名前出されたよ。もう終わりだよ
おおおおおおおおおいいいいい!!!
「じゃあボクも電話してみるか」
ウサ先輩の声が聞こえる。スマホの電源を切るか。いやでもウサ先輩を傷つけたくない。でも浮気がバレたくない! ここは……ま、出てみるか。
俺は颯爽と席を立ち電話がかかるのを待つ。
♫「はい」
うおおおおおお!! っと向こうで声が聞こえる。
「や、やぁボクだ。いま何をしてるんだ。サーフボードを買いに行くとか言ってたけど」
ウサ先輩が言う。
「なにしてたって。そりゃウサ先輩と一緒ですよ」
俺は言う。
「一緒とは?」
「俺もウサ先輩のことを考えてましたよ」
俺は言う。するとキャーーーーー!!! っとウサ先輩たちの叫び声が聞こえる。
もういい……悠斗! 乗れっ! このビックウェーブに! 守りに入るな! 攻めろ! 悠斗!
「そっそっか。嬉しいことだな。思いが通じ合うことは」
ウサ先輩は言う。
「心のどこかで繋がってるんですよ。量子テレポーテーションですよ」
俺は言った。
うおおおおおおおお!!! っと電話口から声が聞こえる。
「素敵じゃないか……キミ。ボクとキミの心が繋がって、しかも考えていることも一緒だなんて。こんな奇跡があるんだな」
ウサ先輩はうっとりしたように言う。
「なにいってんすか。お互いのことも知らなかった僕達二人が同じ街に住み同じ高校に行き同じ時を過ごしている。それだけで奇跡ですよ」
俺は言う。
乗れっ! 乗れっ! このビックウェーブに乗れっ!
「ん? キミはなにを言ってるんだね。同じ高校に行くなら同じ時を過ごすのは当たり前じゃないのかね? だって同じ授業を受けているんだから。過ごす時間も一緒だろ。キミは何が言いたいんだね」
ウサ先輩はいう。
あっ……! 振り落とされる! 波に飲まれる! だが……
「違いますよ。ウサ先輩。その当たり前の日常が奇跡と思えるくらいウサ先輩のことが大好きってことですよ」
俺は言う。
「キ、キミはなぁ……」
と照れたような口調でウサ先輩は言う。
乗れた!
「大好きですよ。ウサ先輩」
俺は言う。
「ボクもキミのことが大好きだ。悠斗」
は?
何いってんだこいつ。名前言ったじゃん。もう終わりじゃん。あれだけ名前言うなって言ったよな! あぁもう終わりだよ。
「えーー先輩の彼氏も悠斗って言うんですか! 私の彼氏も悠斗なんです」
あぁもう終わった。俺はいち早くこの街から出ていこう。明日にでもどこか知らない場所に向かう高速バスに乗り込んで、そこで暮らすんだ。
「へーキミの彼氏も悠斗なんだ。偶然の一致だな。キミとボクは気が合うから同じような名前の人を好きになるんだな」
とウサ先輩が言う。
繋がった? 首の皮一枚。繋がった……?
「そうですか。私の彼氏の悠斗は正義感が強くてちょっとHで、でも明るくて面白くて、それで私にだけ優しい人なんです」
葵が笑いながら言う。
「そうか。ボクの好きな悠斗は道徳心の欠片もなく、堅物で、口先だけの陰キャのコミュ障でそれでもボクにだけ優しい奴なんだ」
とウサ先輩は言う。
「そうなんですか。でも好きになったら仕方ないですよね」
葵は言う。
「そうだな。お互い悠斗は悠斗でもまったく別々の悠斗を好きになったんだな」
ウサ先輩は笑って言う。
繋がった! まさかのコース復帰!
「ありがとう。キミに会えて良かったよ」
ウサ先輩が言う。話終わった?
「私も先輩と話せて良かったです」
葵が言う。
「では邪魔したね。ボクはこれで失礼するよ」
と言ってガラッっと椅子を引き立ち上がる音がした。
「はい。執筆活動頑張ってください」
葵が言う。
二人はそのまま別れたようだ。
「ふぅ……」
ため息をつく。
俺も席を立った。
「ウサ先輩!」
俺は歩いているウサ先輩とミカゲに声をかける。
「おう。キミはどこにいってたんだね」
ウサ先輩は言う。
「いやぁ。女の子同士の方が会話が盛り上がるかなって思いましてね。本音のガールズトークって言うんですか?」
俺は笑いながら言う。
「まぁ盛り上がったがな」
ウサ先輩は嬉しそうだ。
「なんで急に電話してきたんですか?」
俺は聞いた。
「恋人同士が会話しちゃいけないってルールでもあるのかね」
と照れくさそうにウサ先輩は言う。
「ま、そうですね。遅くなりましたね。送ります。帰りましょう」
俺は言った。
「あぁそうだな。ではエスコートしてくれたまえ。ナイトのユウトくん」
とウサ先輩はふざけるように言った。
「はい」
俺はウサ先輩の手を取った。
「じゃあ! 私も片手いただきます!」
と言ってミカゲも俺の片手を握ってきた。
「大丈夫です。二人まとめて守りますよ」
俺は言った。
「キャーーー」
っとミカゲが叫んだ。ウサ先輩が微笑む。
◇
「ほらウェーブ!」
俺を真ん中にして右手にはウサ先輩、左手にはミカゲの手を握っていた。
俺たちは波のような感じで手と手を取り合ってハンドウェーブをする。そうして3人で笑いあった。
「楽しいな。好きな人がいる世界は」
ウサ先輩は笑っていた。
「そうですね」
「陽キャしねっ!」
ミカゲが笑って言う。
俺たちは3人で手を繋いで帰っていった。
「じゃあ!」
俺はウサ先輩たちに手を振った。
一人になると俺はつぶやいた。
「あーー!! 危なかった。ヤバかった……このままじゃ駄目だな。どっち付かずになる」
なんとかしないと……どっちを選ぶべきか……それとも今のままなぁなぁにしとくべきか。
あぁ! マジで弱ったな。
俺は家についた。
「あっ! 悠斗。お客さん来てるよ。あんたの昔の友達」
母親が声をかけてくる。
「えっ? だれ?」
「ほら、いたじゃん。子供の頃一緒に遊んでいた。楓ちゃん」
「楓ちゃん?」
誰だそれ。
「ゆーーうと!」
と言いながら見知らぬ女性かいきなり俺に抱きついてきた。胸が押し付けられる。
「うぁ! あ、あ、あ、あ、あ……」
俺は固まる。
「覚えてる? ユウト。成長したでしょ。あたし」
と言ってそのショートカットの女の子はニカッっと俺に微笑みかけた。
◇
またヒロインでたよ!
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