
ヒナは言う。
ゆっくりと階段を降りていく。
「うわっ!」
ヒナが俺の背中に掴まった。
「おい! 掴まるなよ! オシッコ漏れそうなんだろ?」
俺は言う。
「ヒナがお漏らしする時は! おにぃも道連れだからね!」
とヒナが俺に体を押し付けてくる。
「おい! バカ! やめろ!」
もう最悪だ。
「着いた!」
ハッハッっと急いでヒナはトイレに駆け込む。
俺はトイレのそばで座り込む。ヒナが楓姉ちゃんが怖いから見張っててと言ったからだ。
「あれー悠斗くん。なにしてんのーそんなとこで」
タイミング悪く楓姉ちゃんがやってくる。完全な酔っぱらいだ。
「さっきトイレに入ってたんですよ。それでまだ臭うからここで見張ってるんです」
俺は嘘をついた。
「大丈夫だって! そんなん気にしないって!」
と楓姉ちゃんがトイレのドアを開けようとする。
「ちょっと待って!」
俺は楓姉ちゃんの腕を掴む。
「えーどうしてーー私漏れそうなんだけど」
楓姉ちゃんが言った。あーもうどいつもこいつも!
「でも臭いんですよ」
「なんで分かるの? もう臭い消えてるかもよ」
楓姉ちゃんが言う。
「ついさっきしたばかりだし」
「あー悠斗大丈夫よ! 超強力な消臭剤買ってあるから! 臭いなんてすぐ消えちゃうから!」
母親の声が聞こえる。なんで余計な一言言ってくるんだよ。
「じゃあ確かめるね」
と言って楓姉ちゃんはトイレに入ろうとする。俺はまたガッっと楓姉ちゃんの腕を掴んだ。
「俺が確かめます」
俺は楓姉ちゃんに中が覗かれないようにしてトイレの中に
カチャ
入った。
「ちょっとおにぃ! なにやってるの!」
ヒナが小声で叫ぶ。
俺は目をつぶって答える。
「楓姉ちゃんがここに入ろうとしてたから!」
「ヒナオシッコしてるんだよ!」
ヒナが叫ぶ。
「分かってるよ。だから早く済ませてくれ」
俺は耳を塞いで言う。
「あっ! ごめん。おにぃ」
「えっ?」
「うんち出そう」
ヒナが言った。
「ええええええええええ………」
「ごめん! おにぃ! 目を閉じて耳を塞いでついでに口と鼻を塞いで!」
「出来るか! そんなもん!」
俺はそう吐き捨ててトイレから出るとガバッ楓姉ちゃんの肩を掴んだ。
「楓姉ちゃん。ちょっといいか」
俺は楓姉ちゃんの肩を掴んでトイレ前から引き剥がす。
「えっ? ちょっと! ちょっと!」
楓姉ちゃんはそう叫びながら俺についていく。
俺たちは玄関から外に出た。
「ちょっとトイレに行きたいんだけど」
楓姉ちゃんはそう言う。
「楓姉ちゃん。よくそこの河原であそんでたよね」
俺は言った。
「えっ? 突然何の話?」
「覚えてない? 子供の頃俺が立ちションしてたら楓姉ちゃんが褒めてくれたの」
俺が言う。
「いや、そんなことで褒めないと思うけど」
「褒めてくれたんだよ! 楓姉ちゃんは! 私そんなこと出来ないからユウくん凄いねって。遠くまでオシッコ飛ばせて凄いねって! 褒めてくれたんだよ」
俺は時間稼ぎをする。
「おい、どうしたんだ。落ち着け」
楓姉ちゃんは言う。
「それでさ、俺その時楓姉ちゃんが男だと思ってたんだよ。楓姉ちゃんも立ちションが出来るって。そしたら楓姉ちゃんが私は飛ばすことが出来ないんだって悲しそうに言って」
「え? 何の話?」
「その時思ったんだ! 楓姉ちゃんは楓姉ちゃんなんだって。楓姉ちゃんは女の子なんだって。そしたら俺悔しくて! 楓姉ちゃんの分まで俺が立ちションの飛距離飛ばさないといけないと思って!」
俺は詰め寄る。
「ちょっとホントに何の話?」
「そしたら近所のおじさんに怒られて。そんなとこで立ちションするなって。俺メチャクチャ悲しくて。俺楓姉ちゃんのために立ちションしてたのに! 楓姉ちゃんが悪いんだよ! 楓姉ちゃんが立ちションできて凄いねって褒めてくれたから!」
「ちょっと本気で何の話?」
楓姉ちゃんが言う。
「!」
ヒナがトイレの水を流す音がかすかに聞こえた! ここで止めをさしておくか。
「だから楓姉ちゃん。俺の分までオシッコしてくれ……叶えられなかったあの時の俺の思いを叶えてくれよ!」
俺は泣きそうになりながら楓姉ちゃんに言う。
「あの……本当もういい? 私トイレに行きたいからさ」
俺は楓姉ちゃんを開放した。楓姉ちゃんがトイレに入るのを見る。よしっ! なにも異常は起こらない。
俺は2階に上がった。
ヒナが自分の部屋から俺を手招きしている。
「どうした? ヒナ」
「ビックリした! もう! おにぃが入ってくると思わないじゃん! おにぃ! 最低だよ!」
ヒナは言う。
「お前バカッ! 俺がどれだけお前のために」
俺は説明した。
楓姉ちゃんがトイレに入ろうとしてたことを。そして必死に嘘をついてまでヒナを守ろうとしてたことを
「そっか。ゴメンね。おにぃ」
ヒナが謝る。
「俺がどれだけ頑張ったか」
するとヒナがガッっと俺を掴んできた。
「おにぃ! 今日なにも食べてない! ずっと楓さんがリビングに居たから! 何か買ってきて!」
ヒナが涙目で言う。
「んん……」
俺は玄関に行き靴を履いた。行き先はもちろん近所のショッピングモールだ。あそこでヒナと俺の分の食料を買ってこないと。
母親から二千円貰ったからな。ちなみに買いに行く食材は一体なんだと思う?
なんとモツ鍋の食材を買ってこいと言われた。
それで引きこもりらしく自室で鍋をするつもりらしい。俺も一緒に食べて良いらしい。俺はヒナの部屋に入るのは久しぶりだったので喜んでそれに応じるとこにした。
俺が靴を履き終えると背中から声がかかった。
「ユウくん。どこ行くの? 一緒に買い物いこっ!」
楓姉ちゃんだった。
◇
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役立たずと思われていた俺の能力は最強の魔王術だった。魔界の姫君が俺と結ばれて魔界の英雄を産みたいらしい。元いたギルドが潰れた?俺には関係ないね
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イジメられていた俺はクラスの女子から罰ゲームで告白される。かと思いきやガチの好きの告白だった!ついでに俺をイジメてた奴はネットで晒され社会的に死ぬことに 水ManJu @mizumanjuu
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