第4章(最高の仲間と迎える終焉編)

一難去ってまた一難……。本当にコレ終焉に向かってるのか?!

 俺達はオカマ四姉妹の桜子さん達と別れてから海岸線沿いに真っ直ぐ歩いてたら、目的地の海が見渡せる岡の街にやってきた。ここまで来るの凄く大変だったよ。だって、あのオカマ四姉妹とお別れするのはそれはそれは大変だったんだよ。


 ーー1時間前。


 一刻も早くここから出たかった俺は悠音と奏太を説得し、オカマ軍団が疲れて眠っている隙に逃げ出しそうと提案した。悠音と奏太は俺の提案をすんなり受け入れてくれたけど、後から俺達の部屋にやって来た詩とアリアには反対されたんだよね……。


「律君、桜子さん達に凄くお世話になったんだからちゃんとお礼言わなくちゃダメだよ」


「そうだよ! アリア達に豪華なご馳走をおもてなししてくれ人達なんだからね」


「それは、そうかもしれないけど……」


 って、いつ詩達はご馳走になったんだ?! ちょっと、羨ましいな……。俺達なんてただ変な物飲まされただけなんだからね。もう、本当に勘弁して欲しいよ。


 けど、あれ……?

 体がいつもより何故か軽いし、元気いっぱいな気がするのは何故だろか? いや、今はそんな事を気にしてる場合じゃないんだ! このままここに居たら何されるかわからないし、どうにかして詩達を説得しないとなんだけど……。


「いいか、皆聞いてくれ!

ベッドでこんなに死んだようにぐっすり寝てる人達を起こしていいと思うか? いいや、俺はよくないと思うよ。きっと日頃の疲れが溜まってるから、ここはゆっくり寝かせてあげよう! それが、俺達なりの感謝の証だ」


「それもそうだね! 律君の言う通りここはそっとして置いた方が良さそうだね」


「それに、ちゃんと宿泊代とお礼の置き手紙も置いていくから大丈夫だよ!」


「どうやら話はまとまったようだな!

僕はいつでも逃げられる様にずっとスタンバってたんだぞ」


「流石、悠音さんッス!」


 ア、ハハハハ……。

 本当、悠音と奏太はお気楽でいいよな。その二人のお気楽さがちょっと羨ましく思えてきたよ。って、そんな事言ってる場合じやないよな。急いで支度を整えないとっ!


「皆、ちょっと待ってくれ! 急に僕の邪眼が……」


「この忙し時になんだよ悠音?」


「どうやら、僕の邪眼が4体の化け物があと一分で目覚めると告げている。僕はこれより永眠を開始する……」


「えっ、悠音?!」


 悠音の奴いきなり倒れたかと思ったら目を見開いたまま寝てるし、逆にそっちの方が怖いよ。それに、4体の化け物ってなんだよ?!


 まさかとは思うけど、あのオカマ四姉妹が目覚めちゃったって事ないよね……。俺はベッドに寝ているオカマ四姉妹を見てみたら…………うん、やっぱり起きてたよ。しかも、何で起きた途端に全員目に涙をうかべてるんだよ?!


「律きゅん酷い、私との事は遊びだったのね」


「いや、ちょっと! 撫子さん変な誤解を生むような事言わないでよね。ひとまず落ち着こうよ」


「落ち着いてなんていられないわよ! だって、私と律きゅんはあの仄暗い落とし穴の底で永遠の愛を誓った仲なのよ」


「律、そうなのか? 僕という親友がいながらまた同じ過ちを繰り返すなんて見損なったぞ」


「律さん、それはちょっとドン引きッス……」


「愛のカタチは人それぞれだよね。ベル姉が確かそんな事言ってたよ」


「律君そうなの?」


「悠音とも奏太もアリアも詩も信じないでよ! 断じて違うし、俺一度も撫子さんと誓ってないから信じないでよ。それに俺達はやらなきゃいけない事があって……」


 もう、なんでこんな事になるんだよ?! 皆、明らかに挙動不審になってるし空気がもの凄く重たいよ。けど、ここで立ち止まる訳にはいかない。何とかして空気を変えなきゃなんだけど……。


 あぁ、こんな時どうすればいいんだ?! 何も思いつかないよ!


「行かせて上げなさい撫子……。

この子達は私達にはわからない大きな使命ってのがあるのよ。私達にその歩みを止める権利はないわ」


「桜子姉さん、そうかもしれないけど……」


 あれ? 俺の目がおかしいのかな……何だか桜子さんがかっこよく見えるぞ!


