第16話 妹はタラカー

「なーなーカンジャー」

「なんだナンジャ」

「たらこみつけたんじゃー」


 食品パックを手に、にぱーっと笑うナンジャ。あまりにあいくるしい笑顔に思わず写メを撮ってしまう。

 だがナンジャよ、それはたらこではない。明太子めんたいこだ。


『妹はタラカー。好物こうぶつのたらこをみつけたと、明太子のパックを持ってきた。今夜はこれでスパゲッティを作ってやろうと思う。どんな顔するかな』


 ライングループに送る。メチャメチャレスが返ってくる。あまりの反響はんきょうに通知が止まらない。

 五人の女どもの圧力につい負けて買い与えてしまったあの服を着た西洋風美幼女が、スーパーで明太子を手に満面まんめんの笑み。撮った自分が言うのも何だが、なかなか破壊力のある絵面だ。


 それにしてもSNSは初めてやったが、反応が良いと気分がいいな。承認欲求がくすぐられる。いやまあ、承認されてるのはナンジャなんだが、「写真を撮った俺もエラい」という気分にさせてくれる。


「赤いんじゃ……」


 不審げに皿をのぞきこむナンジャ。ナンジャはタラコと勘違いしているが、山盛りの明太子スパゲッティだ。俺は写真を撮る。タイトルは『赤いんじゃ』。


「んむっ!」

 ナンジャがフォークを口に入れて叫ぶ。


「からいんじゃ~~……」

『からいんじゃー』


 明太子スパゲッティを口に、目を丸くするナンジャ。


「でもうまいんじゃ~~……」

『でもうまいんじゃー』


 目をほそめるナンジャ。


満腹まんぷくでヨギボーに埋まるナンジャ』

『お風呂上がりのナンジャ』

『アイスを食べるナンジャ』

『ソファで居眠りのナンジャ』

『強制ハミガキのナンジャ』

『ベッドでおやすみのナンジャ』


 ふむ、どれも絶賛ぜっさんのレスが返ってくるな。ナンジャはだかが高い。

 SNS楽しい。みんながハマる理由がよくわかる。

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