ゾンビの事はゾンビに聞くのが一番良いのか?

 カノンさんの家を旅立って数分後、俺達は早速ゾンビと出くわしてしまった!


「くっ、僕の右眼の邪眼が疼く、やはりお前だったかゾンビ共!」


「どうする律君? 彼処にいるゾンビやっぱり倒さないとかな? 次いでにおバカ事言ってる悠音も倒しちゃう?」


「悠音の中二病はいつもの事だから、詩構っちゃダメだよ!

とりあえずここは森と荒野のちょうど狭間だから、森からゾンビ達の行動を観察して見よう」


ゾンビが出てくる物語だから普通はココで倒さなくちゃいけないんだろうけど、俺は皆にゾンビ事世界を救って宣言しちゃったばかりだしなぁー! ここで倒したら宣言した意味がなくなるし、さて困ったぞ!


…………ん、そうだ! 皆に倒さずに済む方法はないか聞いてみればいいんだよ!

一人で悩む必要なんてないだし、こういう時こそ仲間を頼らなくちゃね。まずは詩から聞いてみる事にしよう。


「詩、倒さずに進むにはどうしたら良いと思う?」


「やっぱりここは、無難にゾンビが通り過ぎるのを待ちましょう! それが一番良いと思う。出来れば私もゾンビとは戦いたくないしね」


「俺もそう思ったんだけど、でもあのゾンビ達彼処でシート広げてお弁当食べ始めちゃったよ! あれは当分動きそうにないやつだと思う……」


「恐るべし、通りすがりのゾンビさん?! 律君、力になれなくてごめんね」


詩の案は残念ながら不採用とします!

じゃあ、お次は悠音に聞いてみよう!


「悠音、倒さずに進むにはどうしたらいいと思う?」


「やっぱりここは、死んだフリをして乗りきろ! 昔から死を制す者はゾンビを制すると云われている。豪に入れば郷に従えと言うし、まず死んだフリをする事でゾンビとは何たるかを知るのが一番いいだろ!」


なんだろうこの妙な説得力の凄さは!?

最初は熊じゃないんだからって言おうと思ったけど、これならイけるかもしれないよ悠音!


「じゃあ俺、悠音の言ってた通りちょっと死んだフリしてくるよ! 皆そこで待ってて!」


決まったな! 今皆の目に俺はかっこよく写ったに違いない! よーし、張り切って死んだフリしてきますかっ!!


ーーーー1時間後。


「皆聞いてくれ! 身も心もちゃんと死体になりきってたって、俺彼処にいた通りすがりのゾンビさんに褒められちゃった」


「律様、ソレハ違ウト思ウノデスガ……」


ハッ!? 俺とした事がつい悠音に煽てられてその気になってしまった。

彼奴やっぱりりニヤニヤしてやがるよ?! あの胡散臭い嘘にもっと早くに気づくべきだった……。


俺も乗せられてあんな事したけど、最近俺の回はゾンビに囲まれてるかなオセロ方式であれ? 自分もゾンビなんじゃないかなって思ってしまう俺がいる!

俺、思ってる以上にゾンビの仲間と馴染んでるのかもな……。でもこれって喜ぶべき事なんだろうか? うーん、やっぱわかんないや!


「さっきのゾンビ悪い感じがしなかったし、寧ろ褒めて貰えた! 大丈夫そうだからリゾート施設にある研究施設目指して歩きますか!」


「そうだね!」


「まったく、リゾート施設にある研究所はいつになったら着くんだ! 僕は段々疲れてきたよ」


「悠音が俺で遊ぶからだぞ!」


「遊んではないぞ! あれにはもしもの時に備えて壮大な計画が組み込まれていた! まず、律を生け贄にする事で僕がサタン契約を結ぶ儀式だったんだ」


「はいはい、隣の家のサタンさんの事ね!」


ボフッ……ガブガブ?!?!


