ゾンビがいるんだからクリーチャーの1匹や2匹いてもおかしくはない
「なんで、ココに想像上のクリーチャーがいるんだよ?!」
「律様、アレヲ御覧下サイ」
俺は
「ご丁寧にどうもありがとうございます。って言うとでも思ったか! なに、クリーチャーなんて物創ってくれちゃったんだよ。本当、有り難迷惑だよ! 皆が皆、クリーチャー好きだと思うなよ」
そういえば、どうして俺達がまだクリーチャーに襲われてないかって不思議に思うだろ? 答えたは簡単だ、実は強化ガラスに囲まれた場所にいるからなんだ!
クリーチャーは俺達が見える強化ガラスに何回も突進してきた。でも、あのクリーチャー変だぞ! 隣におもいっきり全開に空いてる窓があるのに突進して来るなんて、もしかして気がついてないのか?! こいつ見た目はあんなグロテスクな姿なのに、実はおバカだったんだ! なんだか可哀想に思えてきた……。
だけど、幾ら強化ガラスで出来ていても壊れるのは時間の問題だ。どうする?
俺とKAGUYAは時間の許す限り相談したんだけど、突然詩が目を覚ましたのだ。目が覚めた詩は俺を見た瞬間かなり驚いていた。
「本物の律君なの?」
「俺が偽物に見えるか……?」
ちょっぴり照れくさそうに俺は答えてみた。そんな俺を見て詩は涙を流しながら再会を喜んでくれた。
「ごめんね。本当にまた会えるとは思ってなかったから」
「俺もあの時は確実に死んだと思ってたよ。だけど、ちゃんとこの通り生きてるから安心して。それより、響と何があったんだ?」
「それが……」
詩は手短に俺に説明してくれた。
俺が落ちた後、二人は俺のKAGUYAが教えてくれた出口へと向かっていた。
実は皆の
詩は響と一緒に戦い生きてココを出るつもりだったのだが、いつの間にか沢山のゾンビに囲まれ逃げ道を塞がれた。そして、響がピンチに陥った時に詩は咄嗟に響を庇った事で腕をゾンビに噛まれてしまった。
その後、響は全てのゾンビを倒してから詩の元へ駆けつけた。響は何度も詩を置いて行く事を拒んだのだが、詩の最後に言ってくれた言葉が迷っている響の背中を押した。
「響は私のヒーローなんだから、かっこよく生きてる姿を私や皆に見せてあげて……。それが、いつか皆の希望になるから。そうしてくれなきゃ許さないから!」と言われ響はもう何も言い返せなくなり、詩はココに一人残ることを決意した。
「だから……律君も私を置いて行ってもいいんだよ」
「俺は…………。やっぱり、詩を置いて一人で行くなんて出来ない」
最初は俺も響と同じ様に拒んだ。
そんな俺を見て、詩が困り果てた顔をしていた。俺にも引けない理由があの時に出来てしまったんだ。それにもう悲しい思いをするのは絶対に嫌だ! こうなったもう焼けだ。意地でも俺は、詩を連れてココから出てやるぞ!
「詩が行けない理由はわかった。
ただ、彼処にいるクリーチャーに食べらて死にたいと思うか? 俺だったら死んでも嫌だね。だって、彼奴はかなり理性がぶっ飛んでやがるから、俺が思うに相当惨いぞ!」
俺は親指を立てて後ろにいるクリーチャーを指さした。クリーチャーは雄叫びを上げながら頭を床に叩きつけていた。獲物を早く食べたいくて待ちきれないのか、相当焦っている様子だった。そんなクリーチャーの姿を見た詩は身体を震わせ全身で拒否した。
「だから、一緒に行こうよ詩…….」
「でも、本当にいいのかな?」
「だって俺、詩の事好きだから……」
ん……?!
俺、何どさくさに紛れて告白なんて言っちゃってるんだ。俺のバカ!!
詩は顔が林檎の様に真っ赤になって、身体からは湯気みたいなのが出て、ボンッて音を立て、仕舞いには戦意喪失してしまった。ノックダウン?!
