龍二!マジでこいつの人生潰すわ
俺は家に帰っていた。スマホでSNSをチェックした。するとまぁ炎上してること炎上してること。学校の特定までは終わっているようだった。俺は過去のアルバムを取り出す。成宮龍二やその取り巻きの写真が載っていた。俺はそれをカシャっとスマホで撮る。
俺は椅子に座って目をつぶる。そしてプッっと吹き出した。俺は実は睡眠不足だった。そして俺は陰湿な陰キャだった。え? なにが言いたいかだって。それは後々分かる。
俺は昨日SNSで龍二の炎上を見つけたあと、龍二たちのSNSを見てスクショを撮りまくった。それが深夜まで続いて俺は寝不足だった。龍二たちグループのSNSは頭の悪い奴よろしくまぁたちの悪いものだった。
バカみたいな女とのキス写真だったり、あるいは飲酒などをほのめかす投稿もあった。また特攻服のようなものを着て集まってる写真もあった。俺は全てそれらを保存していた。
というか正確には俺はこの日を待っていた。俺は龍二の言うとおり陰キャだからあいつらのSNSに張り付いて全てをスクショに撮っていた。もはやネットストーカーだ。
あいつがストーリーであげていたタバコを吸っている動画もちゃんと保存していた。俺はいつでもそれを拡散出来た。だがそれをしなかった。なぜか! タイミングを待ってたからだ。最もあいつにダメージを与えられるタイミングを。あいつを追い詰められるタイミングを待ってたからだ。それが今だ。
しかも俺は今日の大吾との会話や教頭の全校集会の話した内容も全て録音していた。
あぁ陰キャで良かったぁ!!
陰キャだからこんなふうに陰湿に追い詰めて楽しむことが出来る。ネチネチ時間をかけて外堀を埋めることが出来る。
あぁ!!! 脳内物質やべぇよ。あいつの絶望に満ちた表情を思い浮かべるだけでヨダレが出て来そうだった。
いや! 復讐がムナシイって嘘だろ。今の時点で脳内麻薬出まくってるんだから、復讐は楽しいに決まってんだろ! だってクソ野郎を追い詰めるのメチャクチャ楽しいに決まってんじゃん! 当たり前だろ! 俺はヨダレを拭いた。
それに……葵が俺に見せてくれた動画……あれが決定的だな。あれはヤバいぞ。絶対に学校にいられなくなるだろうな。
俺は大吾に電話をした。
「おい、早くスクショのデータを送ってこいよ」俺は言う。
「いや……それは……」
大吾は怯えたように言った。
「ビビるなってもう龍二は終わりだ。泥舟にいつまでしがみついてんだよ。お前の人生まで終わりになるぞ」俺は言う。
「分かった! 絶対に裏切るなよ!」大吾は俺に叫ぶように言った。
少し待つと大吾からデータが送られてきた。それは大吾や龍二たちのグループチャットのスクショだった。まぁ内容はヤバいな。龍二たちがまーーーーったく反省してないのが分かる。
スクショで龍二たちのチャット内容を俺は見た。
おい! 誰だよ! ネットに流したやつ。ここにいたら殺すわ
いや、俺らじゃねーし
俺も違うよ
とりあえずお前ら全員話を合わせるぞ
あれはあのメガネ陰キャが万引きをしたことにする。それで俺らが制裁をくわえた そんな感じ
やば! 龍二メチャクチャ頭いい!
すげぇ!
今日あいつに鬼電しまくって精神的に追い詰める。で、明日あいつの家に行ってコンビニで万引きさせる。その様子を動画で撮ってネットで拡散。悪いとこしたあいつにムカついた正義の俺たちがアイツをボコすってストーリーな
草
やばメチャクチャ楽しそう
龍二なんでそんなに頭が回るんだよ!
俺らの人生があのメガネ陰キャで潰されてたまるかよ! あのクソメガネ徹底的に追い詰めるわ あいつの動画拡散するって言ったらあいつ俺の言いなりだわ!
