はじめてのなかまはゾンビの退治屋?

「えーっと、チームとか仲間に入れてやるって言われも良くわからないけど。名前は律っていいます!」


「お前チーム知らないとか本気で言ってるのか?」


 そう言ったキョウ本人も驚いているし、俺以外みんな顔を合わせ戸惑い驚きを隠せないでいた。そんなに可笑しい事言ったのかな?


「いや、チームって意味はわかるよ。ただ、具体的に何するところかなぁーって」


「チームはだな……その、えーっと……あれする場所だよ、ほら!」


 啖呵を切って言った響だったけど、その言葉は説明すらなってなくて余計に俺の頭を混乱させた。あれする場所だよって、なんだよ!?


 ちゃんとした説明が欲しい……。


「ごめんね律君! 説明とか響すごく苦手なの」


「悪かったな、苦手で……。もう、お前らで勝手にやってくれ」


 詩がすかさず響のフォローに回ったんだけど、既に手遅れみたいだった。キョウは不貞腐れて頭をかきながら一人隅っこの方へ行き、そこでしゃがみ込んで体育座りをしていた。


「いつも事だから安心して」


 っとたっくんが言ってくれたので、俺も響の事はそんなに気にしなかった。その流れでたっくんが俺に色々と説明してくれた。


「チームが具体的に何するかは、多分律君が思ってる通りで間違いないと思うよ。ただ、細かい内容は今の段階では教えることは出来ないんだ。一様、皆で決めたルールだからね」


 そりゃそうだっと俺は納得した。

 仲間でもない見ず知らずの奴に、細かい内容まで教える通りはないよな。


 たっくんはなおも話を続けた。


「この世界で誰にも頼らず、チーム無しで生きて行くには残念ながら無理だ。中には一匹狼もいるけど、そういう人はかなり経験と技術を積み生き抜いて来た人達だからね!

失礼だけど、僕には君がそういう人達にとても見えなかったから。だから、これは親戚な忠告として受け取って欲しい」


 そうだよな!

 考えてみればこのゾンビがうじゃうじゃいる世界で、たった一人で生き抜くなんて俺には無理だ。


 神妙な顔をしてる俺に気がついたたっくんは、一呼吸置いてからまた話の続きを話始めてくれた。けれど、その話を遮るように俺のKAGUYAカーちゃんが割り込んできた。


 そういう所はなぜか転生前の俺の母親かーちゃんにそっくりだった。


「仰ル通リデス。コノ世界デチーム二入イルノハ必要不可欠デス。律様ガオ一人デ行動シテイタラ、3日ト 持タナイデショウ」


 たっくんが珍しい物を見たような顔で俺に近づきて来て、俺のKAGUYAが搭載されている腕時計を手に取った。


「律君が持っているこれは旧型のKAGUYAかぐやだね。旧型は非常に不良品が多くてね、もう随分昔に生産が終了して全て回収されスクラップにされた筈なのに……。どうして、律君が持ってるんだい?」


 不良品、スクラップ!?

 俺も通りで可笑しいと思ったんだよ。こんなにお喋りが上手なAIなんて見たことなかったし、大概AIは聞かれたことしか話さなくて、必要以上に自分からお喋りするのなんて見た事がない。それに、なんか皆が付けてる腕時計とほんの少しだけデザインが違うかなーって思ってたよ!


 全部俺の気のせいだと思ったのに……。俺が持ってるKAGUYAカーちゃんって一体何者なんだ?


「話が随分逸れちゃったね。それで、どこまで話したんだったかな?」


 俺も忘れてた!?


「もう、まどろっこしい話は後でいいんじゃない! 律君がチームに入るか入らないかを決めようよ!」


 詩は早く話を終わらせたかったのか、俺に決断を急がせた。

 俺が出す答えはとっくに決まってるよ!


「俺、色々考えたけど……このチームに入りたいです! 入れてください!!」


 皆の顔が急に明るくなったていくのがわかった。お喋りが好きじゃない直人なおとさんだけは笑い方が不気味だったけど、詩もたっくんもあの不貞腐れていた響でさえ笑顔になった。


 キョウが俺のいる方へやって来て、リーダーらしい言葉を掛けてくれた。


「律、お前は今日からオレたちの仲間だ! よろしく頼むなっ!」


 俺と響は固い握手を交わした。

 その握手した手に皆がそれぞれ手を重ねて置いた。握手なんて特別な事じゃないのに、この握手だけは仲間になった証みたいで凄く嬉しかった。


 お互いを見つめ合っている事に気がついた皆は急に恥ずかしくなって、急いで皆手を引っ込めた。その引っ込めた手を見て何だか可笑しくなり皆で笑いあった。

 俺は皆のその笑顔がたまらなく嬉しかった。この世界に来て戸惑いながらも、初めて自分で決断した喜びを噛み締めた!


「で、因みに律お前の基礎能力はどれくらいだ?」


「基礎能力ってなんだ……」


「まっ、いいや! KAGUYAかぐや律の基礎能力を調べろ!」


「カシコマリマシタ」


 やっぱり、響のは俺のKAGUYAとは違い最新の物だった。俺は、少しだけ羨ましいと思ってしまった。響は右腕に最新のKAGUYAを搭載した腕時計を付けていて、それを俺の方に向けてスキャニングし始めた。


「響様、結果ガ出マシタ」


 名前:律

 体力:C

 筋力:C

 握力:C

 知力:C

 瞬発力:C

 俊敏力:C

 精神力:C


「結果ハオールCデス」


「ザコだな!」


 ザコ!? 響の言った言葉が俺の頭の中で何度も木霊する。俺ってやっぱりゲームの世界でも普通すぎるって事なの!?


 でも、普通すぎるからってはいそうですかって引き下がる俺ではないのだよ!

 パーティ追放系なら間違いなくここで主人公は退場するイベントだけど、俺はここで逃げない。


 逃げてやるもんかぁぁぁぁ!

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