物語の主人公はどんな状況でも決死て諦めない

 誰しもが主人公に憧れて、なりたいと思う者もいるんじゃないだろうか?

だって、俺もその一人だったから……。


主人公はいつだってかっこよくて、悪者に立ち向かい、友達思いで、大切な仲間の為なら命を懸ける。それでいて、主人公はどんな状況でも決して諦めない心を持って何度もピンチを脱出してきた。

そんな強い主人公の姿に俺は子供の頃、テレビの向こう側から憧れていた。


でも、大人になるにつれて憧れも夢もすっかり忘れてしまった。


忘れてしまう理由は多分沢山あると思う。中でも一番の理由はやっぱり毎日の忙しさの中で気づかない内に少しづつ失い、遠ざかってしまったのかもしれない。


俺の心の中に確かにあった憧れや夢は遠ざかって無くなってしまったと思ってた。だけど、本当に無くなった訳じゃなかった。心の中に見えないフィルターみたいな物が掛かって、見えなくなっていただけだとようやくわかったんんだ。

見えないくなっても俺の心のど真ん中に小さくなってたけど、ちゃんとまだいてくれた……。


その事に気づかせてくれたのは多分、彼奴らに出会ったせいなのかもしれないな

本当にバカで最高な仲間達に……。


その中でも一番のバカは響なのかもしれないけどな。でも、響のどんな状況でも諦めない強さ、詩の仲間を思う優しさ、たっくんの仲間を家族の様に迎えてくれる温かさ、直人さんの仲間を守り抜く強さ、楽のぶっきらぼうな優しさ。

皆の全てが俺に大切な事を教えてくれた。


この気持ちは絶対に無くしたくない!


それに、もうとっくの昔に気がついてた。人は、自分しか歩む事が出来ない人生という名の道を歩き始めたら誰もが主人公の一人なんだ!


変えに行こう…………。

俺は皆が待っている光の方へと手を伸ばした。そして、目が覚めたらもう一度誓うよ。


目を開けるとそこは真っ暗闇だった。

あれ、真っ暗じゃんかよ。やっぱりココってまだあの世なんですか?!


「律様、オ目覚メニナラレタンデスカ?!」


「あっ、うん、なんだかそうみたい!

心配掛けてごめんなKAGUYAカーちゃん。ただいま……」


「オ帰リナサイ」


危ねー!! あんなに真っ暗だったから俺、一瞬死んだとか思っちゃたじゃんか。でも、俺ちゃんとココに帰って来たんだ!


あれ? でも、この状況って今までで一番チョーヤべー状態なんじゃあ……。

余りにも怖くて軽くチビりそうなんですが!


段々目が慣れてきた俺は今、置かれている状態に愕然とした。

出っ張った鉄の柱に運良く服が引っかかってくれたお陰で助かっていた。もしも、服が引っかからなかったら間違いなく死体の一つが出来上がってたな……。


でも、いつ服が引きちぎれるかわからないし、足は宙ぶらりんで上も下も真っ暗

で何処までこの暗闇が続いているかわからん。


俺は一通り自分の置かれている状況がわかった所で、今度は俺が知らない情報がないかKAGUYAに聞いてみる事にした。


「ねぇKAGUYA、俺が気を失っている間に何か掴んだ情報とかないの?」


「ソウデスネ……律様ガ気ヲ失ッテイル間、外部トノ通信ヲ何度カ試ミタノデスガ妨害サレ無理デシタ。ナノデ、楽様二連絡スル事ハ不可能ト判断シマシタ。

ソレト監視映像二ハッキングヲシマシタガ、気付カレテシマイ1分シカ見レマセンデシタ」


「楽と連絡出来ないのは痛いな……。

それで、監視映像は一体何が写っていたの?」


「ソレガ……大変申シ上ゲ難イノデスガ、響様ガ詩様ヲ置イテ何処二行ッテシマワレマシタ映像デス」


「何だって?!」


どうして、響が詩を置いて行くんだ……? だって、誰よりも仲間を大切に思う響に限って、詩を置いてどっかに行くなんて絶対に有り得ない。きっと、何か事情がある筈だ! 確かめに行かないと……。


「俺、詩の所へ行くよ!

こんな場所でいつ助けに来るかわからないし、それに待ってたら大切な物をまた失う事になる。俺はもう二度と大切な人達を失いたくない」


それに、俺はあの時誓ったんだ!

これから先どんな絶望が来ても、もう迷ったりなんかしない。どんな小さな希望でも失わず守り抜くから、だからもう一度だけ俺に立ち上がる勇気を下さいって

願ったから俺は今ココにいるんだ!


「KAGUYA頼む、詩の元へ道案内をしてくれ」


「カシコマリマシタ……。

詩様ハ、コノ下ノ階ノ研究室ニイマス。ソコカラナラ出口モ近イデス」


「ありがとうKAGUYA! 行こう、詩のいる場所へ」


俺は鉄の柱に左手を掛け、空いている右手を使い、まず引っかかている服を引き抜いた。そして次に鉄の柱を手で蔦って壁の方へ行った。壁の僅かな出っ張った部分に手や足を掛けてなんとか下まで降りきった。


俺が降りた場所は部屋と部屋の間に架かる橋だった。俺は橋の手摺りか下を覗いてみると、まだまだ底は見えず奥深くへと暗闇が濃く広がっていた。

俺は手摺りから手を離し時、手に痛みを感じその手を見て見ると小さな傷がいくつもあり血が出ていた。だけど、今は気にしている暇はない。俺は手の痛みを誤魔化す様にギュッと握り締め先を急いだ。


「で、どっちに行けばいいんだ?」


「ココカラ東二真ッ直グト進ンデ下サイ。突キ当タリマデ行キ、左右二手二別レル道ガアリマスガ、ソコヲ左側ノ通路二進ンデ下サイ。ソコノ二研究室ガアルノデスガ……」


「何か問題でもあるのか?」


「ソレガ、詩様が入ル場所ハ研究室ナノデスガ、ソコデハ常軌ヲ逸シタ研究ヤ実験ガ行ワレテタミタイデス」


「例えばどんなの……?」


「主二不老不死二纏ワル研究ト実験デス。ソノ実験ノ最中二ゾンビガ誕生シタトモ云ワレテオリマス」


不老不死だって?!

不老不死なんて夢物語の世界じゃないか、それとゾンビと一体どんな関係があるんだ?

でも、ゾンビって歩く死体って言うからやっぱり何かしら関係があっても可笑しくはないか。それに、この世界に無理矢理に命を繋ぎとめてるからゾンビも不老不死みたいなものなのかも知れないな……。俺は妙に納得してしまった!


そおこうしているうちに、詩がいる研究室に俺は辿り着いた。


研究室を開けるとひっ散らかた資料や薬やらガラスが床一面に広がっていた。

それと、謎の大きなカプセルや壊れたパソコンに実験器具の数々がいっぱい置いてあった。俺はその脇を縫う様に通り、倒れている詩の元へと駆けつけた。


詩の名前を何回も呼んだが反応はない。

間に合わなかった……。そんな、俺は詩までも失ってしまったのか。俺は悔しさに打ちひしがれたが、KAGUYAは冷静に状況を判断し言った。


「律様、詩様ハマダ微カニ息ヲシテイマス」


良かった、詩は生きてる!

安心したのもつかの間だった、俺の背後からゆっくりと誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。それは、ペタペタと奇妙な音を鳴らしながら俺の方へ向かってきてる。俺はゆっくりと振り返りそれを確認した。


「やっぱり、お前だったのか……」

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