妹をイジメていたDQNに報復 2
政宗と小太郎。3年生のDQNの親玉、
「おい。悠斗。お前なにやってんの。こんなとこで。誰かを怖い顔で睨んでたけど」
政宗が言う。
「え? 女の子とデート? ごめん邪魔しちゃった?」
小太郎が言った。
いやぁああああ!!! こいつらにヒナを見られたくはない! 俺の大事な妹。よりにもよってこんなDQNの親玉みたいな奴らに。
「え? その子……え? マジ……お前の彼女?」
なにやら政宗が動揺している。いや妹なんだが。
「えっ? ヤバ。メチャクチャ可愛くね? 超絶タイプなんだけど」
政宗が小太郎に言う。
「ちげーって馬鹿。人の彼女に欲情してんじゃねーよ。ごめん。悠斗。俺ら邪魔だったな」
小太郎が言った。
「いや、妹なんですけど……」
俺は言う。あっ……これ言わない方が良かったのか。
「え? ええええええええ?!! お前妹? ヤベェだろ! お前の妹天使だろ。メチャクチャ可愛いじゃん!」
とフードコート中に響き渡る声で政宗が叫んだ。周りの客が一瞬ビクッっとなる。なんでこいつ地声がこんなにデカいんだ。
「え? マジで?」
小太郎もびっくりしている。
「あ、あ、あ、あの。僕。伊吹政宗って言います。よろしくお願いします!」
と言いながらヒナに握手を求める政宗。
「ヒィッ! 怖い!」
ヒナは当然のごとく怯えて俺の後ろに隠れた。
一瞬にしてショボーンとなる政宗。
「ごめん。怖がらせちゃって」
小太郎はヒナに微笑みかける。
いや、もうお前らヒナに喋るんじゃねぇよ! やっぱこんな奴らと関わり合いになるんじゃなかった。と思ったが俺はそれは言えなかった。理由は察してくれ。
「で、何してたの? 映画でも見に来たの?」
小太郎が聞く。
……! 俺はひらめいた。こいつらを巻き込むか。DQNに借りを作るのは嫌な感じだが。しかし、こいつらが勝手に手伝う分には問題ない。
俺は話し始めた。
「あのさ……妹と一緒にVTuberのイベントに来たんだけどさ……」
俺は政宗と小太郎に今までのことを全て話した。ヒナがイジメられていたことも。それで家庭がメチャクチャになったことも。そのイジメていた犯人がそこで集まって楽しそうに雑談していることを。政宗と小太郎の感情を揺さぶるように俺は話す。
「え、マジか……それメッチャ辛いやつじゃん」
俺が話し終わると政宗はちょっと引いたように言う。
「てか、それ教師がクソすぎね? 大人のくせになにやってんだよ」
小太郎が言った。
「あーーーもうムカつくな! コタ! 殺人罪ってどれくらい刑務所入ればいい?」
政宗が言う。
「え? 大体初犯だと10年くらい?」
と俺に確かめるように小太郎は言った。
「よしじゃあ、とりあえず10年刑務所に入ってくるわ!」
と行って政宗はヒナをイジメたDQNのところに駆け寄ろうとする。
「おい。馬鹿! やめろって」
と小太郎が止めた。
「でもよ。あぁ!! クソっ……こんなに可愛いのにあんなブスの嫉妬で……マジで殺してぇ。あのブスども」
政宗は言う。いやこいつヤバすぎだろ。俺は正直ドン引きしていた。
「そうじゃなくて、助けたいんだろ。政宗。この子を。だったら脅すだけでいいんだよ。面倒くさくなるから手を出すな」
小太郎は政宗にそう言った。
「えっ? なにが起こるの?」
ヒナはビビりながら俺についてくる。俺ら4人はDQNのところに向かっていた。
初手……ドゴーーーン!! 政宗がDQNの食べているテーブルを蹴り飛ばした。テーブルが吹っ飛んでテーブルに置かれていたポテトやハンバーガーがバラバラに散らばる。呆気に取られるDQNたち。それと俺とヒナ。
「拾え!」
と政宗はDQNたちを見下ろしながら怒鳴った。
DQNたち……いやよく見るとDQNではないな。流石高校がレベル高いだけあってそんなDQNというほどDQNではなかった。言ってしまえばチー牛の集まりだった。
「え? え? なんすか? 僕らなんかしましたか?」
震える声でグループの一人の男が言った。
「いいからさっさと拾えつってんだよ!!」
フードコートに響き渡る声で政宗が怒鳴る。周りの客も店員も見ないフリしている。そりゃそうか。
