キミはボクの恋愛被験者第一号だ

「ウェーーイ!!」

龍二が叫ぶ。

ボコン! 痛っ! 学校の教室。俺は成宮龍二に肩パンされていた。


「悠斗くんに肩パンしたい人ーー」

と龍二が周りの取り巻きに言う。


ボグン! 龍二の取り巻きが俺に肩パンする。俺はそれを黙って耐えていた。


はっ! 俺はベッドから跳ね起きる。龍二にイジメられていたころのトラウマだ。それが今になって鮮明に蘇った。だがそれも過去のことだ。今はもう攻守逆転なのだから。龍二はもう終わりだ。あいつの自業自得であいつの人生は終わった。


ふとスマホを見る。時間は……朝になっていた。

葵からメッセージが届いている。


あの……陸上の選抜メンバーの件……忘れないでね。とメッセージが書かれていた。


選抜メンバーの件? 俺はまた起動してない頭を使って考える。あっ! そうだ! 葵が大会の選抜メンバーに選ばれたら頭をヨシヨシするって約束したんだ。


そうだ。葵も随分ナーバスになっているだろう。龍二を追い詰めるのが楽しすぎて忘れかけていた。俺はベッドから起き上がる。



俺は学校についた。席につくなり大吾が話しかけてくる。大吾……こいつは俺のスパイだ。こいつは龍二と仲がいい。だから俺は龍二たちのグループチャットのスクショを俺に送らせた。なので龍二の考えていることは俺に筒抜けだった。


「なぁ! 見たかよ! 龍二やべぇって! やべぇって!」興奮気味に話す。

「落ち着けって俺らは大丈夫だ。目立つような真似さえしなけりゃな」俺は言う。


「違うんだってこれ見ろよ!」

と言いながら大吾は俺にスマホを見せてくる。それは動画投稿サイトのアプリの画面だった。

タイトルは……

『◯◯高校イジメ主犯格成宮龍二に突撃! 警察沙汰?』

というものだった。は? マジか昨日の今日だぞ! もう動画投稿者のアクセス数稼ぎの餌食になったのか。大吾は動画を流す。


動画投稿者の声が聞こえる。


「はい! フラッシュ! 夜中なんですがね。皆さん見ましたか? あの胸くそ悪い事件。◯◯高校の事件。あれのね犯人が分かったんですよ。犯人の名前は成宮龍二! そのクソ野郎の家に今来てます!」


ピンポーン!! 

「成宮くーーん。人間のクズ。成宮龍二くーーん。遊びに来たよーー。出てきてーー!」


「出てこないですね。もう一度鳴らしますね」ピンポーン!! 

「成宮龍二くーーん。おじさんとお話しようよーーー! なんでイジメたの? 家庭環境が良くなかったのかな! ごめんねぇ! 夜遅く来て! じゃあ大変迷惑だと思うんですけど、ご近所さんとお話してみるね!」


ピンポーン

「すいません。隣の家の成宮龍二くんのことナンですが。ご存知ですか」


ガチャ!


「はい。知ってますけどどうされました?……」


「こちらの動画を見てもらっていいですか?」


ギャハハハ!!

やめてください龍二くん!

ウェーイ


「うわぁ! これ成宮さんのとこの息子さん……」


「そうなんですよ。この人普段からこんな人だったんですか?」


「確かに昔からヤンチャって言うか……うちの子のオモチャを壊して笑ってたり、中学生になったらタチの悪い友達と付き合うようになって。うちも本当迷惑してた」


ピンポーン!

「ごめんなさい! 成宮くんのご近所さん!」


動画は流れている。この動画を見ながら俺は笑い死ぬかと思った。正直笑いを堪えるのが大変だった。


「夜中じゃん……夜中は流石に迷惑だろ……」俺は笑いを噛み殺すように言う。


動画の音声はまだ流れている。

「はい! 臆病者の成宮龍二は出てきませんでした。あぁいうやつって集団で集まって初めてイキれるんだよね。あぁ本当雑魚!」


俺は思わず吹き出しそうになる。


「龍二あいつどうなるんだろ……」心配そうに大吾は言う。まぁこいつにとって心配なのは時分に飛び火しないことだけだがな。精々利用したお前もポイだわ。


「え? 龍二じゃん!」

「えっ? マジ。あいつ登校してきたの?」

「メンタル鬼かよあいつ!」

口々にクラスメートが話す! なにっ! あいつまさか登校してきたのか? 


龍二が教室に入ってくる。

「よぉ」力なく龍二が言う。クラスメートは冷たいものだ。龍二を見て見ぬふりをしている。誰も挨拶を返さない。


龍二が教室に入ってきたら今までは取り巻きたちが龍二のところに集まってたのだがな……


だが……龍二は今や一人ぼっちだ。いや、ネットでは随分人気があるじゃないか。龍二。ファンが家まで来てよ。羨ましいぜ全く!