ん?! 今何かふにゃっとした物に当たったと思ったら、急に目の前が真っ暗になったぞ! 俺の頭に何かが覆いかぶさってるのか? こんな荒野のど真ん中で一体何が起きてるんだ。手で触れた感じは硬くてつるつるしてて、少しざらざらともしてるこれは一体何なんだ?


不意に誰かが俺の足を掴み、暗闇から引っ張り出してくれた。


「イテテテテッ……!」


「律君大丈夫?」


「もう、一体何なんだよ! って、巨大なハエトリグサじゃんかよ?! これってゾンビなのか?」


今まで植物のゾンビになんかに会った事がないから扱いに困るな……。でも、こんな巨大なハエトリグサなんて見た事ないし、いつもより食欲旺盛で普通のハエトリグサよりも獰猛すぎないか……。

って事はやっぱりゾンビなんじゃないのか?


「なぁー、律! 僕はあんなハエトリグサは見た事がないがあれはゾンビなのか?」


「いや、実は俺もこれはゾンビなのかって悩んでる最中なんだよな」


やっぱり悠音も俺と同じ事思ってたんだ! だよねー、あのハエトリグサ扱いに困るよ! いくらゾンビがいるの世界だからって植物までゾンビにされちゃうのはちょっと違うよね。


「じゃあさぁー、僕がゾンビ当てクイズするから律答えてよ! まず1問目、彼処にいる目がウルウルしたチワワはゾンビだと思う?」


「あれは目がウルウルってより、バキバキの目だよ! バキバキすぎてウルウルしてるからやっぱりあのチワワはゾンビだな!」


「第2問、彼処の荒野でラジオ体操している人達は?」


「こんな荒野でラジオ体操する強者共はやっぱりゾンビだな! あれはゾンビじゃないと出来ない所業だ!」


「第3問! 道端に生えてるただの雑草が虫を食べてるこれはゾンビですか?」


「道端に生えてるただの雑草が虫を食べる筈がない。よってゾンビだ!」


「最終問題! 彼処にいる巨大なハエトリグサはゾンビそれとも普通の植物? どっち?」


「最初は普通の植物かと思ったが、やはりあんな巨大なハエトリグサは見た事がないからゾンビで決まりだ!」


俺達は喜びを分かち合う様にはハイタッチした! 皆がハイタッチしたがる理由が今わかった気がする。難問だったけど、俺は悠音の質問に見事答えた。この喜びは俺が思ってる以上に嬉しいよ!

意外と俺と悠音は仲の良いコンビだったりしてね。あのハエトリグサもゾンビだとわかったし、良かった良かった!


「へぇー、二人共楽しそうで良かったね! 私ずーっと会話に参加したかっのに、二人で楽しそう盛り上がって全然会話に入れなかったよ。おかしな、無駄に手に力が入っちゃうよ」


「詩さん、そんなに力強くハエトリグサ握ったら粉々なになっちゃうよ!?」


グシャッ?!?!


「やだなぁー、このハエトリグサゾンビ凄く脆くて! ねぇー皆もそう思わない?」


「はい、俺もそう思います!」


「僕はこの邪眼の目で詩がちゃんとハエトリグサを握り潰すのを見たぞ!」


おぃぃぃぃ!? 悠音、何事を荒立ててるんだよ! そこは、黙ってはいって頷く場面だよ! 間違っても、間違ってもそんな事言ったら……。


「あら、悠音君には私があれを粉々にした様に見えるなんて不思議だね」


「僕のこの眼の邪眼からは逃れられ……」


ドスッ!!


「ゴブッ……!」


アチャー、詩の右ストレートが悠音のお腹にクリティカルヒットしちゃったよ!

あれは起き上がるのに時間が掛かるやつだよ……。詩もまだご立腹だよ!


「ねぇーKAGUYAカーちゃん! 俺達この先色々な意味でやっていけそうかな?」


「無理ダト思イマス!」


「だよねー!」


って、いやだー!!

あのカノンさん家での楽しかった日々を返してくれ! 人類の行く末も気になるけど、俺達もどうなっちゃうんだよ?!

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