「ええええええ……」
俺の影で震えるヒナ。
「さっさと拾えって殺すぞお前ら」
と小太郎が冷徹に言う。
「は、はい!」
と言っていきなり戦意喪失したDQNたちは散らばったポテトを拾い出した。
「え? なに。どういうこと? ドッキリ? これ」
DQN女の一人は状況を理解してないみたいに言った。
「早く拾え。ブス。俺の拳でボコボコに整形するぞ」
とドスの利いた声で政宗は言う。するとその女は無言で従った。
政宗は後片付けさせるとDQNらを駐車場まで連れて行く。
「悠斗。スマホで動画撮って」
と小太郎が言う。
え? 俺はとりあえずスマホで動画を取り始める。
「え? ホントに分かんなくて。僕らなにかしましたか? お金なら出すんで」
と駐車場に連れてこられたDQNは言う。そして自ら財布を出した。
「黙ってろ! オメェは!」
政宗がそいつの耳元で叫ぶ。
「ひぃ!!」
DQNがすっかり怯えている。
「お前らさ。この子知ってる?」
小太郎がDQNにヒナを見せた。
「あっ。ヒナちゃん!」
「神谷さん……」
「うん。でさ。お前らこの子イジメてた?」
優しげに小太郎は聞いた。
「いや、イジメてないよな」
「うん。イジメてない」
お互いを見合わせながら言う。
「てめぇら!! ウソついてんじゃねぇぇぞ!!」
といきなり小太郎が怒鳴った。
ああああああ……もう嫌だ……もう帰りたい。
「なぁもっぺん聞く。イジメてた? イジメてない?」
人が変わったように小太郎は聞いた。
「ごめんなさい。イジメました」
「ひっ……ひっ……ごめんなさい……イジメてました」
「悠斗。撮った?」
ニコッっと笑って小太郎は俺に撮った。スマホでその様子を撮影してた俺は
「うん。撮った。撮った!」
と焦りながら言う。
「おいテメェら! 全員生徒手帳出せ!」
小太郎が怒鳴る。
DQNから生徒手帳が小太郎に渡される。
「これ住所乗ってるから一緒に撮っといて」
と小太郎がその生徒手帳を俺に手渡した。
え? あっ! そうか。こいつらの個人情報を握るつもりだ。確かにこいつらに住所バレてたらメチャクチャ怖い。俺はスマホでDQNどもの住所を録り始める。
「で、これからどうすんだ。テメェら」
政宗が叫んだ。てか誰も助けないんだな。そりゃそうか。怖いもんなこいつら。
「もう反省します」
「二度とイジメをしません」
震える声で口々に反省の声を述べるDQNたち。
「嘘ばっか! なんにも反省してないじゃん! 先生のところでみんな嘘泣きしてさ! 絶対イジメませんって! でもなんにも変わらなかったじゃん!」
ヒナが叫んだ。
「ってよ。どうする。お前ら自殺しとくか。その腐った頭死なねーーと治んねえだろ」
と政宗がDQNたちの顔をペチペチ叩きながら言う。
「ごめんなさい……本当に反省するから」
「ごめん……ヒナちゃん本当ゴメン」
口々にDQNたちは反省の弁を述べる。
俺は思わずDQNの前に立った。DQNの舐めた態度にキレそうだった。
「おい、お前ら。俺が誰だか分かるか」
と俺はDQNに言う。
「えっ? ごめんなさい。わかりません」
半べそをかきながらDQNは泣く。
「お前らがイジメたヒナの兄貴だよ。お前ら良くもやってくれたな!」
俺は言った。
「お前らのせいでヒナも俺の家庭もメチャクチャだよ。お前らが軽い気持ちでやったイジメでヒナも俺らもメチャクチャに傷ついたんだよ。それが分かるか! ヒナはお前らのせいで未だ学校に行けてない。なんでだよ。オイ! なんでなんにも悪いことをしてないヒナがあんなに苦しんでお前らがニヤニヤ笑いながら生活してるんだよ!」
「なぁ! なんで悪くもないヒナがお前らから逃げ回らなきゃいけないんだよ! なんで久し振りに外に出てきたのに、お前らのせいで大好きなイベントに参加出来ないんだよ! 答えろよ! オイ!」
俺はDQNの胸ぐらを掴みながら言った。
「お前らさえいなかったらな。ヒナもあんなに悲しむことはなかったんだよ! 分かってんのか! それが!」
怒鳴る。
「す、すいません。もうしません」
震える声でDQNは言う。
