ビーチには危険がいっぱいだ

 俺達はベルさん達と別れてから白くキラキラと光るビーチへと辿り着いた。


 そういえば、これからどうすればいいのか何にも考えてなかった。けど、ベルさんが言ってた地図から消された研究施設ってのが何故か気になるんだよな。うーん、一体どこに行けばあるんだろか……。


 あっ、そうだ! こういう時にこそKAGUYAカーちゃんに聞けばいいんだよな。色々とありすぎて、KAGUYAの存在をすっかり忘れてたよ。


「ねぇーKAGUYA、地図から消された研究施設ってどこにあるの?」


「…………。」


 あれ……? KAGUYAから返事がないなんておかしいぞ。あぁ、きっとKAGUYA聞こえてなかったんだよな? そうだよ、誰だって聞こえない時もあるよな。それならもう一度言ってみよ。


「ねぇーKAGUYA」


「聞コエテマス律様! ドウセ私ハ三話モ出番ガ削ラレタ都合ノイイAIデスヨ。キット、散々コキ使ワレ挙句ニ捨テラレル運命ナンデスヨ。ハァー、タメ息シカ出ナイ」


「ごめんってば! いや、あのーKAGUYAを忘れてた訳じゃないよ。ただ、色々とその……忙しかったからつい、うっかりしちゃう事もあるじゃんか」


「別ニイイデスケドネ……。ソレデハ気ヲ取リ直シテ、先程律様ガ言ッテイマシタ地図カラ消サレタ研究施設ニ関スルデータハ残ッテオラズ、場所モ不明デス」


「そんなぁ……。また、振り出しに戻るのかよ」


「律君、元気だして! 噂になるくらいなんだから村人とかに聞き込みすれば、何か有力な情報が手に入るかもよ」


「そうだよな、ありがとう詩! 困った時は村人に聞けばいいんだよな。村人に……村人……って、村人どこ?!」


「わたしの目には村人はおろか、ビーチに人っ子一人いないね。早くも前途多難でなんか楽しくなってきちゃった!」


 そうだった! アリアも俺達と一緒に着いて来てたんだった。でも、何でアリアは俺達と一緒に着いてきたんだろう? しかしも、絶望してる俺のすぐ隣でアリアは詩と楽しそうにお話してるし、俺もそっちの楽しい会話に混ぜてほしいよ。


「奏太、気づいているか?」


「はい、悠音さん勿論気がついてるッス」


 それにしても、悠音と奏太はさっきから二人で一体何をしてるんだ? なんか、二人揃って唯ならぬ雰囲気をかもし出して、辺りを物凄く警戒してるけど……。何かよからぬ事をするつもりなのか? そうなら、何かする前にここは俺が二人を止めなくちゃ!


「ちょっと、悠音に奏太! 二人共よく聞いてくれ。この物語はゾンビが出てくる物語であって、決死てハンターとかが出て来て狩られる物語じゃないんだからな!」


「敵は二人か……いや、あの何の変哲もない海の家の方にも駄々ならぬ二人の殺気を感じ取れるぞ……。どうやら僕達は、気づかないうちに敵のテリトリー内に侵入してしまったようだ」


「テリトリー、つまり敵の領域に侵入してしまったって事ッスね。敵は見かけによらず手強いッスね。悠音さん、どうします?」


「幸い敵は、こちらの人数までは把握出来てはいないだろう。ここは、用心しながら前に進むとするか」


「了解ッス!

  あれ? 悠音さん、律さんが仲間に加えて欲しそうにこっちを眺めてるッスよ」


「いや、俺は別にそんなつもりじゃ……」


「僕の一番の親友だからと言って、僕は断じて甘やかしはしないぞ! この隊に入る条件は一般人にはとても厳しいぞ。なんせ、それはそれは大変で数々の試練を乗り越えて貰わなければならない。それでもヤルと言うなら僕は止めはしない」


「悠音さん、俺が言うのもアレなんですが……律さんにはありとあらゆるボケに耐性があり、そのボケをいとも簡単に裁きツッコミをする能力があるっスよ」


「ハッ?! この僕を凌駕するその特殊能力、認めるとしよう。おめでとう律、我が入隊に入る事を許可しよう」


「誰がこんな入隊入るかぁぁぁぁ!!

だけど、流石の俺もこんな茶番にはもう付き合いきれない。だから、俺は詩達と一緒に先に行くからなっ」


「待つんだ律! そこは……」


「うわぁぁぁ?!?!」


「そこには落とし穴のトラップがあるって言おうとしたのだが……遅かったか」


「それなら早く言ってくれよ!」


 でも、何でこんな浜辺に落とし穴なんてあるんだよ。ちょっと、落とし穴掘った奴出て来いよ!


「ん ……? ヒィィィィ?!?!」


 今、一瞬だったけど落とし穴の中にある横穴から知らないオッサンの顔があったんだけど、どうゆう事?! しかも、俺とバッチリ目が合った気がするけど……アハハ! 気のせいだよな……うん、気のせいだ! ここから出る事だけ考えよう。早く出なきゃならないのに、なんで誰も助けに来てくれないんだよ!



