共に歩きたい仲間がここにいる

 元の世界に戻ってきたのはいいけど、ここは何処なんだろう? えーっと、回りにあるのは墓地に……壊れた家の数々とログハウス?!


 って、ここってまさか……。


「あれ? 律君達どうしてここにいるの?」


「えっ、カノンさん?!」


「もうー律君何処行ってたの、心配したんだからね。律君達が居なくなってから本当に色々とあり過ぎて、話したい事がいっぱいあったのに連絡つなかいし」


「ごめんなさいカノンさん。俺達も本当に色々あって大変だったんだよ」


「うん……そう見たいだね。何だか律君達が一回り成長した様にみえるよ。

あら? 新しい仲間も出来たんだね」


「あっ、初めましてカノンさん。俺、奏太ッス」


「わたしはアリアっていいます」


「奏太君にアリアちゃんよろしくね。

さっ、家の中に入って! 皆貴方の帰りを待ってたんだから」


「ありがとうカノンさん」




 うん……ここはいつ来ても変わらないなぁ。多分俺達、カノンさん達と別れてそんなに時間は経ってないと思うけど、凄く長い間会ってなかったようなそんな感じがするのはどうしてだろうな……。


 ん……? リビングの方がやけに賑やかだけど、他にも誰かいるのか?


「あっ! ミサ姉にベル姉にちびっこ達、迷わずここに辿り着けたんだね。良かった良かった!」


「うん、大丈夫だったよ。アリアちゃんも元気そうで良かったよ」


「うん、わたしはいつも元気いっぱいだよ!」


「律君達! 帰ってきて早々なんだけど、状況は今刻一刻と悪い方子に向かっいるの。勿論、良いニュースもあるんだけどね。とりあえず説明させてちょうだい。今現状は、かくかくしかじか……」


 カノンさんの話によると俺達は1ヶ月くらい音信不通で足取りも海が見える丘の街で消えていて、ちょっとした行方不明になっていたらしい。俺達にしてみれば、そんなに長い間あの世界にいたとは思えなかったけど、1ヶ月もあの世界に居たなんてびっくりだよ。


 けど、俺達が居なくなっていた間に状況はどんどん悪くなり、遂に人間とゾンビの戦いが首都で始まってしまった。その戦いの様子は毎日ライブ配信されていて、人間もゾンビも共に多くの血を流し、この世のものとはおもえない光景がそこで毎日のように繰り返されている。


「確かに首都は今大変だけど、それも今日で終わり。私と旦那さんとベルちゃん達が頑張ってくれたお陰で、ようやくし今日完成したの。この希望の抗ウィルス薬がね! 私達に不可能なんてないのよ。ハッハッハ!!」


「えーっと、一つ補足させて下さい。この抗ウィルス薬は私とカノン先生と義典先生で完成させたんだけど、ミサちゃんが麻酔銃を改造してくれたお陰で、その銃から抗ウィルス薬入りを撃てるようになりました」


「えっ!? ミサ姉にそんな能力があったなんてわたし知らなかったよ」


「コレくらい大したことじゃないさ。

私はちび達と此処を守らなきゃ行けないから、戦場には行く事はできない。だから、この武器をお前達に託すよ」


「ミサ姉、ありがとう!  皆でゾンビになった人達を救ってみせるから」


「それと、いつ何が起こるかわからないから武器は常に肌に離さず持っていろ」


「えっ、寝る時もッスか?」


「そうだ! 寝る時もウォータークローゼットに行く時も何処かに行く時も常にだ」


「ハイ、了解ッス」


「姉御、ちょっといいか? この抗ウィルス薬を打てば僕は人間に戻るのか?」


「そうよ。悠音君人間に戻っちゃうけど、どうする?」


「とっとりあえず、全部終わってからにしようかな。いや、あのだな……決して僕は注射の針が怖い訳じゃないんだ。決してなっ……」


「あっ、悠音怖いんだ」


「新入りそんな目で僕を見るな!」


「律君、抗ウィルス薬が出来て良かったね」


「あっ、うん……そうだね詩」


「律君……?」


 これで希望は見えた。だけど、もう一つ問題がある。

 今、俺以外に最悪な結末を知る者はいない。フィーネが俺だけに話たあの真実は皆にもまだ教えてない。それにKAGUYAにもとても教えられない真実だったから話してはいない。だから、フィーネは話す直前にKAGUYAの電源をオフにする事でKAGUYAに席を外してもらっていた。


 俺はこの真実とどう向き合えばいいんだ……。


「一度に色々と話たから律君達も疲れたでしょ。とりあえず今日はゆっくり休んで。休養する事も大切なんだからね」


「ありがとうカノンさん」


「部屋はここを使って。ちょっと狭いかもしれないけど、人数分のベッドはあるから大丈夫よ」


 カノンさんが案内してくれた部屋には6台のベッドがそれぞれ均等に並んでいて、暖炉もあり、その暖炉の上には置き物や写真が並べてあった。


「あれ? この写真の人……」


 多分、子供の頃カノンさんとちょっと年老いた女性の人が写っているけど……うん、間違いない。あの時、過去の世界で見たフィーネに顔がそっくりだ。そう言えば、抗ウィルス薬の話の時にフィーネはカノンさんを知っているような感じの話し方をしていた。