あれ? これ前にも見た様な……。
つまり、俺が詩にとどめの一撃を刺した状態にしてしまった?!
何だか、ごめんなさい……。
ガッシャ!!
最悪の状態で後ろの強化ガラスにひび割れが入ってしまった。何でこんな時にひび割れるんだよ! どうすればいいんだよ……。戦意喪失の詩に今頃になって脱出がノープランだった事に気がつき、慌てている俺にKAGUYAが解決方法を提案してくれた。
「ソンナ事ダロウト思イ、私ガ脱出マデノルートヲチャント調ベテ起キマシタ。案内致シマスノデ、取リ敢エズソコノ換気口二入ッテ下サイ」
「本当だ! こんな所に換気口があったなんて……」
換気口は人が一人入れるくらいの大きさだった。俺は戦意喪失している詩を押し込み、その後に俺が入ろとした時に全ての強化ガラスの窓が割れた音がした。
一面ガラスだらけなのにお構いなく、クリーチャーがズカズカと入って来た。
俺は急いで換気口の中に入ったら中は思いのほか迷路みたいな構造で、しかも一度滑ったら止まらない滑り台の様になっていた。
「何これこわっ!
滑り台っていうよりジェットコースターかよ。いやぁぁぁぁ!!」
俺の叫び声が換気口の中で阿鼻叫喚していた。詩の方は俺がノックダウンしたせいでそれ所では無かったようだった。
換気口の迷路みたいな滑り台は、ようやく緩やかな場所で止まった。そのままの勢いで外に放り出されなくって良かった。俺は外に出れそうかどうか換気口の金網を一つ外してみた。そこから顔を覗かせ、安全かどうか確認してみた。
どうやら、ここは通路の一角で俺達は今通路の天井部分にいるみたいだ。そこの場所にゾンビやクリーチャーが居ない事を念入りに確認した俺は、ふにゃふにゃになった詩と一緒に降りる事にした。
「詩、大丈夫か? あと、もう少しだから頑張って……」
「……うん」
詩はさっきと様子が違い、立っているのもかなりしんどそうだった。俺は詩の身体を気遣い、ゆっくり行こうとしたのだが……ん? あれは、何だろう?
遠くの方で黒い塊が見えるのは気のせいか? 俺は目を凝らしそれをよく見てみると……って、クリーチャーじゃん?!
来るのがちょっと早いよ!!
俺は詩と一緒に急いで行こうとしたが、詩は糸が切れた様に倒れてしまった。急いで俺は詩をおんぶし、全速力でクリーチャーから逃げた。
「何でこんな展開になるんだよ?!
っで、KAGUYAこのまま真っ直ぐ行けばいいんだろ?」
「ソレガ、律様大変デス!
我々ハアノ迷路ミタイナ換気口デ、迷子二ナッテシマッタミタイデス。多分、私ノ推測デハ出口モ近イト思ウノデ、前向キニ頑張リマショウ」
「なんてこったい!」
全力で走ってる俺達を嘲笑うかの様に先にある通路が二手に分かれてた。どっちに行けばいいいんだ? 左側の通路を見てみるとそこには血痕らしきものが落ちていた。今度は右側の通路を見てみるとそこにあったのは沢山の屍の山だった。
どうする俺?
右も左も、ましてや後ろも行く道も選ぶ道全て地獄だな……。
そんな、迷ってる俺の背中を押してくれるかの様に何処からか懐かし声が聞こえてきた。この声は……。俺は声の主に導かれる様に左側の通路へと振り向いた。
「律、守るって決めたんだな!
それなら、お前の信じる道を行け!
…………気張れよ、律……」
響は声を張り上げあて俺に言った。
響も俺達と同じ様にクリーチャーとしかもたった一人きりで戦っていた。響の身体はボロボロで、もうとっくに限界を超えていた。それでも、生きる為に彼奴は戦っていた。まるでその姿は戦士の様だった。
ありがとう響…………。
俺の行く道は決まった!
俺は前を向き背筋をのばして、響とは背中合わせになる道を選んだ。それは、屍の山が連なる通路の方だった。
これが、俺の信じていく道だから……。
俺は新たな道へと一歩を踏み出した。
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