第31話 バックスピンスクラッチ
頭をしこたま打ったらしい。失神のようなブラックアウトから、ジーンとしびれた頭が
「何すんだよ
取り巻きが一緒だった。
入間がのろのろと立ち上がる。俺に激突されて、完全にひっくり返っていた。これ見よがしにパンパンと砂を払う動作が
「すまんな、入間。よく見てなかった」
立ち去ろうとするが、
「悪かったよ、入間。
言い終わる前に腹にパンチを喰らった。
「なにすんだ……よ!」
俺は入間の顔面にパンチを叩き込んだ。入間は立ったまま、俺の
「いてーな」
俺は入間と向かい合う。こいつとはバチバチやってはいたが、ここまでまともにやりあうのは初めてだな。
なぜならそれだけ
「お前バカだろ」
いきなりローキックを食らった。全く見えない。流れるような
「火馬ぁ」
入間が顔を近づけてきた。
「お前がぶつかってきたから一発入れただけだぜ。おあいこなんだからすっこみゃよかったんだよ」
「わざとじゃねえんだ、あそこまでやられる
「こっちにも
入間が俺のみぞおちをパンパンと拳で打つ。軽くだ。だが、腹に
「三対一なのに突っかかられたら、そこまで
「そん時はそん時だぜ。お前らが三人がかりで俺をぶちのめしてみろ。お前らが一人でいる時を
俺は横の二人をチラ見して言った。取り巻きが膝で俺の尻をどついた。かなり痛い。が、痛いだけで
「お前ら校内では常に二人以上でつるんどくんだな。一人になったらやるぜ」
「だから……そういうのだっての」
再び、みぞおちに一発喰らった。さっきより力を込めて。腹筋に力を入れてるものの、ズシンと内臓に響く。思わず顔を
「まあちょうどいいぜ。お前には用があったんだ」
「?」
入間が俺の耳元に唇を近づける。そして
「お前、
「はああ!?」
なんでこいつの口から
「お前らの知ったこっちゃねえだろうが!」
怒りで身体が
そんなへなちょこ蹴りが効くかよ。
俺がものともせず前に出ると、入間の
と、そのつもりが……。
「
「
割って入った朗が、俺のパンチを喰らってひっくり返っていた。
「だ……だめだよ二人とも……
かなりまともに入った。ガツンとした感触が拳に残っている。どこの骨に当たったのだろう。コンクリを殴ったような感覚があった。俺は朗に大怪我をさせてしまったのではないかと
「あいたたた……」
ところが朗はひょっこりと立ち上がった。ほおは
俺は狐につままれたような思いだった。
「火馬、てめ……」
「待ったまった、入間くん……そして
入間とその取り巻きを
「おちついて、学校で喧嘩はダメだよ。ね。ほら火馬くんも謝って」
朗が俺の頭を掴んで無理やり押さえ込む。力を入れたと思えないのに、なぜか
「はい、これでおしまい。おあいこだから、これで仲直りってことで……はいシャンシャン」
あっけに取られる双方の前で、二回拍手すると、朗は俺を引きずってその場を離れてしまった。
「お、おい朗……」
そんな俺の顔を見てため息をつく。
「ダメだよ、火馬くん。あんな風に人を
あ? 殴られたのは俺だぜ? それに一発しか返せなかった。どう考えても俺が損している。
「あんな思いっきり殴ったら大怪我しちゃうよ」
お前はピンピンしてるじゃねえか。
「ぼくは身体が
「まあはたかれてたから、少しくらいはたき返してもいいと思うけどさ……。入間くんもあんなに手加減してたんだから、火馬くん、本気になっちゃダメだよ」
「ああ? あいつがそんな玉かよ。遠慮なく腹を殴りやがって……」
俺は腹をさすりながら、
「火馬くん頭打ってたでしょ?」
「あ、ああ。それがどうした」
「だから入間くん、頭をはたかなかった。あれで入間くん、気が回るんだよ」
あ? 入間が? ほんとかよ、にわかに信じられねえ。
そんな俺の前で、なぜか朗がクスクス笑い始める。
「それに、入間くんには火馬くんをはたく理由があると思うよ」
「ああ? なんだと!? ふざけるな、いくら朗でも……」
「入間くんはね、由葉さんのご近所さんなんだ。小さい頃から知ってて、
それがどうした……と一瞬思ったが、あっとなった。
「これ以上は僕の口からは言えないけどさ」
「な、な、な……」
入学以来、入間が俺に突っかかってくる理由って……。
「だから火馬くん、入間くんを許してやってよ」
俺はすっかり
入間のやろう、沙希にホの字だったのか!
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