「お前らのことなんてどうでもいい。ヒナを傷つけたら本気で殺してやるからな。男でも女でも関係ない。一人一人順番に全員殺してやるからな。お前らの大事な人たちも殺してやる。本気でやるぞ俺は」
憎々しげに俺は言う。
小太郎と政宗は黙って俺を見ていた。
コクコクとDQNはうなずく。
「おい! 返事ーーーー!!」
政宗が怒鳴った。
「わ! 分かりました! もうしません!」
とDQNたちが口々に言う。
「じゃあお前らどっか行け。目障りだから消えろ」
小太郎が言うと
「ありがとうございましたーー」
とDQNたちは去っていこうとすると
「ウラァーーー!!」
と政宗が怒鳴って追いかけた。
「うわぁあああああああ!!!!」
と叫んで逃げるDQNたち。
「あいつらビビリすぎだろ」
と戻ってきて笑う政宗。
「で、これで解決でいい?」
小太郎が俺とヒナをみつめて言う。
「あ、ありがとうございます」
俺はお礼を言った。
「気にすんなって。友達じゃん。俺ら」
小太郎が言う。え? 友達? 俺はこいつらと友達になった覚えはないんだが……いつの間に……
「ひ、ヒナちゃん。これで学校行ける?」
政宗が聞いてくる。
「ありがとうございました。でも私はあなたのことは絶対好きにならないです!」
とヒナが言う。
え? 一瞬時が止まる。えっ! とショックを受けたような表情になる政宗。
おおおおおおお……ヒナなんてこと言うんじゃ……
すると
「キャハハハ」
と小太郎が突然笑った。
「やべーーこれマジでおもしれー」
と言いながら小太郎は笑う。
「いや、笑うなって」
政宗はなんだか陰キャっぽく言う。
「そりゃそうだよな。勝手に助けただけだもんな。下心で助けたとかそんなんじゃねーもんな」
と小太郎は意地悪く言う。
照れたように小太郎を見る政宗。
「じゃな!」
と言って政宗と小太郎は俺たちの前を去った。ガクンと力が抜ける俺達。俺はスマホを見る。DQNたちのイジメの自白が記録されていた。使い道あるのか? これ。
「ヒナ大丈夫か?」
俺は言う。
「あああああ……あああ!!! ビックリした! なにあいつら。DQNじゃん! おにぃ! なんであいつらと知り合いなの?」
ヒナが言う。
「いや、知り合いっていうかたまたま……話しかけられただけ……」
「ヤバイ! ヤバイって! 未だにドキドキしてんもん。ビビリすぎて!」
ヒナが言う。
「ま、とりあえず休憩するか……」
俺達は休憩してから、ぷりとぷのイベントに入った。
「ねぇ。おにぃ。あのDQNたち。いないね」
とヒナが言う。
「流石に帰ったんだろ。そりゃそうだろうな。あんなことがあったら」
俺は言った。
「てか、おにぃ」
と言ってヒナは吹き出した。
「普通、映画の中でしか聞かないよ。ヒナを傷つけたら本気で殺すって。おにぃがあんなこと言うなんてビックリした!」
とヒナが笑いながら言った。
「そりゃ俺もたまには兄貴らしいことするよ」
俺も笑う。
「でもやめてね。人殺しなんて。ヒナはおにぃに人殺しになって欲しくないよ」
ヒナは言った。
「うん……そうだな……」
俺は少し無言になって考え込む。そして言った。
「ヒナ! ごめん!」
「えっ? なにが?」
「ほら昔、家族会議の時に俺言ったじゃん。相手にも事情があるって」
「あ……うん」
ヒナは察したようだ。
「ずっと後悔してた。俺の言葉でヒナを傷つけたことに。兄貴としてまず、ヒナの味方をしないといけなかったのに」
俺は言う。
「うん……」
「だから俺決めたんだ。どんな時もまずはヒナのことを信じる。ヒナの味方になる。たった一人の妹だからな。だからヒナを傷つける奴は許さない」
俺は言う。
「うん……」
「俺は兄貴だからな。頼ってくれよ。なんせ俺はヒナより1分早く産まれたんだから」
俺は言った。
「1分だけじゃん!」
ヒナが笑う。
「でも、ありがとう。カッコ良かったよ。おにぃ。じゃあこれからもおにぃに兄貴ヅラさせてあげるから」
と言ってヒナは笑った。俺もそれにつられて笑う。
◇
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