立つ鳥跡を濁す者達
あれ? 俺皆に堂々と宣言しちゃったけど、何にも計画らしい計画を考えてないじゃん! どどどどうしよう?! いや、でも実は俺には最初からとっておきの壮大な計画がありました風を装っておこう! うん、よし……これで決まりだ!
「ところで律君、私達は何をすればいいの?」
「親友の僕も是非とも知りたい所だ」
「よ、良くぞ聞いてくれた諸君! 実は俺にはとっておきの壮大な計画とやらがあるんだよ。もう、それはそれは凄いんだぞ」
「話は聞かせてもらったわ律君!」
「えっ?! カノンさん……いや、これには深い事情があって」
「安心して律君達! 旅の準備はもう既に整えてあるから、いつでも行きたい時に行けるよ」
「RPGの冒険者並に支度が早いよカノンさん!」
「まーね。私も一様RPGの心得があるからね」
ふぅー! カノンさんにRPGの心得があって良かった。カノンさんが来てくれたお陰で話が逸れたし、何とか危機は脱出出来たみたで良かった。もしノープランだって事が皆にバレたら、きっと冷たい視線が注がれたに違いないな。まっ、とりあえず回避出来たんだから良しとしよう。もしまた、皆に聞かれそうになったら適当に誤魔化そう!
「カノンさん旅の支度ありがとう! リュックの中に何が入ってるか見てもいい?」
「どうぞどうぞ! 皆で確認してみて」
「えーっと、おつまみにおつまみと……あれ? これもおつまみじゃん! てか、おつまみばっかじゃん! カノンさん、俺達遠足に行く訳じゃないんだからね」
「何言ってるの律君! 旅におつまみは付き物なんだよ」
あぁ、そうだった……。カノンさんの頭の中はおつまみの事しかなかったんだった。せの事すっかり忘れてたよ。でも、俺達が旅立って事はカノンさん達とも別れなきゃいけなくなるんだよな。こんなくだらないやり取りも出来なくなると思うと、ちょっと寂しいよな。
「皆様、オ菓子コント中スミマセン!
カノン様、カズキ・タチバナ博士をご存知アリマセンカ?」
「カズキ・タチバナ博士か……ごめんなさい聞いた事ないわね。ねぇー、旦那さんは聞いた事ある?」
「すまなない。僕も聞いた事はない名前だ」
「ソウデスカ……」
「力に慣れなくてごめんね
あぁ、でもね! 不思議な事にあの会社で働いてる社員は、誰一人として社長を見た事がないんだよね。しかも名前も知らないんだよ。もしかして、その社長がカズキ・タチバナ博士だったりしてね。けど、私の考え過ぎよね」
実在するのかわからないカズキ・タチバナ博士。それに名前が無く、誰一人顔を見た事がないローズグレイ社の社長。ますます謎が深まるばかりだ。本当にこの人達が実在するかどうか怪しくなってきた。もしかして、幽霊とかじゃないよな……。
「カノン様、モウ一ツ聞イテモ宜シイデスカ?」
「私で良ければ何でも聞いていいわよ!」
「コノ世界二ゾンビ二ナッタ人間ヲ、元二戻ス薬ハアリマスカ?」
「多分ある思うわよ!」
「えぇぇぇ?! あるのかよ!
けど、そんな薬があるならどうしてもっと早く教えてくれなかったのさぁー、カノンさん」
「あるにはあるんだけどね……。
うーんっと、そうだね。この話は何処から話せばいいんいいんだろう? この話は色々と複雑でね。絶対に秘密にしてくれるなら教えてあげるよ。なんたってこの情報は、私がたまたま暇潰しに極秘ファイルを覗いたお陰で分かった事なんだからね」
いや、カノンさんそれってただのサボりじゃんかよ! って言ったら、絶対に教えてくれそうにないからツッコまないでおこう。でも、そんな極秘情報があるなら知りたいよ。
「カノンさん、絶対に言わないって約束するよ! だから、もったいぶらなで教えて」
「よろしい、この私が教えてあげよう!
元々ゾンビは人間が不老不死の実験の最中に生まれたウィルスみたいな様なモノなの。研究者は人間をゾンビに変えるZウィルスとゾンビになった人間を元に戻す抗ウィルス薬を作り出した。
だけど、この二つを作り出してしまった為にウィルスが暴走して今のゾンビと人間がいる世界を生み出してしまった訳なんだよね。
私もね、逃げる際に抗ウィルス薬を持ち出そうとしたけど、この世界の混乱に乗じて研究施設にあった抗体はほとんどお偉さんが持ち出した後だったんだよね」
「カノン様有難ウゴザイマス。コノ事実ヲ私のデータベースニ記録シテオキマス」
俺の頭じゃちょっと理解出来ないけど、とりあえずゾンビになった人間を元に戻す薬があるんだ! 俺の思い描いた未来は不可能じゃない。ゾンビになった人をその薬で救えるなら、ゾンビ事世界を救うっていう俺の考えは間違いじゃないんだ!
急に未来が明るくなってきた!
「律君、この世界は今ゾンビのせいで絶望が蔓延って、皆希望を無くしている。だけど、この世界にある可能性はきっとゼロじゃない。だから、自分が正しいと思う道を進みなさい! その道にきっと希望がある。
私と旦那さんは、いつでも律君達みんなを応援してるからね」
「カノンさんと旦那さん、ありがとう! お陰で勇気が湧いてきたよ。
よし! KAGUYAここから一番近い研究施設って何処にあるんだ?」
「律様、ソレナラ此処カラ一番近イリゾートニアル研究施設ニ行キマショウ!」
「一番近いのがリゾート施設の研究施設って何だか拍子抜けしちゃうなぁー。でも、俺行くよ! 皆もそれでいい?」
「もちろん!」
「もちろんだ!」
皆に聞くまでも無かったかな?
でも、聞かれずにはいられないよね。だって、皆俺の大切な仲間達なんだから!
「何だかあなた達を見てると、不思議と未来を託したくなっちゃうのよね! 人とゾンビがお互いに手を取って歩いていく未来を。
これがもしかしたら、新たな可能性の始まりなのかもしれない……」
「うん! 俺もそんな未来になったら嬉しいな」
「貴方達ならきっと出来るわよ」
俺達はカノンさんが用意してくれたリュックを背負い、旅立ちの準備を整え外へ出た。外は今日も澄み切った青空がどこまでも広がっていた。旅立ちにはもって来いの日だ!
「じゃあ、俺達行ってきますね!」
「カノン様、旦那サン行ッテ参リマス」
「カノンさん
「姉御とそれから旦那さん、いってきます!」
行こうとした時、カノンさんが俺達全員を優しく抱き締めてくれた。
「いつで帰って来ていいんだからね!
ここは皆の家で私と旦那さんはあなた達の帰りをココで待っています。だから、皆いってらっしゃい……」
「うん、カノンさんありがとう! いってきます」
俺はまた一歩新しい道を歩き出した。俺が大切に思う詩と友達の悠音とKAGUYA、大切な人達と一緒に歩いてく遠くて長い道のりを……。
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