主人公とヒロインの距離は林檎3つ分ぎこちない……

 詩が目覚めてくれて本当良かった!

詩はゾンビになってしまった事を最初凄く戸惑っていたけど、俺はどんなに詩が変わってしまってもこの気持ちは出会った時から何一つ変わらない。だって、ゾンビになっても詩は詩である事に変わりないんだ!


そう思えるようになったのも多分此奴のお陰だと思う。詩が目覚めない時間、俺と悠音は一緒にいる時間がだんだん長くてなってほんの少しだけ仲良しになった。今ではゾンビといる生活にめちゃくちゃ馴染んでる自分がいる。


ゾンビの悠音とだけとは絶対に馴染みたくなかったけどな……。


そうだ、詩がまだ目覚めない時にこんな事があったんだった! 毎日なぜかお祭り騒ぎでカノンさんはビールは飲むは、悠音はゲーセンから音ゲーのゲーム機持ってくるは、カノンさんの旦那さんはこんなうるさい中本を読んでるとか何者なんだよ?!


ようやく祭りが終わったかと思えば部屋は散らかすはで大変なんだよね。まったく、誰がお掃除すると思ってるんだよ! この量を一人で掃除するの大変だって、この人達本当に分かってるのか? しかも、真っ昼間からぐうたらしてるし……。


ここはビシッと俺が注意しなくちゃ!


「ちょっとは皆掃除しろよな!」


「私は二日酔いで無理です……」


「僕は音ゲーに忙しいから結構です」


「……………」


カノンさんの旦那さん……?!

読者ばっかりしないでなんか喋っていいんだよ!


この家にいると本当っ俺の主婦スキルがどんどん上がっていく。一見綺麗に整理整頓されている部屋にみえるが、俺の主婦スキルを侮っちゃいけない!


棚を開けるとほら雪崩が起きる。床は一様フローリングワイパーで磨いているが、ほら棚上は誇りまみれ。目に付く所だけとりあえずやればいいと思ってる掃除の仕方だ。


まったくこの人達は俺が片付けするまで、今までどうやって生活してたのか気になる。そういえば、この部屋には確か開かずの間があったな。ここも思い切って掃除しよう!


「という訳で開けちゃえ!」


「律君止めなさいそこは……」


ん?! 俺が扉を開けた瞬間、今までために貯めた大量のゴミが俺めがけて一気に流れ落ちてきた。


ハァハァ……俺まだ生きてる! ゴミに埋もれて死ぬかと思った。なるほどね……。この部屋に全部証拠を隠滅してたわけか!


「ちょっと、カノンさんちゃんと片付けてよ!」


「私も旦那さんも他は色々出来るんだけど、片付けだけがどうしても出来ないだよね。テヘッ!」


だめだこりゃ、この人達は典型的なダメな人間の塊だ……。


だけど、ついにこの腐れきった状況に終止符を打つ出来事が起こった!

それは、待ちに待った詩が目を覚ましてくれたんだ! 俺は凄くほっとした。だって、その日から皆が真面になってくれたんだもん……。


もしかしたら詩は救世主かもしれない!


そう、詩が目を覚ましてから皆はやけに大人しくなった。カノンさんの旦那さんが大人しいのはいつも事だけど、あの浴びるように毎日ビールを飲んでいたカノンさんさえも今日は珍しく飲んでないから聞いてしまった。


「カノンさん今日はいつもみたいにビール飲まなくていいの?」


「おかしな事を言うわね律君?

私がいつおビールなんて飲んだのかしら?」


ん?! 詩が眠ってる時は毎日飲んでたじゃんかよ! なんだこの急な変わりようは? まさか、悠音までこんなんじゃないよな。


「悠音、いつもの音ゲーはどうした?」


「この僕が音ゲー? 律、何を言ってるんだ。僕は根っからのクラシック派だ!」


悠音その黒縁メガネは何処から出して来たんだよ?! じゃなくて、お前から音ゲーと中二病を取ったら何が残るっていうんだよ。ただの、イケメンになりやがって俺が負けた気分になるだろう……。


皆揃いも揃って外面しやがって!

俺の苦労を返せっ!!


言いたい事が言えたからすっきりした。早く洗い物終わらそっと!


詩は元気になってから家の手伝いを一緒にやってくれるから少しだけ楽チンになった。そうだ、カノンさんが好きなだけこの家にいてもいいし、このままずっと皆で暮らしても良いとも言ってくれたけど……。


「律君、手が止まってるよ」


「ごめんごめん」


洗い物の途中なのすっかり忘れてた。今俺が洗い物担当で、洗い終わったお皿を詩が拭いてくれてる。一様、悠音も近くにいるけど詩と二人っきりになるなんて久しぶりだ!


「はい! 邪魔な悠音君は消えようね」


「姉御、僕と律は半径1メートル居ないと死の宣告が……」


「はいはい、そんなのまやかしですよ」


悠音はカノンさんに引きづられながら部屋を出て行った。本当に二人きっりになっちゃたよ?!


ん……?! そういえば俺、詩に告白したてからまともに二人きりで会話するの今日が始めてじゃないか? いつもなんかしらないけど悠音がものすごく近くにいて二人きっりだけで会話なんてした事ないじゃん!


あれ? 今までどうやって会話してたか思い出せない……。けど、何か言わなくちゃ何か…………。


「俺、詩がどんなに変わってしまっても好きだから安心してくれ!」


「…………」


あれ? ノーコメント……。

俺また空気読めずに変な事言っちゃたかな? ここはもうちょっとかっこ良く男らしい感じで言うべきだったんだろうか……。こんな感じに!


「黙って俺に着いて来い!」


「律君可笑しい! でも、ありがとう。律君がいてくれたから私は私らしくいられるんだよ」


詩の言葉は力強かった。

俺は何にもしてないけど、ちゃんと詩の役に立てたみたいで良かった!


「俺も詩がいてくれたから、どんな状況でも諦めずにここまで来れたと思う。

だから俺からも言わせてくれ、詩ありがとう!」


「うん!」


俺と詩との距離は前よりもっと縮んだ感じがする! だけど、この時の俺は浮かれていて気づかなかった。俺と詩との関係を快く思ってない存在に……。


「親友をパッと出のゾンビに取られてしまった……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る