ラノベのタイトル長すぎだろ!

俺たちは本屋についた。

「ふむ。ここは相変わらず狭いな」

ウサ先輩が舌っ足らずな口調で言う。てかいつも思うになんでこんな昭和の文豪みたいな口調なんだろう。この人。


「ウサ先輩。それは流石に失礼ですよ」

俺は言う。


「むむ……キミはそう思うのか。だがここの店主はボクの知り合いでね。仲が良いんだ。ボクが悪意なんてないことなんて分かってるさ」

とウサ先輩は言った。


「なるほど」

俺は言った。


「はい。いらっしゃいませ。これはこれはウサ先輩じゃないですか」

と初老のおじさん店主が言った。


「え? ウサ先輩。明らかに年上から先輩呼びされてますけど?」

俺は聞いた。


「まぁボクがそういう風に呼ぶように言ってあるからね」

ウサ先輩は言った。


「え? てか。ウサ先輩。ホントは17〜18じゃなくて見た目、幼女な年齢50歳くらいのおばさんじゃないんですか?」

俺はふざけて聞く。


「は? 何いってんだ。現実とフィクションを混同するな。気持ち悪い」

とウサ先輩が返した。え? あんたがそんなこと言うか。


「ところで店主あれは置いてあるかね」

とウサ先輩は言った。

「はい。こちらに」

店主は俺たちを案内する。


「おぉ……これは凄い」

俺は思わずつぶやく。そこには『双翼の錬金術師』が平積みに置かれていた。


「ふむ。ポップアップもいい出来だな。店主いい仕事だぞ」

ウサ先輩は言う。

「ありがとうございます」

店主はお礼を言った。


「で、本日の販売数はいかほどに」

ウサ先輩は聞く。


「大変申し上げにくいのですが……ゼロです。全く売れてません。というか見向きもされません。非常に言いにくいのですが、これだけ絵師の方が頑張って表紙を書いてくれたのに販売数ゼロです!!」

店主はゼロの部分を強調するように言う。


「おっ!? おっおっおっ……ばぶぅ……ばぶぅ……」

ウサ先輩がショックのあまり赤ちゃん返りした。


「うわぁああああ!!! ウサ先輩が赤ちゃん返りした!!」

と叫ぶミカゲ。


「ぶぅ……ぶぅ……まんま……まんま……」

ウサ先輩は親指を咥えながら幼児返りをしている。


「店主さん。どうして! そんな申し上げにくいことを申し上げちゃったんですか!」

ミカゲは怒鳴る。


「ぶぅ……ぶぅ……ばぶぅ」

ウサ先輩は赤ちゃんに戻っている。


「すいません。うちの店も経営が苦しくて。この本これだけ入荷したのに、一冊も売れてないので嫌味の少しでも言いたくなりまして」

と店主は言った。


「そ、そんな……」

ミカゲが落ち込む。


「ばぶぅ……ぶぅ……」


「ウサ先輩! 先輩が一生赤ちゃんのままでも大丈夫ですよ! 私がちゃんと責任取って赤ちゃんポストに入れておきますからね!」

とミカゲが言った。


「いや、ブラックジョークすぎんだろ! 育てるんじゃないのかよ! てか、赤ちゃんポスト入らねーだろ! これ」

俺は突っ込む。


「まんま……まんま……」

とウサ先輩がミカゲのおっぱいを触り母乳を吸おうとする。


「よしよし! ママがちゃんと育てて上げるからね! ごめん! 捨てるなんて言ってゴメン!」

とミカゲは言う。


「いや、なんて素晴らしい母親の愛情なんだ」

と言いながら店主が拍手をした。


「もう! なんなんだよ! 突っ込みきれないわ! いい加減にしてくれ!」

俺は言う。


「ところで君」

と店主が急に俺に話しかけた。


「うちにエロ本は置いてないよ」

店主は言う。


「エロ本買いに来たんじゃねぇわ! なんなんだよ! 客を舐めてんのか!」

俺は突っ込む。なんなんだ。この店主。ウサ先輩の知り合いだけあってやっぱり異常者なのか。


「じゃあ何を買いに来たんだ」

と言って店主はタブレット端末を手に取る。


「あぁあの……ライトノベルなんですけど」

俺は言う。


「ふん。ラノベか」

店主はタブレット端末をタッチして検索する。


「タイトルは『大好きだったクラスメート件アイドルが生配信中に好きな人は俺くんですってポロッと言っちゃって。それで事務所の社長にメチャクチャ怒られて。もうアイドル活動疲れたから責任取って俺くん結婚して! って突然婚約届をもって自宅前で待ってたんだが』ってタイトルです」

俺は恥ずかしそうに言った。


「えっ? なんですって? もう一度お願いします」

店主が言う。


「いや、だから『大好きだったクラスメート件アイドルが生配信中に好きな人は俺くんですってポロッと言っちゃって。それで事務所の社長にメチャクチャ怒られて。もうアイドル活動疲れたから責任取って俺くん結婚して! って突然婚約届をもって自宅前で待ってたんだが』です」

俺は赤面しながら言う。


「凄いなにそのタイトル。ながっ!」

ミカゲが言う。


「あの……すいません。もう一度お願いします!」

店主が言う。


「聞いてなかったのかよ! お前ワザとだろ!」

俺は突っ込む。


「すいません。該当なしですね」

店主が言った。


「聞いてたんじゃねぇかよ! オイ! これだけ言わせといて該当しかよ!」

俺は言う。


「あっ。似たようなので『大好きだったクラスメート件アイドルが生配信中に好きな人はマネージャーですってポロッと言っちゃって。事務所の社長にメチャクチャ怒られたんだけど、愛を貫いてマネージャーと結婚して幸せになります! 俺くん! 期待させてゴメンね!』ならありますけど」


「いや、全然違うだろ! マネージャーに寝取られてるじゃねーか! なんだよそのラノベは! 俺くん。期待させてゴメンね! じゃねーよ! ノリ軽すぎだろ! 舐めてんのか。その女! マジで許さんぞ!」


「いや、そういうラノベのタイトルなんですよ」

店主が言う。


「だからなんなんだよ! そのタイトルは!」

俺は叫ぶ。


続きます。



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