俺達には俺達のやり方がある
アリアが倒れてかれこれ1時間くらいが経とうとしていた。アリアからお姉と呼ばれているミサ姉は子供たちと一緒にアリアを優しく介抱していた。ベルっていう人はさっきから行ったり来たりと考え事をしながら歩き回っていた。
あのアリアって子が目を覚まさないって事はやっぱり俺達が作ったカレーが原因なのか……。そうなのか? あぁー、時間が経てば経つほど悪い方へと考えしかまとまらん!
「なぁー律」
「悠音、いきなり小声でどうしたんだよ?」
「そろそろおいとましようぜ」
「この状況でそんな事が出来るか!」
「私も悠音が言う通り、そろそろおいとました方が良いと思う。私達がここにいても出来る事なさそうだし……」
「確かにそうかもしれないけど……」
まだ、俺の中でカレーという一つの答えが完全にぬぐい去る事が出来ないなんて皆に言えないし。もうどうしたらいいだよ!
「ベル少し落ち着け! とりあえず、アリアに何が起こっているのかだけでも私達に説明してくれないか?」
「ごめんなさいミサ姉! 色々考えをまとめてたら、つい周りが見えなくなっちゃった……。そうだ、今から大事な話をするから捕まった君とゾンビの君達もこっちに来てくれるかな?」
「えっ、俺達もですか!?」
「そうなの! この話は君達にも一様関係ある話だから来て来て」
俺達はしぶしぶベルさんの言われた通りに集まった。ただ一人を除いてだけだけどね。
「皆、集まってくれてありがとう。
あれ? 彼処の隅で不貞腐れてる少年はどうしたの?」
「あっ、奏太の事だよね。彼奴は今はそっとしておいてあげて……」
なんせさっき希望が一瞬で吹き飛ぶ事件が起こったんだから、誰だって落ち込むよな……。いつも無駄に元気な奏太があんなに落ち込んだ姿を見るのは始めてだったし、情けないんだけど俺はなんて奏太に言葉を掛けていいのか見つからないでいた。
「そっか……まっ、いいや。では、改めてアリアちゃんはねこれからゾンビになります!」
ん? 今、ゾンビってワードが聞こえた気がするのは気のせいかな……。気のせいだよね! ほら、だって皆も開いた口が塞がってないしね……。
それに最近ゾンビに慣れすぎて当たり前の様になってるから、聞き間違えたに違いない! 試しにもう一度聞いてみようかな……。
「あの、ベルさんだったかな? 俺の聞き間違えだと思うからもう一度言って貰えますか?」
「それじゃあ、もう一度言うね。アリアちゃんはなんとゾンビになります!」
「へぇー、ゾンビになるんだ……ってなるかよ! ちょっと、説明ざっくりし過ぎだよ」
「僕達に新たなゾンビの仲間が出来るのか……。ハッ?! 僕のポジションが脅かされる」
「大丈夫だ悠音よ、悠音のポジションはかなり頭がおかしくないと勤まらないから!」
「そうなのか……。だけど、何か違う様な気も……」
「律君大丈夫だよ! 私も受け入れちゃっし、お友達出来るの嬉しいよ」
「詩、説得力が違いすぎるよ」
「まっ、律困った時はこの僕に任せてくれ! この抗ウィルス薬があれば何もかも全て大丈夫だ」
「悠音、お前がそれ持ってたんかい!
通りで奏太が一番最初に持って来た抗ウィルス薬が何処を探してもないと思ったんだよ」
実は言うと……奏太が抗ウィルス薬を全部落として割った時、一番最初に奏太が持って来た抗ウィルス薬を密かに探していんだけど……なぁーんだ、悠音が持っていてくれたんだな。
本当に良かった……。
俺達はまだ希望を無くした訳じゃ無かったんだ。
「悠音さん、ウオォォォ……貴方は俺のメシアッスよ」
「奏太よ、僕がメシアだって事に今頃気づいたのか……。フッ、これからは僕を崇め奉ってもよいぞ」
「ハイッス!」
あんな隅っこで落ち込んでたのに、希望がまだあるって事がちゃんと奏太にも聞こえてたみたいでびっくりした。だけど、こんなに悠音に勇気づけられる事が未だかつてあっただろか? いや、ないよな。彼奴絶対に調子にのるぞ!
