イジメられてる被害者を助けろ!
はぁ……はぁ……夜の街を走る。これだけ走ったのは久しぶりだ。
「はぁ……こんな時に限って……はぁ……自転車壊れてるんだもんな……」俺は息を切らせながら走る。
あのSNSで拡散されていた龍二にリンチされていた被害者。彼の名前は高宮大智だった。タカミヤダイチ……俺は脳内にその名前を刻み込む。俺は走って彼の家までついた。
高宮……! あった! 表札だ! おそらくここに間違いないだろう。葵から高宮くんの住所を聞いた。マップのアプリのスクショで送ってもらったのだ。今はもう8時だった。夜中だから探すのが大変だったけど……そこは気合いで乗り切れた。
はぁ……はぁ……息を整える。だが、俺は高宮くんとは初対面だ。同学年で同じ学校に通ってるらしいが、俺はほとんど高宮くんを見たことがなかった。どうやら不登校みたいだった。
ピンポーン。インターフォンを鳴らす。なんて話をしようか。それとも高宮くん本人が出てくるのだろうか。もしご両親が出たら俺はなんと言えばいいのだろうか。
「はい」女性の声だ。
「すいません。高宮くんの同級生の神谷と申します。高宮くんいますか?」俺は聞いた。
「あっ!」っとインターフォン越しで声が聞こえるとそのままプツンと通話が切れた。
警戒されたか……そりゃ不登校の家に来られたら迷惑だろうし……俺は思う。
「はい」
カチャっと扉が開いた。まだ若く痩せた、おそらく高宮くんのお母さんだろう、が出てきた。
「大智の友達ですか?」
母親は俺を胡散臭そうに見て言う。
「友達じゃないんですけど、大智くんと話したいことがあって」俺は言う。
「話したいことってなに?」
母親が俺に聞いた。
あっ! 来たぞこの質問。俺はなんて答えたらいい。正直に答えるべきか。だが、あんな酷い扱いをされていることをこの弱々しい母親に伝えたらどんな反応をするだろうか。
「大智くんが出てる動画が今ネットで炎上してるのって知ってますか?」
俺はストレートに話すことにした。俺は焦っていて嘘なんかつけなかった。
「えっ? なに? どういうことですか? それ」
うわぁ!!! 知らないのかよ!! 俺は焦った。だが! もうどうにでもなれ! 俺はスマホを取り出して動画を母親に見せることにする。
「ショックな内容ですけど……これです」
動画が流れる。
ギャハハハ!!
もうやめて! 龍二くん! もう殴んないで!
うぇーい! ボコン!
ギャハハハ!!
醜悪な動画だ。だが、しょうがない。これを見てもらって判断してもらうのが一番だ。母親はそれを見て呆然としている。
そして母親は少しふらつくとその場にバタッっと倒れてしまった。
「大丈夫ですか!」
俺は言って玄関を開けて母親に声をかける。
「大丈夫……です」倒れながら言う母親。
「これが今ネットで大炎上してるんです。学校から連絡はなかったですか?」俺は聞く。
「私仕事が忙しくてなかなか家に帰ってこれなくて」
と大智くんの母親はそう言って上半身を起こした。
「無理に立たなくても大丈夫です。ふらつくなら座っておいてください」
俺は言う。母親はコクリとうなずく。茫然自失になっているのだろう。
「で、大智くんはここにいますか?」
俺は聞いた。
「大智はこの家にはいないんです。私はお昼くらいに帰ってきたのですが……そこからずっと。捜索願を出そうと思っていたところで」
母親は言う。
「大智くんが行きそうなところってどこですか?」
「大智は本が好きだから本屋とか……」
「分かりました。探してみます。警察に連絡した方がいいと思います」
そう言って俺は
「ありがとうございました!」
と礼をして高宮家から飛び出した。
急がなきゃ……俺は最悪の事態が思い浮かぶ。そりゃ辛いだろう。あんなことをされて、多分脅迫もされたんだろう。死ねって言われたかも知れない。だとしたら今ごろ……嫌な予感が頭の中をぐるぐる回る。
母親は捜索願を出すだろう。俺は俺のできることをするだけだ。本屋か……ここからだとあのデカい本屋だな。俺は走る。
♫ 葵から電話がかかってきた。俺はスピードを落として電話に出る。
「大丈夫? 悠斗?」
葵の俺を気遣う優しい声が聞こえる。
「大丈夫だよ。今高宮くんの家に行ったところ。お母さん……ハァッ……高宮くんがイジメられてたこと知らなかったよ」
俺は言った。
「そうなんだ……私もなにか手伝うよ?」
葵は言う。
「いや……大丈夫……だよ」
俺は走りながら言った。
「私も一緒に探した方がいい?」
「夜遅いし……危ないよ。高宮くんのお母さんに警察に連絡するように言ったし……俺が探してるのはただのワガママだから」俺は言う。
これはそうだ。正直、龍二を潰すために高宮くんが必要だから俺は探してるだけ……それだけ……だったが……流石に今は心配だ。
「葵。ありがとう。葵の優しい気持ちだけ貰っておくよ。もし助けが必要なら葵に電話するよ」俺は言った。
「うん。本当に気をつけて……あんまり龍二のことばっかり考えないでね。私悠斗くんが一番大事だから」葵は嬉しいことを言う。
「大丈夫だよ。危なくなったらすぐに退散する。龍二の馬鹿に巻き込まれるのは嫌だからな」俺は言った。
「いっぱいデートの予定あるんだからね。悠斗くんが怪我したら行けないんだからね!」
葵はなんだか泣きそうだ。
「大丈夫だよ。ただ高宮くんを探してるだけだ。デートは必ず行く。約束だからな」
「うん!」
そして、俺は通話を切った。俺はスピードを上げて走る。
俺は本屋についた。俺はもう汗だくだった。店内をぐるりと見回す。いない……大智くんがどこにもいない。
「あの……メガネをかけていて、大人しそうな僕ぐらいの年齢の男の子見なかったですか?」
俺は店員に聞いた。
「いやぁ……分からないですね……」
「ありがとうございました!」
俺はあたりのコンビニを探した。
「すいません。僕ぐらいの年齢で大人しそうな子供……」
「いやぁわかんないね」
はぁ……はぁ……なにやってんだ。もう警察に任せた方がいいんじゃないか……俺は汗を拭く。
あれ? あそこの川のところ……誰か座っている。誰か一人男性? なのか? が一人川辺で座っていた。
俺は川辺に降りてその人に声をかける。近づくと分かる。体育座りをしている男性だった。
「はぁ……はぁ……す、すいません。高宮大智くんですか?」
◇
次回、精神不安定な高宮大智を説得します!
★ハートブクマお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます