さぁー、ここで第一章のフィナーレといきますか!
俺は屍の山を足で踏まないに気を付けながら進んだ。案の定クリーチャーも俺の後ろをしっかりと着いて来た。でも、クリーチャーは屍の山の死体が気になったのか、いきなり死体を貪り食い始めた。
うげー……!
この世で一番見たくない食事シーンを見てしまった。だけど、クリーチャーは今食べる事に夢中で少し逃げる時間が稼げたかもしれない。
クリーチャーの隙を見て俺は急いで通路を駆け抜けた。通路を抜けるとそこは石と土で出来た広い造りの部屋だった。
でも、この部屋は何だか工事が途中で中断されてしまって、至る所が建設途中のように見える。それに、建設道具や資材にはシートが掛けらいてそこに土埃が溜まっていた。
とりあえず、詩をクリーチャーから見えない左側の安全そうな場所に置き、そこら辺に置いてあった資材やシートで詩を覆い隠した。
「詩、すぐ終わるから少しの間だけココで待ってて……」
俺は一人、最後の決戦に挑んだ。
この戦いはきっと勝つ見込みはゼロに等しいかもしれない。それでも、今ここで絶対に逃げ出したくない。
だって、俺まだ皆にちゃんと証明してない。仲間達が命を懸けて守ってくれた価値ある漢だと!
「それを証明する為に、俺がココで何としでも食い止めるんだ!」
床に転がっていた丁度いいサイズの鉄パイプを見つけ、俺は手に取り強く握りしめた。
「律様、ドウスルオツモリデスカ?」
「わからないけど、やるだけの事はやってみるよ!」
俺がこの部屋の中央に立った時だった、急に誰かの視線を感じ反対側を振り向き見上げてみた。そこには、三体の立派に完成された女神様の石像がそびえ立っていた。
その凄さに俺は思わず魅入られてしまった。中央の女神様の石像は人々に優しく微笑みかけ、両手で手を差し伸べていた。左側の女神様は両手で壊れてしまった地球をすくい上げていた。右側の女神様は両手で地球を優しく包み込んでいた。
どうしてココの通路に屍の山が出来ていたのか、今ならわかる気がする……。
この部屋は、人々が女神様に祈りを捧げるために作られた場所だったんだ。
最後に人々は女神様に助けを求める為にココまで来たのかもしれない。
「不思議だ! まるで、この女神様達はそれぞれ創造と破壊、再生を司ってるように見える……」
でも、石像は大分時が経ち脆く至る所が今にも崩れ落ちそうだった。そんな状態の女神様の石像を見て俺は一か八かの賭けをする事にした。
俺は女神様の石像の方へ向き、そっと目を閉じ胸に手をあてた。
「今、神様とか女神様見ると言いたい事山ほどあるけど、どうか俺に力をお貸しください……」
俺が目を開けた時、クリーチャーも通路からやって来て入口に手を掛けこの部屋を覗き込んできた。
俺は息を深く吐き、クリーチャーに向かって真っ直ぐ鉄パイプを突き立てわざと煽るように言った。
「こっちに来いよ! ノロマ野郎……」
クリーチャーは俺の方目掛けて突進してきた。そうだ、こっちに来い!
あの時、KAGUYAと長々と作戦会議してた訳じゃない。実はちゃんと強化ガラス越しからクリーチャーの攻撃パターンや癖をしっかり見てたんだ!
「RPGプレイヤーを舐めるなよ!」
俺なら出来る!
たっくんや直人さんが生き抜く戦い方を教えてくれたんだ。それに、ここで見せないでいつ見せるだよ!
俺は必死に戦って途中、何度か殺り合う場面の時に持っていた鉄パイプをクリーチャーの右目に刺す事に成功した。
クリーチャーは悶え苦しみ、その場で立ち止まり俺の事を睨みながら吠えた。そして、ジリジリと俺を壁際まで追い込み攻めるような攻撃に変えた。俺は今、クリーチャーは対峙する様な格好になっていた。
「こんな時響きならどうするかな……?
彼奴ならきっとこうするに決まってる!」
俺とクリーチャーはほぼ同時にお互いに走り出していた。俺は走りながら響の身軽さをに頭の中で、ゲームのボス戦の時みたいに何回もイメトレし呼び起こした。そのままのイメージで身体を委ねたらクリーチャーの背中に飛び乗る事が出来た。よし、成功した!
「響流で言ったら、あばよかな?」
暴れるクリーチャーの背中でまだ見える左眼を鉄パイプで突きさした。クリーチャーは絶叫し、仰け反った拍子に俺は床に叩き落とされた。
視界を全て絶たれたクリーチャーは己を制止する出来ず、無我夢中で走り最後は転がるようにして女神様の石像に盛大にぶつかった。そして、女神様の石像が折り重なるように倒れ込みクリーチャーはそのまま下敷きになってしまった。一瞬で土埃が舞い上がった。
「俺、やったのか? 俺があのクリーチャーを倒したんだよな!」
あれ、可笑しいな……。皆にちゃんと伝えたいのに涙が溢れてきて止まらない……。こんな、泣いてばかりいたら、たっくんや直人さん、それに響に笑われちゃうな。けどね、俺一人でもちゃんとあの物凄く強いクリーチャー倒せたんだよ!
「俺さぁー、皆にかっこいい姿を一番近くで見て欲しかったな……」
「キット今ノ律様ノ姿ヲ見タラ、皆サンカッコイイッテ笑イナガラ喜ンデクレマスヨ」
「うん……」
しばらく泣いた後俺は涙を手で拭い、眠っている詩をおんぶして新たな扉の前に来た。そして、心の中で出口に通じてますようにとお願いをしながら扉を開けた。
願いが通じたのか……?
俺達が開けた扉は外に通じていた。そこから一歩出た瞬間、太陽がやけに眩しく感じた。俺は久しぶりに外の空気を鼻から吸って吐いた。凄く新鮮に感じた……。
まだ、俺は新鮮な空気を吸いたいのにKAGUYAは慌てた様子で話し掛けてきた。
「律様、大変デス!
体力ガ1上がりC+になりました」
「何だよそれ……」
喜んでいいのやら泣きたい様な、そんな気持ちになった。
俺は沢山のモノを仲間から貰ったけど、それと同じくら失ってしまった。
だけど、それでも生きる事はやめない!
ココにはもう臆病で弱虫なダメな俺はもういないから……。
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