俺が一人でほっとしてたら、何だか急に周りが騒がしくなってきた。騒がしい方に目を向けると倒れた筈のアリアという少女が目を覚まし起き上がっていた。
「アリアちゃん、ちょっとこの鏡で自分を見てくれる?」
「…………。」
「そうなの! アリアちゃんが飲んだお水はこの研究施設で見つけたゾンビになるお薬が入ったお水だったのだ」
「…………。」
可哀想に……。あのアリアって子ショック過ぎて言葉が出ないんだ。いきなり自分がゾンビになるなんて事そう簡単に受け入れられる事じゃないよな。
「わたし、ゾンビになってるじゃん!
凄くない? お肌の色は少し青白いけど、見た目はわたしだ。前と何も変わらない……。それに、ゾンビって死なないし疲れないし最強の存在! これで拾い食いしても、もうベル姉に怒られなくてすむなんてわたしめちゃくちゃ凄いじゃん」
「いや、ちょっと待って! 俺が言うのもおかしいんだけど、そこは悲観するところじゃないの?」
「悲観したら現実が変わるの?」
「それは……」
「コレはわたしの運命なんだから、わたしが進みたい道ははわたし自信が決めるんだ! あんたにつべこべ言われたくないもん。あっかんべーだ!」
人がせっかく心配してあげてるのにこのアリアって子は……。でも、確かに悲観しても現実なんて変わる訳ないし、他人の俺がとやかく言う筋合いはないよな。だけどさっ、目の前で急に人が倒れたら俺だって心配はするよ。俺が始めて出会った大切な仲間達とあんな辛い別れ方をしてしまったんだから……。
それにだ! もしかしたらカレーが原因だったかもしれなかったから心配したんだ! まっ、何にせよ原因はあの水だったみたいで少しだけほっとした。
「しかし、ゾンビ枠が増えてしまったな……。ここは僕がゾンビとは何たるかを新人のあの子に教えてやらねば(使命感)」
「そうッスね、悠音さん。後輩にはビシバシ教えて上げないといけないッスよね(先輩面)」
「いや、悠音も奏太もゾンビは何たるかなんて一番よくわかってないだろ?」
「律よりはわかってるつもりだぞ!」
「私は悠音がどの程度理解してるかは知りたくないけど、百戦錬磨をくぐり抜けて来た私ににはわかる、あの子私達より相当強いと思うよ」
「なんて事だ……! 僕のポジションがあの子に奪われのはやはり宿命なのか……」
「詩さんちょっと酷いッス!
いくら悠音さんがバカでアホで中二病丸出しの人で、人前で恥ずかしげもなく音ゲーする変態でも言って良い事と悪い事があるッスよ」
「奏太……。僕はどうやら気づかない内に精神的な攻撃を受けたらしい。もうダメみたいだ……」
「悠音サンンンンン?!?!
しっかりして下さいッス! このまま寝たら死にますよ。俺が寝ないようにほっぺを叩き続けるんで、生きて下さいッス」
「精神的なダメージと肉体的ダメージ。奏太君、とりあえず悠音のほっぺに往復ビンタするの止めよね」
奏太はようやくいつも通りの自分を取り戻したみたいで良かった! だけど、ちょっとやりすぎだけどね……。
一度は盛大に砕け散ってしまった希望だったけど、また明るい希望が見えてきた。俺達は多分、人より沢山失敗して転ぶ事も多いかもしれないけど、その分何度挫折し立ち止まる事があっても、何回でも何度でも諦めず、未来ある限り挑戦し続けて行こう!
それが俺達らしさなんだから……。
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