第29話 俺は無実
その日、
優等生の沙希が学校を休むなど、記憶にない珍しい出来事だった。
昨日のあれが、
俺は中庭で寝転びながらパンを
あの夢のせいだ。沙希が夢になんか出てくるからだ。
心が
トマトジュースを飲み干して、重たい腰を上げる。そろそろ昼休みも終わりだ。気が進まないが教室に戻らざるをえない。教室のドアを開ける。
ピリピリした視線を感じる。俺は
女子の刺すような視線。男子の
教室を見回して俺はなんというかいたたまれない気持ちになった。沙希がいないというだけで、何か教室の火が消えたように感じた。俺は沙希の席をじっと見つめて
そんな様子を見て女子どもが近づいてきた。
「沙希が休んでるんだけど」
「だからなんだよ」
「気分がすぐれないんだって。すごく
「そうか」
「
「何もしてねえよ! なんで俺に聞くんだよ!」
「だっておととい、二人でいなくなったでしょ?」
「そしたら火馬くんの様子もおかしい」
「何かあったって思うじゃん!」
「知らねえって!」
女子たちに囲まれて、俺は
「生理が重いんだろ」
頭を現代文の教科書で殴られた。しかも角だ。結構痛いぞ。
「そういうとこ!」
どういうとこなんだよまったく……。俺は殴られた文句も言わず、離れる女子たちを見送る。
あの
俺はなんにも悪くない。なんも後ろめたくない。俺には何一つ反省の
だが俺の気持ちは
手紙が回ってきた。
『なあ、火馬。お前、
俺は手紙を握りつぶした。授業中だぞ、大人しく先生の話を聞かんかい。
すると消しゴムが飛んでくる。無視する。ボールペンが飛んでくる。無視する。シャーペン。さすがに飛んでくる方向を見る。英語の辞書が飛んできた。
『なんでもねえよ』
俺は怒って辞書ごと手紙を投げ返した。受け止めやがった。
『ホントに? どっちかが
『ねえ』
『信じていいんだな』
『信じてもらわなくて
ギッと
休み時間。
授業終了のチャイムと同時に女子と男子が一斉に立ち上がる。
「
俺は
と思って
俺は便座から飛び上がった。上から
「火馬、話がある」
まさか便所の中まで追っかけてくるとは思わなかった。俺はドアを
「火馬!」
「
男子に呼ばれ、女子に黙らされる。なんのこっちゃ。これどうすりゃいいんだよ。俺は両者の間に割って入った。
「
俺は
「
人だかりの中心で両手を上げ騒ぎを
「な、何を……!」
クラスの
「そんなこと言えるわけないじゃない!」
「いた、いた、痛い、やめろ」
飯山が叫んだ瞬間、女子どもがポカポカと俺を
「やめ、やめ、やめ……パンツが見えるぞ、こら……」
俺の
こりゃどうにもならん。
廊下の全力疾走など初めてやった。クラスメイトを振り切って校舎裏に逃れる。無我夢中で走り
俺はそいつと派手に
俺は地面で後頭部を打った。
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