普通じゃあダメですか?

 俺は毅然とした態度をみせた!

自分でも考えられない行動だった。だって、あんなダメダメだった俺が今一歩も引かないなでいる態度に自分自身が一番ビックリしている。


考えら理由はきっと……。

こんなダメな俺を受け入れてくれた時に感じた、仲間への思いは紛れもなく本物だった。この仲間達と一緒ならきっとダメな俺でも変わっていけるとそう思えたから。


それに、口は悪いし頭も余り良さそうじゃない響だけど、俺を見捨てず助けてくれた。詩は誰に対しても分け隔てなく優しいし、周りの人達のことをとても気遣ってくれる。

たっくんは、まだ会って間もないけど頼れる先輩って感じがする。直人さんは、口数が少なくてわからない人だけど、悪い人ではなさそうな気がする!


こんな普通で何にも役に立たない俺だけど、それでもここにいたい。


もう、こうなればやけだ! 眼力だけで俺はここにいたいオーラを出すしかない。何を言われようと来るなら来いよ!


皆は黙ったまま何も言わなかっが、不意に響の口が開き顔に笑みを浮かべていた。


「よし、合格だ!」


はいぃぃぃぃ!?

俺はその言葉を聞いた瞬間、張り詰めた緊張感からイキッに解放されて膝から崩れ落ち。


「悪い悪い、お前を試しただけだよ!

そんなに膝から崩れ落ちとは思わなかったぜ」


そんなお試しってありのかよ!?

まったく、今の響の発言は心臓に悪すぎだよ。俺の心臓が本当に止まるかと思っちゃったよ!


響は上機嫌で一人用のソファーに腰掛け、俺に向かってさっきより明るい感じの声で話してくれた。


「これはチーム恒例の度胸試し!

お前がいざって時に、度胸があるかないかを試したんだ。ここでオレの言葉で逃げ出すようなら、残念だが失格だ。逃げ出さずに強い意志で立ち向ってくるなら合格だ。

まっ、大概オレの言葉や威圧感ににビビって逃げだず奴ばかりだったけどな」


「おめでとう律君!」


「おめでとう律君、よく響の言葉に屈指なかったね。僕見直しちゃったよ!」


「……なかなか見応えがあった! おめでとう」


詩にたっくんに直人さんが俺に祝福の言葉掛けてくれるのが、なんだか俺は少し照れくさくなった。皆におめでとうなんてあんまり言われた事がなかったからかもな……。


だけど、響だけはさっきより真剣な目付きに変わり、体は少し前のめりの姿勢になり、両肘を膝の上に置き、そこで手を組みまた話の続きを始めた。


「さっきも言ったように、オレの言葉で逃げだずような奴に仲間の命も背中も預けられない。それにだ、仲間を見捨てて逃げるようなグズはオレは一番嫌いだ!

俺は、本気で仲間を助けたいと思ってる。勿論、お前も含めてだけどな!」


今、自分の心が震えるのがわかった。やっぱり、この人スゲーかっこいいよ!

響は見掛けに寄らずかなりの熱い男で仲間思いのいい奴だった!

ただ、口の悪さでかなり損をしているのは間違えないけどね。


「まっ、正直律はオレよりザコなのは変わりないけどなっ!」


ムカつき!

あんなに響を褒めるんじゃなかった。


「因みに響の基礎能力はどうなんだよ?」


「オレか! オレはオールSだ!」


響は自信満々に言ったのがスゲー悔しくて、俺は皆に聞こえないよう小声で#KAGUYA__カーちゃん__#にスキャニングをお願いした。KAGUYAは俺に答えるかのように静かに誰にも気づかれないようにスキャニングを始めてくれた。


「律様、結果ガ出マシタ」


名前:響

体力:S

筋力:S

握力:S

知力:E

瞬発力:S

俊敏力:S

精神力:S


うん、頭が残念なの流石の俺でもに気がついたよ! でも、やっぱりこのSって結果をみると凄く凹むよ……。


「律君、こんな度胸試しさせてさっきはごめんね。響は口悪くて、偉そうで嫌な思いとかもするとおもうけど誰よりも仲間を大切に思ってるの!

それだけは、忘れないでいて欲しい。その思いがあったからこそ皆ここまで着いて来たんだ! それにね、基礎能力は努力次第で伸びるんだよ」


「なんだ、そうだったんだ!」


じゃあ、俺も努力すれば響みたいに強くなるのか。そう思ったらいても立ってもいられなくなって来た!


詩と一緒に喜びを分かち合おうと思ったら、俺の嬉しさとは裏腹に詩は悲し表情を浮かべていた。俺はもう一回声を掛けようかと思ったが、詩は悲しい表情を浮かべながらまた話し始めた。


「仲間を大切に思ってるからこそ、死んでいった仲間の事も同じくらい大切で忘れられない……」


詩はそれきり口を閉じ、今度は何かを思い詰めた表情で部屋に入って閉じこもってしまって出て来なかった。


皆の表情が少し暗くなるのを感じた。

この人達は俺が知る悲しみより、遥かに深く痛みを伴う苦しみをいっぱ経験してきたんだろう……。


俺もいつか知る日が来るのだろうか?

詩や皆が知る、心がバラバラに引き裂かれるような大切な人を失ってしまう悲し痛みを……。


「詩は僕達と違って人一倍優しい子だからね」


たっくんがフォローしてくれたけど、皆な言葉が見付け出せず黙ったままだった。俺もなんて言えばいいかわからなかった……。だけど、この沈黙を最初に破ったのは響だった。その破ってまで言いたかった内容は、もう一度俺の事についてだった。


「律が仲間になった事だし、説明はいつも通りたっくん任せた!

で、このチームのリーダーであるオレが律に最初の役割を与える!」


俺の最初の役割はなんだろ?

凄く気になるなぁー! 俺の心は今まさに期待と不安て胸いっぱいに膨らんでるよ。ちゃんと響の言葉を聞き逃さないようにしなくちゃ!


「今日からお前は荷物係なっ!」


えっ?! 今あそこにいる人、俺に荷物係とか言わなかったか?

ハァァァァ! たっくんに全部丸投げしておいて荷物係ってどういう事だよ響!?


「じゃあ、オレそれだけ言いたかっただけだから自分の部屋にかえる! 後はたっくん任せた!」


「自分は無口なもんですから……じゃあたっくんいつも通りよろくし頼む……」


響に続き直人さんもかよ?!

この広い部屋にたっくんと俺だけがポツンと取り残されてしまった。


あの響の野郎、絶対に覚えてやがれよ!

この屈辱は倍とおまけ付きでいつか返してやるからな!!

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