「どうしてカノンさんがフィーネの写真を持ってるの?」


「あれ? 私、律君にフィーネおばあちゃんの話したかな?」


「えっ! フィーネはカノンさんのおばあちゃんなの!?」


「そうだよ。って言っても、私フィーネおばあちゃんと過ごした時間は短かったから、余り覚えてないけどね」


「そうだったんだ……」


 思わぬ過去を知ってしまったな。フィーネがまさかカノンさんのおばあちゃんだったなんて。今思うと話し方とか雰囲気がカノンさんにそっくりだったよなぁ。


「良いか奏太、僕のように一流になると武器を抱き枕がわ…………グーグーZzz」


「えっ! ちょっと悠音さん?! もう寝ちゃったんッスか?  って、目を開けたまま寝てるとかなんなんすか?!」


「詩さん、おやすみなさい~」


「うん、アリアちゃんおやすみ」


 俺もカノンさんが用意してくれたベッドに入って眠りについた。皆、一度に色々な事が起こったから直ぐに寝ちゃったみたいだな。俺も寝よう。明日になったらちゃんと皆に話そう……ちゃんと…………。




 アッー!! 話す内容がまとまらなすぎて、とうとう一睡も出来きずに朝を迎えてしまった。


「皆、おはよう~」


「どうしたの律君そのくまは?」


「律様ガ熊サンニ……」


「ゆるキャラに路線変更か! 律もなかなかやるな」


「って……」


 ダメだ……。悠音にツッコミを入れる気力もない。けど、ちゃんとしなくちゃ。皆にこんな落ち込んだ姿みせたら不安にさせちゃうよな。


「後で皆に話があるから、朝ご飯食べ終わったら外に集合して欲しいんだ」


「まさか、律! 親友の僕への愛の告白か?」


「悠音さん、流石にそれはないと思うッスよ」




 外に出て来たのはいいけど、何か空ばかり見ちゃうよなぁー。俺、現実逃避してるのかなぁ……。


「今日ノ空ハ晴レテイマスガ、所ニヨリニワカ雨ガ降ルカモシレマセン」


 って、KAGUYAも天気の話するとかタイミング良すぎ。KAGUYAに俺の心の声が聞こえてたのか? いや、そんな事ないよね。


「律君! 空ばかり見てないで、そろそろ話してくれないかな?」


「うん……。悩んだんだけど、やっぱり皆にもフィーネが俺だけに話してくれて事を知って貰いたくて、今から話そう思う」


「うん」


「フィーネが俺に言ったのは、今この世界の全てのゾンビを操っているのがカグヤの肉体の方なんだ。このカグヤの肉体を殺す事で全てが止まる。それが、この世界を正しく元に戻す事が出来る唯一の方法なんだ」


「そんな残酷な事をフィーネは私達に言うなんて……」


「KAGUYAは悪くないのに酷いッス」


「俺は二度もカグヤを救う事が出来ないなんて、そんなの嫌なんだ」


「律の言う通りだ!」


「けど……それならわたし達これからどうすればいいの?」


「アリア、俺達のしてきた事は全部無駄だったんだよ。だからさぁー……皆でKAGUYAと一緒に何処か遠くへ逃げないか?」


「律様ハコノ世界ノ人々ヲ見捨テルノデスカ?」


「俺は見捨てたくなんてない……でも」


「私ハ皆ニ救ッテ貰イマシタ。ケド、アノ子ハ……闇ノ中デ助ケヲ待ッテイマス。

律様、ドウカ絶望ノ淵ニイルアノ子ヲ救ッテ下サイ。コレハ律様達ニシカオ願イ出来マセン。ソレニ、皆ニハ内緒ナンデスガ私ニハガアルンデス」


「そう言われると逃げたくても立ち向かわないといけないじゃないか……本当ずるいよKAGUYAは。俺はKAGUYAの事は信じてるけど、やっぱり最後までカグヤを救う為に足掻き続けるからな」


「諦めの悪さが僕達の良い所ッスよね!」


「フッ……絶望に抗うなんて悪くないストーリーだな」


「ううん……私達なら絶望じゃなくて、きっと希望に変えれるよ」


「わたしも皆の為に最後まで足掻き続けてやるもん!だって、皆はわたしにとって最高の仲間なんだから奇跡の二つや三つ起こしてみせる」


「こんなあやふやな答えしか出ないけど、それでもKAGUYAいいのかな?」


「ハイ、私達ラシイデス! 皆デ首都ニ乗リ込ミマショウ」


「だな……。よーし、そうと決まればこのまま行こう! 武器は持って来てるし、それにカノンさん達と永遠の別れじゃないし、必ず全員でここに帰って来よう」


「うん」


 って言っても首都までは遠いし、どうしたもんか……。歩いて三日だったかな? 車だと一日で着くとか前に言ってたよな。うっ…………いや、がんがればなんとかなる! それに、泣き事言ったって何にも始まらないし、行くしかない。


 プップップップーー!

 ん? 車のクラクションの音だ。でも、何処から聞こえてきたんだ?


「律キュン達乗って行くでしょ」


「あれ? オカマ軍団の皆どうしてここに? それにこの豪華絢爛の痛車じゃなくてデコトラ改造車は何?!」


「そこら辺に落ちてたトラックをちょっと改造したのよ。私達も律キュン達と一緒に世界を救う為に駆けつけたのよ。首都まで半日で行ってあげるからしっかり捕まっててよ!」


 トラックで半日ってどんだけ飛ばすつもりなんだ。オカマ軍団の皆が来てくれて心強いような心強くないような……。とりあえず俺の心はめちゃくちゃ複雑だけど、今から皆で世界を救いに行きます。

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