「ふぅ……」
俺はため息をつく。ヤバすぎだろアイツ。真正のクズだよな。ここまでのクズを見たことがない。要するに今SNSで炎上している動画、メガネの男子学生をリンチしてる動画。あの男子学生に万引きをさせてその様子をネットで流して悪者にする。それで龍二たちが殴って制裁をしたって印象操作をするって言うことか。
つまり、事件の前後を入れ替えて原因と結果を逆にして印象操作するってことだな。
意外と頭が回ると思う。ネット民は騙されやすいからこれで騙される奴もいるかも知れない。だが、大誤算だったな。お前の仲間にスパイが一人いることを。お前は忘れていた。
こういうDQNは仲間意識が強い。仲間意識が強いからこそ互いに隠蔽し合う。仲間意識を高めるために誰かをイジメる。仲間意識をたかめるためにリンチをしたり、犯罪行為をしたり……
自分たちの仲間さえ良かったらなにしても良いって考えてる奴らだ。あぁ楽しみだ。この仲よしメンバーが崩壊する瞬間が……互いに責任を押し付け合い自滅していく瞬間が……
もう俺は自分がどうなってもいい。差し違えてもこいつの人生を潰さなきゃ気が済まない。
「さて、どこにたれ込むか」
炎上事を扱っているYouTuberか、週刊誌にデータを送るか。どこが一番ダメージが大きいか……俺はニヤニヤしながら思い悩む。
「!……」
俺はふと手が止まった。
被害者の話を聞いていない……!
俺は気づいた。もし被害者の男子学生が言いくるめられたら? あれは僕が悪いんです! ってヤケクソになって言い出したら? パズルの最後のピース。重要なピース。俺はそれをまだ持っていない。俺はそのことに気づいた。
被害者が「あれはおふざけなんです」って言い出したら? もはや龍二たちを叩く理由がなくなる。
そして、それをやろうとしているのが学校の教師なり、龍二たちなのだ。
つまり、被害者に泣き寝入りさせて被害自体をなかったことにする。自分たちの安寧を図る最悪な手段だ。
ネットでの炎上が起こるたびに、よくこんなことを言う人がいる。抗議の声をあげられるのは被害者だけだって。どこぞの誰とも分からない第三者が文句を言うのはおかしいと。
ま、理解できる言い分だと思う。ただ、こういうことを言う人は根本的なことを理解していないと思う。往々にして被害者は泣き寝入りにさせられ、なかなか声をあげられないものなのだ。
そりゃそうだろ。痴漢でもそうだ。痴漢されている女性がなかなか声を出せない。ほとんどが恐怖で黙っているだけ。
理不尽な攻撃。それは人間の尊厳をズタズタに傷つけ怒る気力すら奪うからだ。
痴漢をされてる女性を見たときに
「あなたが犯人に対して声をあげないなら私はあなたを助けません」
って言うのはおかしいだろ。
加害者が被害者の叫ぶ力を根こそぎ奪ってしまう。だから理不尽な暴力は理不尽なのだ。
だが……ハシゴを降ろされないために被害者の意思を確認した方がいいな……俺は思った。被害者を俺の味方にしたら最強だ。
「ま、このままデータを送っても良いがな……」
俺はSNSを見ながら考え込む。
♫ 葵から着信だ。
「どした?」俺は言う。
「えへへ……なんか声が聞きたくなって」
「あぁ」俺は気のない返事をした。
「どうしたの? 元気ないね」葵が言う。
「あぁ……ちょっとダークモードに入っててね」俺は言った。
「なんかあった?」
「あぁ……あの龍二に殴られている男の子が可哀想になってね」
「そっか。同情した?」
「あぁ……俺も龍二に同じようなことされてたからな……」
「ごめんね」葵は言う。
「えっ?」
「昔悠斗くんが馬鹿にされていたのを見てたんだ。でも怖くてなにも出来なかった。自分もイジメられると思ったから。イヤだよね。本当に嫌い。あぁいう奴!」
葵は言った。
「俺も大嫌いだよ。龍二の奴。名前すら呼びたくない。早く退学になったら良いのにな」俺は言う。
「本当それ」葵が言った。
しばらく沈黙が続く。
「大好きだよ」葵が言う。
「うん。俺も……」
「なんか人生損しちゃったなって感じだよ。悠斗くんともっと早く出会えてたらもっと人生楽しかったのに」葵は言った。
「そうだな……取り戻さないと。今からでも」俺は言う。
「そう言えばさ、龍二に殴られていた人住んでるとこ知ってるよ」葵が言った。
「えっ?」
「ご近所さんだから……今日もコンビニで暗い顔をしているのを見かけて」葵が言う。
「!」 コンビニ! 暗い顔! まさかもうコンビニで万引きを強要されているのか?
駄目だこのままじゃ! 彼が悪者になってしまう! 俺は思った。
「葵! 大事な話だから聞いて欲しい!」
「う、うん」
「彼を見かけたそのコンビニはどこ?」
◇
次、龍二に脅迫されている男子学生を助けます! 夜走る主人公!
気になる方は★ブクマハートお願いします!!
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