「ごめなさいね、律きゅん達……。どうか、撫子のわがままを許してやってちょうだい。この終わりの見えない世界の中で私達は悲しい別れを幾つも見てきてしまった。だから、貴方達もそんな風にはなって欲しくなかったのよ」


「ありがとう桜子さん……。色々と俺達誤解してたみたいだね。桜子さん達は見ず知らずの俺達をただ守ってくれようとしてたんだね。それなのに俺……」


「いいのよ。それが私達大人の努めなんだから。それに、ここに居れば安全よ。ゾンビが襲ってきても貴方達を守ってあげられるし、無駄な争をしなくて済むのよ。それでも行くの?」


「うん、俺達は行くよ! どんな悲しい結末を迎える事になっても、この仲間とならきっと乗り越えられるって俺信じてるから。なっ!」


「いや、僕には……」


「ちょっと悠音、そこはハイでいいんだよ」


「悠音さんには荷が重いと思うけど、俺は律さんに何処までも着いて行きますよ!」


「そうそう! 悠音には無理だけど、私はいつでも律君の味方だよ」


「わたしもあんた達の事信じてあげるよ」


「私モ律様ヲ信ジテオリマス」


「皆、ありがとう!」


 俺は本当に良い仲間に出会えたよ!

 辛い事もいっぱいあったけど、それと同じくらい楽し事もいっぱいあったから俺は俺らしくいられたんだと思う。俺一人じゃあ絶対に心折れてたに違いなよな。


 例えこの世界の主人公じゃなくても俺にしか出来ない事がまだ沢山ある。この仲間たちと一緒に自分自身の未来を切り開いて行こう!


 俺達は桜子さん達に別れを告げ、海の家パレスオブドラゴンを出た。


 そして、今に至る訳である。



「おーい、皆早くしてよね」


 なんで、アリアはあんなに一人だけ元気なんだよ! 他の皆は俺と同様に疲れてるよね。だって、今皆無言になってるし、ほら疲れると無言になるのは定番中の定番だよ。それに、俺達かなりの距離歩いた訳だし疲れないわけないよな…………ん?!


「ここ最近音ゲーに触れてないなんて、僕には耐えられない」


「ゾンビって疲れないからほんと楽ッスよね」


「私、ヒロインなのに出番が少ない気がするのは何故だろ」


「…………。」


「どうしたの律君?」


「何でもないよ詩」


 あれ? 無言じゃなくて、皆物思いにふけてるだけだった。って事はめちゃくちゃ疲れてるの俺だけじゃん! そういえば、すっかり忘れてたけど俺以外は皆ゾンビなんだから人間は俺だけって事になるじゃん!


 けど、あの時確かに俺の心のど真ん中に仲間の絆を感じたんだ! 人間とゾンビの垣根を越えた本物の仲間って奴を。皆もそう思っていてくれたら嬉しいな……。


「そうだKAGUYAカー! この街の説明を頼めるか?」


「カシコマリマシタ律様。

コノ海ガ見エル岡ノ街ハ中心二教会ガアリ、教会ヲ囲ムヨウニ街ガ出来テイマス。街ノ中ハ迷路ノ様二入リ組ンデイテ、家ハ土デ出来テイマス。崩落の危険性ガアルノデ気ヲ付ケテ下サイ」


 来てみたものの、この街に俺達が求めているものの答えが本当にあるんだろか? もしも、なかったらどうしようか……。まっ、その時はまた皆と一緒に考えれば良いよな!


「キャッ?!」


 って、言ってるそばからもう問題を起こしてくれちゃってるんだから。確か、悲鳴が聞こえたのはあの角を曲がった先だよな。


「どうしたんだ?」


「それがね律君、足元がいきなり崩れてアリアちゃんが今にも落ちそうなの」


 本当だ! 詩の言う通り足場を無くしたアリアは何とか柱につかまってる状態だった。底は何処まで続くかわからない暗闇だ。早くなんとかしないと。


「アリア、早くこっちに手を伸ばせ!」


「そうだよアリアちゃん」


「ヤダもん……」


「なんで?!」


「自分で上がれるから律達は来なくて大丈夫だもん」


 いや、無理だろ!

 なんでアリアの奴あんなに意地張ってるんだよ。俺の手を掴んでくれれば助ける事ができるのに、全く世話が焼ける奴なんだから。


「俺がもう少し前に行くから、皆は手と手を繋いで落ちないように支えてくれ」


「了解」


 よし、これなら大丈夫だ!

 皆が支えてくれてるから落ちる心配はないし、これならアリアを無事に助けられる。アリア待ってろよ!


「だから、これ以上来たら柱が折れるからダメなの」


バッキ……!


 えっ?! えぇぇぇぇ?!

 嘘だろ……全員落っこちてるよ。なんてこった。これ俺が悪いのか? てか、アリアそういう事はもっと早く言ってくれぇぇぇぇ!

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