話してみてもよくわからない人は、やっぱりよくわらない人だ!

 抗ウィルス薬もあった事だし、奏太も元気になってほんと良かったよ。あとアリアって子が目覚めてから向こうは歓喜に湧いてて凄い事になってる。何か俺達邪魔だよな。邪魔しちゃ悪いから、俺達はここで退散するとしますか。


 俺は皆に目で帰えるぞっと合図を送り、コソコソと部屋を出ようとした時だった、俺を含め全員が後ろから誰かに服を掴まれた。俺は後ろを振り返えて見てみたら、ゾンビになったあのアリアって子と子供達が俺達の服を掴んでいた。


「ちょっと、あんた達どこ行く来なの?」


「何処って、そろそろ帰ろと思って……」


「そう急がなくてもいいでしょ! ねっ、ベル姉もそう思うでしょ?」


「アリアちゃんの言う通りですね。お互い出会い方は良くなかったけど、これも何かの縁だから謝らせて欲しいの。ねっ、ミサ姉」


「あぁ……手荒なまねをしてすまなかったな」


「いえ、こちらこそ! って、事で用は済んだ訳だしそれじゃあ!」


「仲直りも出来た事だから自己紹介するね! わたしはアリアって言うの。一様、三姉妹の末っ子を担当してます。けど、ここにいる皆とは孤児院で一緒に育った言わば家族なんだから設定はあながち間違いではないのだよ」


「私はベルっていいます。三姉妹の設定では真ん中の次女をやらせてもらってます。ここにいる子供達は孤児院で一緒に育った子達で、ってさっきアリアちゃんが言ったよね。皆、こんな状況でも誰一人欠ける事ない本当に優秀な子供ばかりなんだよ」


「私は長女のミサだ」


 って、勝手に自己紹介どんどん始めちゃってるし、帰れるタイミングを完全に見失っちゃったよ。しかも三姉妹は設定だったのかよ?! 薄々は気づいてたけど、こんなハッキリ言われとは思ってもみなかった。でも、ミサさんだけこの設定嫌いなんだろうな。だって、一番三姉妹の中で雑な感じだよ。そんなに嫌なら辞めれば良いのに……。


 でも、向こうが勝手に自己紹介を始めたとは言え、俺達も一様ここは自己紹介しないとだよな。


「俺は律っていいます」


「私は詩です」


「僕は悠音だ」


「俺は奏太ッス」


「俺達、訳あって研究施設を色々と調べる為に仲間と一緒に旅をしてるんだ。他にも理由はあるけど、今話せるのはこれくらいかな」


 一様、当たり障りのない言葉を選んでみたけどコレで大丈夫だよな。どうせ本当の事を言っても信じて貰えないだろうし、理解するのは多分難しいだろうしな。


「ふーん。わたし達も結構色々な場所を転々としてるよ。でも確かあと残ってる研究施設っていったら、ここと首都にある本社だけだった気がする。ミサ姉そうだったよね?」


「あぁ、ほとんどの研究施設はもう影も形も残ってはいなかった。それに、とある研究施設からクリーチャーが街に大量に放たれたと聞くし、そこはもう完全にダメだろうな」


「そんな……」


 こんな時にあの研究施設の話を聞くなて思いもしなかった。そのクリーチャーが放たれた研究施設は多分、俺がはじめて大切な仲間を無くしたあの場所だ。俺達が研究施設を出てから、そんな事になってたなんて知らなかった。


「あのさー、詩」


「…………。」


 詩は何も言わなかったけど、俺以上に深く傷付き落ち込んでるのがわかった。そうだよな。俺以上に仲間と過ごした時間は詩の方が長いんだもんな。でも、俺は長さなんて関係ないくらい大切な仲間達だったんだ。

だって、俺が最初に目を覚ました場所で、大切な仲間と巡り会えて、多くの思い出が残る場所はもうなくなってしまったんだな……。

思い出でに浸る度に俺の胸が苦しくなって痛くなる。だけど、それでも俺は前を進む事を選んだんだ。だから、もう泣く訳にはいかないんだ。


 それに抗ウィルス薬は手に入れたけど、まだ多くの謎が残っててそれをまだ俺達は解き明かしてはいない。KAGUYAカーちゃんの事も勿論そうなんだけど、この会社自体得体がしれないっていうか、なんてゆーかなんだよな……。


 けど、調べるにしても、よりによってもう本社がある場所にしか研究施設がないなんて……。確か本社がある場所って首都だよな、首都には今大量のゾンビが集まってる筈だし、あぁーもうどうすればいいんだよ?


