ついに本物の主人公現る!?
「
えっ、ちょっと一人なの? 単独行動はあれほど謹んでって言ったでしょ」
「お前が迷子になるからだろ」
詩は響と呼ぶ少年のもとに駆け寄って行った。そして、二人は今まで起こった状況を簡単にまとめて話し合っていた。もちろん、俺は蚊帳の外です! 本当の事いうと足にまだ力が入らないから、行こうと思っても行けなかった。
俺は二人の様子を立ったまま、黙って見ていることしか出来なかった。
なんか、悔しいな……。
話を終えた詩と
「オレの名前は響だ! 詩を助けてくれてありがとうな」
「いや、俺は何もしてない……」
「そんな謙遜するな!
お前の
やっぱり、俺じゃないじゃん……。
うわぁ! あんまり想像したくないな。俺は頭を左右に振り、悪い予想や想像を取り消した。
「律様! チョット宜シイデスカ?」
「ん? 小声でどうしたんだよ
「アノ
マジかよ! あいつがこの物語の主人公なのかよ!?
そりゃそうだよな……。
あんな絶体絶命のピンチでかっこよく人を救っちゃう奴なんだから主人公に決まってる。俺も思わずかっこいいって見惚れちゃったもん!
しかも、主人公の一番の特徴である金髪碧眼だしな……。ただ、本物の主人公なのに口が悪るそうなのはたまに傷だけど、やっぱりその背中は誰よりもかっこいいよ。かっこよすぎだ!
はぁ~、ため息しかでない……。
だって、ここに来てついに本物の主人公が俺の目の前に現れちゃったんだぜ! そりゃ、ため息もつきたくなるよ。
本物の主人公にヒロイン。俺っている意味あるのかな? 本物の主人公の足元にも及ばなくて、こんなにかっこ悪すぎる俺のいる意味って一体なんなんだろうな……。
「で、お前名前なんだっけ?」
「えっ、えーっと律です」
いきなり話しかけないでよ、今深刻な壁にぶち当たってる最中なんだよ。そっとしておいてくれ!
「律か、着いてきな! 案内してやるよ、俺たちの秘密基地になっ」
「待って
響はどんどん先に歩いて行き詩はその後を追っていったが、黙ったまま立っている俺に気づいてくれてまた戻って来てくれた。そして、詩は優しく俺に手を差し伸べてくれた。俺はその手を戸惑いながらも掴んだ。
「ありがとう……」
「どういたしまして! 一緒に行こうよ、律君」
詩の優しさはやっぱり変わらなかった。
その優しさは俺にまだここにいていいんだよっと許して貰えたような、そんな気持ちにさせてくれた。
あの優しさに俺は答えたい。この先どういう結果が待っていようと、今は前に進んでみようと思う。
俺達は大きなビルを背に、今度は廃ビルが立ち込める場所に向かって歩きだした。どうやら、あのコンテナが積み重ねられた入り組んだ道とはここでお別れのようだ。
急にお別れだと思うとなんだか少し名残惜しいし、後ろを振り返えられずにはいられなかった。だってあの場所は、俺がこの世界に来て初めて目を覚まし、
でも、今は前に進むって決めたから……じゃあなっ!
この場所に別れを終えた俺は、振り返らず先に進む二人の背中だけを見て追いかけた。
俺たは秘密基地に向かって歩き続けた。ほんと幸運なことに俺たちは一体もゾンビに出会う事なく歩いている。
ラッキーだった!
でも、俺は気を抜かないよういつでも臨戦態勢をとっていた。
いや、ビビってるとかそういうんじゃないからね!!
ゾンビが今1体もいないのは、もしかしたらあの大男ゾンビが他のゾンビを蹴散らしてくれたお陰で1体もゾンビに会わずに済んでいるのかもしれない。
いや、ひょっとしたらあの
ようやく秘密基地がある思われる場所に到着した。
「ここだ、ここ! そんなに遠くなかったでしょ、律君?」
「う、うん!」
詩はようやく我が家に帰って来れた嬉しさからか、さっきからすごく上機嫌だった。ちょっと前までは、あんな怖い思いしてたのがまるで嘘のようだ! すっかりあの大男ゾンビの事は忘れてしまったみたいだ。
あんなに怖いことがあったはずなのに…………。
それにしてもこれまた、大きな廃ビルだな……。何年も人が住んでいない廃ビルは全てのガラス窓はなく、ところどころ劣化していて崩れかかっていた。これ本当に大丈夫なのか、崩落の危険性はないよな?
俺たちは廃ビルの中へ吸い込まれように入っていった。中も思った通り、色々なところが劣化していた。俺はてっきり上の階にいくのかと思たっが、コンクリートの階段は壊れていてとても登れそうになかった。
さらに二人は奥へと入っていく。
不意に二人の足がある場所でピタリと止まった。そこは皆が見落とし、通り過ぎていきそうな何にもない場所だった。
「あっ、あったあった!」
響は何の変哲もない壁をコンコンって、ノックをするみたいに6回鳴らしたと思ったら、いきなり秘密のスイッチが出てきた。そのスイッチを押したとたんにゴゴゴゴって、ものすごい音とともに床から隠し扉が開いた。
隠し扉が開かれた場所からひんやり冷たい風が流れ出てきた。
中は真っ暗で何も見えないが、下へと続く階段だけはハッキリ見えた。
「行くぜ!」
響を先頭に続いて詩が入っていく。俺も覚悟を決め、勇気を振り絞ってそのあとに続いた。
扉を潜った先に待っていたのは……。
まっ、眩しい……。
暗い場所から一気に明るい場所へ出て来た俺は一瞬だけ何もまわりが見えなくなった。
「ようこそ、俺らの秘密基地へ! 歓迎するぜ律!」
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