「まだ伊藤来てねーの?!」

比較的大声で龍二がクラスメートの誰ともなく話す。

全員無視していた。まるで龍二がこの世に存在してないかのように。


「おい! 無視すんなって」

と龍二は笑いながら龍二がいつも雑談している女の肩をポンっと叩いた。


「キャーーーーーーーーー!!!」

響き渡る女の悲鳴。俺は一瞬ビクッっとした。

「大丈夫? 莉子!」

「触られた! 触られた! キャーーー!!」


「触られたって……お前らが無視するから……」龍二は言う。


「もうあっち行こ!」女たちが龍二から離れていった。


龍二は呆然と自分の手を見る。


凄まじい手のひら返し。叫んだ女は龍二の取り巻きの一人だった。よく龍二くんカッコいい!! って目をハートマークにしてキャーキャー言っていた。


それが……「くふっ」俺は笑う。


終わったなぁ。龍二。俺らの世界にようこそ。女から無条件に嫌われた気分はどうだ? なぁキツイだろ。今までボディタッチされて平気で喜んでされていた女が一瞬にして敵に早変わり! 恐ろしいのぉ。龍二くぅん。恐ろしいのぉ。女の移り気は。


クラスのカーストから転げ落ちたら誰も助けてくれないねぇ。そりゃそうだよ。こっちまで滑落事故に巻き込まれるのは誰だって嫌だよ。


龍二は絶望的な表情で席に一人座っていた。


どうだよ。俺らの気分味わったかよ。だが俺は容赦しないからな。お前が大智くんにした仕打ち。どれだけ被害者ヅラをしても無くなりはしないからな。


「さぁ授業を始めるぞ。あっ……龍二お前大丈夫か……」

教師が言う。

「はい……」幽霊のような声で龍二は言う。


ぷっ! 俺は吹き出しそうになる。


「ネットの炎上とか色々あるけど、勉強はしないといけないからな! みんな切り替えていくぞ!」

教師は言う。


その後、龍二はいつの間にか消えていた。家に帰ったのだろうか。


キーンコーンカーンコーン


昼休み


「あーー楽しかった!」

俺は飯を食うと廊下をぶらぶらと歩いていた。


理科室の前までくる。ん? 扉が開いている。誰かいるのか。

「!」なんとそこには白衣を来た小さな女の子が理科室の人体模型相手にキスをしていた!


なんだ! この光景は! 小学生か中学生くらい小さい女の子が人体模型を抱きしめたり、キスしたりしていた。


「撮らなきゃ……」

デジタルネイティブ世代の俺は躊躇なくスマホを構える。そしてピコン! 女の子を撮ろうとすると……


「誰だ!」と女の子がこっちを振り返り叫んだ。


すると俺の体に縄がヘビのように絡みつく! うおっ! 一瞬にして俺は捕縛された。そして気を失う俺。


「おい! 起きろ! いつまで寝ているんだ!」

舌足らずな女の子の声が聞こえる。


俺は目を覚ました。するとそこには白衣姿の幼女……より少し大人……なくらいの女の子が座っていた。


「なにをしていた。盗撮は犯罪だぞ。キミ」

と舌足らずな口調に似合わない感じで俺に言う。


「あなたが人体模型にキスをしてたから……」朦朧とした意識で俺は言う。


「それで盗撮してたのか……馬鹿だなキミは。ボクがやってたのは実験だぞ。実験」

よく分からないことを女の子は言う。


「あなたの名前は?」朦朧として俺は聞く。


「ボクの名前は鎧塚小兎……ヨロイズカコウサギ。ボクは3年だからキミの先輩だな。ウサ先輩と呼ぶやつもいる。敬語を使い給え。2年。ボクは今世界を変える研究をしているのだよ。研究テーマは恋愛だ。そうだな。君は実験体として都合がいい」


というとウサ先輩は椅子から立ち上がり両手で俺の顔を持った。

「今日から君がボクの恋愛被験者第一号だ。キミはボクと恋愛をする。キミはこのボクを恋する乙女に変えるのだ。科学的な恋愛をしようじゃないか」

とウサ先輩は俺を見て言う。


え……どういうことだよ。俺はこの幼女にこれからなにをされるんだ……



新キャラ登場しました。ウサ先輩。次回から研究と称したウサ先輩とのイチャイチャがスタートします。


ウサ先輩は天才少女です。今まで恋愛をしたことがなかったので、頭で恋愛を理解しようとします。それが今後どうなるか……


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