第2話 埋めるな!
ざくざくと音がする。頭の上だ。ぱらぱらと何かが落ちてくる。薄目を開けると、土がまともに目に入った。
「のああっ!」
目が痛い。涙が出る。なんだ、俺はどうなっているのだ。
「しぶといんじゃ。もう目が覚めたんじゃ」
「だだだれだおまえは!」
目を
「だまれ
声が
「何が人鬼だ! さっさと縄をほどきやがれ! さもないと……」
「もはや
気配を感じ、とっさに身をよじる。ドコッと音がして、何かが土に突き刺さった。
「お……おい……」
マジかよ。先の
「外れたのじゃ」
幼女が両手を広げる。左手には杭。右手には
「わあっ!」
ドスッ。
「おおっ!」
ゴスン。
「ひいっ!」
ドゴォ。
必殺の杭打ちを必死で避ける。
「くのぉ、おとなしく…………」
「おりゃあ!」
俺は
「ふんっ!」
幼女の非力よ。縄は
「おっと」
あの幼女、
「け……警察……」
だがなんと説明したら良いのだ……。
しょせん、度を越えたガキのイタズラ……俺はこれ以上頭のおかしなガキにかかずらうことをあきらめ、歩き始めた。
よれよれと家にたどり着き、玄関をくぐる。
「ふああああ~~~~っ…………」
俺は思いっきり息を吐くと、玄関に崩れ落ちる。
「
おふくろの声だ。台所から聞こえてくる。とことこと足音が、玄関に近づいてくる。
「どうしたの灰也ちゃん、泥んこで遊んだの?」
「いや…………」
泥まみれの理由。幼女に襲われた、生き埋めにされかけ、木の杭を心臓に打たれかけた。必死で逃げた。つくづく説明が難しい。どないせえっちゅうんだ。
「そ、そこで転んだ」
「まあまあ、それは大変ね」
おふくろは俺をぐいっと抱き起こす。細腕のくせに軽々と、だ。おふくろは昔から力持ちなのだ。
「んふっ」
俺を抱きあげたまま、おふくろが笑う。
「灰也ちゃんったらすっかり大きくなって……身体つきがパパそっくり」
「気色の悪いことを言うな」
高校生の息子が子供扱いされて気分良いわけないだろう。俺は内心むくれたが、身体が言うことを聞かない。俺はおふくろに抱きしめられるがままだ。
「ナマちゃんね」
というとおふくろは俺の首筋に吸い付いてきた。
「わああああああああ~~~~」
いつもこれだ。おふくろは時々、俺の首筋にキスをしてくる。そのたびに全身
それをいいことに、おふくろは強く首筋を吸い続ける。キスマークがついたに違いない。母親のキスはいい。だが首筋にキスマークはよろしくない。
「でああっ!」
俺は
「元気でた?」
「なにをたわけた……」
と思うもさっきまでの胸のムカムカはすっかり消え失せていた。
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