第13話 天◯越え
「もーしもーしかーめよー、かーめさーんよー」
小さい手が俺の胸を押している。
「せーかいーのうーちにー、おーまえーほどー」
歌に合わせ、リズミカルに俺の胸にのしかかっている。非力が心地よい。
「そーんなーにのーろいー、もーのはーないー」
俺は身をおこした。
「生き返ったのかなのじゃ」
「おかげさまでな。心臓マッサージうまいじゃねえか」
「じゃろ?
「あの子は?」
「問題ないぞ。おぬしより
「ふむ……」
立ち上がって手足を伸ばす。特に異常は見当たらない。
「で? 俺はどうすればいいんだ」
「話が早いのじゃ」
「
ナンジャが
「
にしししと笑うナンジャに言いたいことはいろいろあるが、頭の整理が必要だ。少し時間をおくことにしよう。
「とりあえずこの子らを運ぼう。ここは場所が悪い」
「賛成じゃ。ここは
「わかった、まあ三人いっぺんは無理だ。ひとりづつ運ぶ。フォローは
日暮れとはいえ、人通りが多い。制服女子高生を抱えて往復するのは、なんぼなんでも
三人を運び
そうこうしているうちにギャルが
「あれ……あーしら……」
「そか……寝ちゃってたか」
「ナンジャちゃんらと……カラオケ来たんだっけ……」
三人組の服の汚れを
赤毛の子がこちらをじっとみている。
「おにーさん……えーと……」
「カンジャー!」
マイク
「のどがあったまってきたなのじゃ! 少々のどをうるおしたい! 濃いカルピスを
「へいへい」
「カンジャ? 変な名前っすね、おにーさん」
赤毛が笑う。同感だよ。だが、こんな
俺は廊下に出て、濃いカルピスを作る。
部屋に戻ると盛り上がっていた。
「ちょーエモいっしょナンジャちゃん!」
「うおー、3150!」
「小石川小さゆりちゃんっしょ! もはや!」
ミラーボルの光に照らされ、ナンジャのこぶしが
赤毛が俺の隣に座ってきた。さっきから俺の顔をじっとみてる。
「あのさ……えーと……さっきさあ、あんたあたしのこと……」
もじもじしながらこめかみを指で
「あれー? そんなはずないよねえ……だって、あたしらナンジャちゃんを街でナンパして、カラオケきて……」
記憶が混乱しているのだろう。そりゃあそうだ。今日一日は適当に切り貼りされたコラージュだ。ちぐはぐしていて当たり前だ。
「でもとりあえず!」
意を決したように赤毛が顔を寄せてきた。
「ありがと……」
ささやく赤毛の息と髪が耳をくすぐる。
「よくわかんないんだけど……なんかおにーさんに、お礼を言わなきゃならない気がして……」
よく通る声は、スピーカーの大音量に負けることもなく、俺の耳にちゃんと届いた。俺は目を丸くして赤毛を見返した。
「どういたしまして」
俺は思わず赤毛と顔を見合わせたまま、笑ってしまった。
「じゃ、じゃあおにーさん」
「かんぱーい」
何に乾杯かよくわからないが、とりあえず乾杯。
お疲れ様。俺はおまえらの無事に乾杯するよ。
俺たちの部屋は、幼女の唄う昭和の歌にギャルのテンションがとめどなく上がってゆく。いつのまにかナンジャがテーブルに上がっている。
歌はそろそろクライマックス。ナンジャの背中で山が燃える。
「あまぎいィィ~~イィごおォ」
権利の関係でここまでだ。ナンジャの見事なこぶしが唸り、ギャルどもが
俺は赤毛の隣でチキンを
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