「あっ、でもねアリアちゃんやミサちゃんには言ってなかったんだけど、一つだけまだ研究施設があるっていう噂を私聞いた事あるよ」


「ベルさん、それ本当ですか?!」


「一様あくまでも噂だからね、本当かどうかわからないからね。その噂の研究施設なんだけど、なんと地図から丸ごと消されてしまった曰く付きの研究施設。しかしも、その研究施設を管理してるのが幽霊なんだよ」


「幽霊だって?!」


「ベル姉その話って本当なの?! 本当なら一度でいいからわたし幽霊に会ってみたいなぁ~」


 いやいや、ゾンビの次は幽霊なのかよ?! もう、俺は怖い系は苦手だって言ったじゃんかよ。ほんと勘弁して下さい。


「そうだ、忘れるところだった! ゾンビの彼はえーっと、悠音君だったかな? お願いがあるんだけど、さっきの抗ウィルス薬をちょっと見せてくれないかな?」


「貴方は確か……孤児院出身で三姉妹の次女設定の人ではないか?! 」


「そう言われと、複雑な気分になるは何故かしら……」


「残念だがこの抗ウィルス薬は、親友の律に頼まれて僕が預かってるんだ! とてもじゃないが、一般市民には見せる事は出来ない」


「って、悠音! そう言いながらも抗ウィルス薬の入った小瓶を思いっきり見せつけてるじゃんかよ!」


「この抗ウィルス薬を見せつければ、愚かな人間共が僕に平伏すと聞いたのだが……」


「あながち間違えじゃないけど、使い方が違うでしょ!」


「そうなのか……? でも、これを姉御に届ければ大量生産して貰える事間違いないよな!」


 えっ?! あの悠音からこんな頭の良い発言を聞く日がくるなんて、俺さ感激だよ。


 うん、そうだよな! これをカノンさんと旦那さんに届ければきっと大量生産してもらえるじゃん。俺とした事がそんな事すっかり忘れてたよ。だって俺、いっちょまえに自分だけでどうにかしなくちゃいけない事ばかり考えてたから、気づかなかったのかもしれないな。まさか、悠音に教えられるとはな。


「悠音、お前やっぱりすげーカッケーよ。ありがとなっ!」


「そうか……。ようやく律も僕から溢れ出すに気がついたようだな。流石は僕の親友だ!」


「あっ! でも、抗ウィルス薬をカノンさんに届ける為には一回帰らなくちゃ行けないのか。けど俺達、まだまだ調べたい事や知りたい事が山ほどあるのに……」


「ねぇー、律君。良ければ、それ私達に任せてくれないかな?」


「ベルさん! 本当に頼んでもいいんですか?」


「勿論だよ! ミサちゃん、アリアちゃんいいよね」


「問題はない」


「やったー! 私一度でいいから、かの有名なカノン先生に会ってみたかったんだよね」


 えっ?! カノンさんって、そんなに有名人だったの? でも、俺の知ってるカノンさんは医者で旦那さんの研究を手伝ってて……やっぱり考えてもそれしかわからないや! けど、ベルさん達が届けてくれるなら安心だよな。


「それにね、私達皆で安心して住める場所を探してて、試しにこの研究施設に住んでみたものの子供達には窮屈で居心地悪いみたいなの。だから丁度良かったんだ」


「ありがとうございます! じゃあ、ベルさん達にこの抗ウィルス薬を託します」


「謹んでその役目お受け致しますね」


 俺達は抗ウィルス薬をベルさんに託した。

 カノンさんのお家までの地図は、調子を取り戻した詩が書いてくれたお陰で助かった。詩が地図を書いている間、俺は皆と一緒にカノンさんのお家までの最善なルートを話し合い決めていった。


 ようやく地図が完成し話し合いもまとまったので、皆はそれぞれ荷物をまとめ出発の準備を始めた。


 そして、部屋を出る時はゾンビがいないか確かめながら急いで研究施設の外に出た。中でも一番驚いたのは、本当にベルさんの言う通り子供達は優秀だった。子供達は誰に言われる訳ではなく、手慣れた様子で武器を構え、仲間たちを誘導しお互いにカバーし合いながら助け合っていた。この子達はひょっとして俺より年上なのでは思えてしまうくらいだった。


 外に出て安全を確認してから詩は出来上がった地図をリーダーであるミサさんに手渡した。俺達はお互いに健闘を称え合い握手をした後はそれぞれ行く方向に足を向け、簡単なあいさつをして別れた。


「ふぅ~、これで心置き無く旅がまだ続けられる……って、アリアなんで俺達と一緒に旅パに加わってるんだよ?!」


「えへへ! だって、こっちの方が楽しそうなんだもん。ちゃんとベル姉達から了承もらってるから大丈夫だよ」


 って、いつの間にそんな事になってたんだよ?? また、変なのが加わるなんて最悪だ……なんて悪夢なんだ。


「そんな訳でアリアちゃんは皆と一緒に旅をします! よろしくね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る