駄目だ! 二人にバレる!

「あああああ……」

なんていうことや……あれ葵じゃん。保健室で俺とキスをした。俺のことが好きだよって言って泣いた葵じゃん!


ヤバイ……ヤバすぎる……このままじゃウサ先輩と葵がバッティングする!


「ウサ先輩! あれは幽霊ですよ! 僕には見えませんよ!」

と言う。

「いや! 嘘つくのはやめたまえ! あんなにクッキリした幽霊なんているハズないだろ!」

とウサ先輩が言った。


「いや、ミカゲ! 君にも見えないだろ?」

俺はミカゲにパチリ! っとウインクしてアイコンタクトを送った。


「どうしたんですか? 悠斗さん。顔面神経症ですか?」

ミカゲが言った。


「違うわ! ウインクしてるんだよ!」

俺は言う。


「やめたまえ! 悠斗くんはボクの彼氏だぞ! 陰キャ風情が気軽に話しかけるな!」

とウサ先輩がミカゲに言う。


「うおおおおおおお!!!! つい5分前まで陰キャだった人ーーー!!」

ミカゲが大声を出す。


ヤバイ! ヤバイ! 大声出すなって! バレるだろうが! 店内が俺たちの方を見てザワザワする。


「あっ…ウサ先輩! 僕らカップルになって陽キャになったんでサーフボード買ってきますね!」

と言って俺はその場を飛び出した。


「はぁ……はぁ……」

俺はその場から逃げ出す。


「いや、逃げてどうするんだよ……」

俺は逃げたが一旦立ち止まった。




「いや、悠斗くんは一体どうしたというんだね?」

とウサ先輩がミカゲに言った。


「さぁ……男の子の日なんですかね」

ミカゲは言う。


「しかし、さっきは変なこと言って済まなかったね。ミカゲくん。君のことを陰キャだって言って」

ウサ先輩が言う。


「いえいえ、メチャクチャ傷ついたけど気にしないでください」

ミカゲが言った。


「本当に済まない。キミのリアクションは最高だったよ。さっきのボクはまるで、つまらない陰キャイジりをしてるのに陰キャのリアクション良すぎて周りにウケてるってことに気づかずに、自分が面白いからウケてると勘違いしてるバカ陽キャみたいになってた。全くボクも堕ちたもんだな。本当に済まない」

ウサ先輩は言う。


「うっ……ウサ先輩。スキあらば出る陽キャディス流石です。流石、私の師匠」

ミカゲが言う。


「キミこそボクの最高の弟子だよ」

ウサ先輩が言った。


「まぁウサ先輩と私は恋のライバルでもありますけどね」

とニヤリとミカゲが笑う。


「クックックッ……」

「クックックッ……」

二人は笑い合った。周囲がざわつく。


おい、なんだあいつら笑ってるぞ……

なんなんだ……なんで笑ってるんだ……


口々に周囲の人がザワつく。


「まぁボクたちの暗黒微笑でここを暗黒空間に染めあげるのも良いが、ミカゲくん。ボクの本を読んでいる人に感想を聞きに行くぞ」

ウサ先輩が言った。


「オッケーです」

ミカゲは言う。


「あっ! あのっ! すいません! なんでその本を読んでるんですか!」

とウサ先輩は椅子に座っている葵にそう言った。ウサ先輩はメチャクチャ緊張していた。


「ウサ先輩! なんで急にコミュ力に超絶デバフかかったんですか! 急に陰キャ発動するのやめてくださいよ!」

ミカゲが裏でコソコソ言う。


「え? 私ですか?」

葵が言う。


「あっ! はいっ! その本面白いですか! 面白いですよね! ハハッ!」

とウサ先輩は声を上ずらせながら言う。


「えっ? あのっ! なんですか? なんの用事ですか!」


「いやっ! 違うんです! その本を書いたはボクなんです! だから面白かったか! 感想を聞かせてください!」

ウサ先輩が上ずる声で言う。


「えっ? あのっ! あっ! 感想はぁ!! 」

葵が言う。


「なんか両方コミュ障になってるし!」

と小声でミカゲがウサ先輩の背後に隠れながら言った。



5分後


俺は気になって様子を見に戻った。葵が座るファストフード店の座席。そこの座席の真後ろに俺は座った。俺と葵の座席の間にはプランターがパーテーション替わりに置かれ、空間を遮っていた。つまり、俺からも葵からもお互いの姿が見えない位置だった。


「そうですか。この本の作者の方だったんですね」

葵の声が聞こえる。


「うむ。そうなんだ。それはボクの処女作でね。お恥ずかしながら一番売れなかったんだが、それでも一番好きな作品なんだ。だからそれを買ってくれる人がいるって聞いて嬉しくてね」

「!」

ウサ先輩の声だ! もう会話をしている! 俺の背後にあるテーブルには葵とウサ先輩たちが座っているようだ。

俺は聞き耳を立てた。


「感想ですか……」

葵が言う。

「うん!」

ウサ先輩が言った。


「なんて言うかこの本。私が最初に見つけたのは学校の図書室で、なんかいい表紙だなって思って読んだんです。そしたらすっごくハマっちゃって」

葵が言う。

「ふむふむ」


「表紙いいですもんね」

ミカゲが言った。


「なんかこれ本当にフィクション? ってその時思っちゃって。なんか人物描写が凄くリアルで、あぁ! これ分かる! 分かる! の連続だったんです」


「うふぅー。嬉しいねぇ」

ウサ先輩のトロケた声が聞こえる。


「この小説を読んでると自分の高校で本当にあった話なんじゃないかって妙な気分になるんです。校舎のイメージとか教室のイメージがどうしても自分が通ってる高校のイメージと重なって」

葵は言った。


「キミ高校は?」


「◯◯高校ですけど」


「そうか。そりゃそうだろうな。ボクも同じ高校なんだ。あれはボクが高校一年生の時に自分の高校を思い浮かべて書いたんだ。だからだろう。キミがそうイメージするのは」


「えっ? 同じ高校?」

葵が言う。


「いかにも。ボクもキミと同じ高校だ」


「えーーーーー!!! うそっ! うそっ! 暗黒龍ウサ子さんが私と同じ高校ですか?」


「いや、同じ高校だよ」

と暗黒龍ウサ子ことウサ先輩は言った。


暗黒龍ってなんだよ。


「いかにもそうだ。主人公の綾が告白したシーンもボクたちが通ってるん高校の音楽室をイメージしたんだ」

ウサ先輩が言う。


ヤバイ……ヤバイ……バレる。俺はドキドキしながら聞き耳を立てている。


「キャーーーッ!! 嘘っ! 本当ですか!」 葵が驚く。

「本当だ」


「私あのシーン好きすぎて……で本当に告白しちゃったんです。綾と同じようなシチュエーションで、私の好きな人に」


「ほう。それは嬉しいねぇ。で、その好きな人ってどんな奴なんだい?」

ウサ先輩が聞いた。


「あああああああ!!!!! うっ」

俺は自分の口を抑える。俺は思わず小さくだが声を出して叫んでしまった。

ヤバイ……ヤバイ……バレる! この関係が破綻する!


バレちゃうのか!?


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