「ハァハァ……全く酷い目にあった。まさか、一人で落とし穴から脱出するとは思っても見なかった。ちょっとお前ら」


「悠音さん、この落とし穴の攻撃これは……? ハッ?! まさか敵は俺達に先制攻撃を仕掛けてきたって事ッスか?」


「奏太隊員、残念だがそうなるな……」


「クゥ……。かくなる上は、陸がダメなら海から行くしかないッスよね」


「海か…………。海は僕達が思っているよりもっと危険かもしれない。奏太隊員、丁度怖いもの知らずのゾンビが一人現れたようだ。少し観察してみるとしよう」


 全く俺をそっちのけで彼奴らどんどんと話を進めやがって。で、今度は海で何が起きるんだ? 巻き込まれたくないから、此奴らとは少しだけ協力を空けて観察しようっと。



 海は不気味すぎるほど静寂に包まれていた。都合よく現れたゾンビは何も考えず海へと入っていった瞬間、海の中から巨大なサメが現れゾンビに襲いかかった。ゾンビは為す術なく海の中へと引きづり込まれ、二度と浮かび上がってくる事はなかった。


「あのサメは間違いない……だ! ジョーンパイセンは海に熱い漢で、己に厳しい方で有名だからな。諸君、残念ながら海から行くのは不可能だ」


「えー! わたし達あの豪華客船に乗りたかったのに……ねっ、詩さん」


「いや、私はあんまり乗りたくないかな……」


「君は確か新人のアリア君だったな。うん! 豪華客船で行くとは、なかなか良いアイディアだ。採用しよう!」


 豪華客船……何だか明らかに怪しいよな……。そもそも、あの豪華客船どっから出てきたんだよ?! 最初からはなかった気がするけど、まさかね……。

 だけど、豪華客船でやるイベントなんていったら血祭り以外何もないじゃんか?!


 血祭りは嫌だ! 絶対に阻止しなくては! って、皆もう豪華客船の方に向かってるし、頑張れ俺、何か適当な嘘をついて皆を阻止しなくちゃ!


「ちょっと待て、君達! この豪華客船に乗るイベントは却下だ。何故なら、俺達があれに乗ったらジョーンパイセンが悲しむだろ。だから、止めような」


「それもそうだな……」


 皆、なんやかんやで納得してくれたみたいで、俺達は結局陸から行く事にした。ありがとうジョーンパイセン! 貴方のお陰です。


 さっ、気を取り直して前に進むとしますか。

 俺と詩とアリアは普通の歩く早さで歩いてるんだけど、悠音と奏太は辺りを警戒しながら一歩一歩進むからめちゃくちゃ遅い。俺にはわからないけど悠音が言うには、陸には無数の落とし穴とその中に二体何かがいるらしい。もしかして、さっき俺が見たオッサンと何か関係があるのだろうか?


 いや、そんな訳あるはずないよな。あっちゃ絶対にダメなヤツだから、ここは大人しく悠音の言う事を聞きながら前に進んだ。


「悠音のお陰で無事に海の家まで辿り着けたな」


「皆、ご苦労であった」


「あっ、丁度海の家の人が出て来たッスよ! あの俺達」


「ようこそ、オカマ四姉妹が経営する海の家へ! 旅の疲れは此処で癒していってちょうだい」


 海の家から出て来たのは筋肉質の屈強な漢の中の漢って感じの人が四人もいる。しかしも全員同じ顔だよ?! それにあの顔は……俺が落とし穴に落ちた時に見た顔にそっくりだ。


「僕に言わせれば四姉妹というよりか、四天王感が強いけどな…………グハッ」


「えっ?! 悠音いきなり倒れてどうしたんだよ」


 だけどこの時、俺には倒れた原因が何なのかハッキリとわかっていた。素人目にはわからないと思うが、確かに今オカマの一人が悠音に目にも止まらぬ早さでみぞおちに一発クリティカルヒットをお見舞いしている。あの四天王オカマ軍団只者ではない……。


「あらヤダ、この子疲れちゃったみたいね。一名様確保! 入店しま~す」


 いや、ちょっと待ってよ! 俺達入店するなんて一言も言ってないし、それに悠音はみぞおちに一発喰らわさせられた被害者だぞ。


「悠音さん相当疲れてたんッスね」


「音ゲーばかりしてるからだよ! もう、皆に心配かけて……」


「へぇー、あの人音ゲーなんかしてるんだ」


 あれ? 今さっきの光景皆には見えてなかったのか? 何事もなかったかのようにこの地獄の海の家に皆入ろうとしてるけど、冗談だろ! 頼むから冗談だと言ってくれ。俺、これなら豪華客船で血祭りの方がまだましだったよ。


「4名様、海の家に入店しま~す!」


 えぇぇぇぇ、拒否権なしなのかよ?!

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