第七話 報酬は、キッチリいただきますので
「それでだ。お前さんの依頼を受けるにあたって、ひとつ重要なことを決めておく」
「あ、なんでしょう」
シクヨロは、アイシアと固く交わしていた握手をほどきながら言った。
「
「半分?」
「そうだ。手に入れたアイテムについては、探索者ギルドの鑑定を受けたあとに、その鑑定評価額の半分を支払ってもらうことになる」
「……はい」
シクヨロの言葉を、真剣に聞いているアイシア。マルタンが、その話に補足した。
「今回の依頼目的の『マカラカラムの
「へえー、そんなこともできるんですね」
説明しよう。
彼らの話に登場した「探索者ギルド」とは、探索者たちに、さまざまな
ちなみに、シクヨロが経営する「
以上、説明終わり。
「ここまではいいか? それで、着手金と必要経費なんだが……」
「あー、それなんですけどぉ。あのぅ……私、手持ちがちょっと」
そう言って申し訳なさそうにしているアイシアを前に、シクヨロはふたたびタバコをくわえた。
「まあ、そんなこったろうと思ったよ。あんまり
「えっ、ホントですか?」
「ああ、ただし——」
シクヨロは、アイシアを指差しながら言った。
「
「——まあ、なんとなくそうなるんじゃないかな、とは思ってましたけど」
アイシアは、あきらめたように言った。
「
タバコの煙を吐き出しながら、アイシアを諭すように話すシクヨロだった。
「まあ、うまいこと生還すれば、
「生還できれば、ですよねえ……」
心細そうにシクヨロを見るアイシア。シクヨロは、黙ったままそっと横を向いた。
「それじゃ、ちょっと遅くなったけど……」
そう言ってマルタンが、杖を片手に一歩前に出た。
「あらためて、ぼくの名前は『マルタン・オセロット』。
マルタンは、新たにパーティーに加わったハーフエルフの
「それから、この杖は『ジンジャー』。ぼくの手製なんだ」
そう言うと、マルタンはその長くてゴツすぎる魔法の杖・ジンジャーを振るった。ジンジャーは、電飾や火花や蒸気らしきものを目まぐるしく発しながら、その内部の複雑な
「……あ、そういえばさっきのかわいいネコちゃんって、マルタンさんだったんですね!」
「ネコじゃなくて、
「ホント、かわいかったなぁ〜。ねえ、またネコちゃんに変身してくれません?」
「やだ」
「えー、一回だけでいいですからぁ」
「だめ」
そんなふたりの前に、満を持してその男が立つ。
「そして、このオレが『シクヨロ』。ご承知のとおり、探偵さ」
「探偵さん、なんですよね。でも、そもそもこの
アイシアの素朴な疑問に、シクヨロは答えた。
「いや、探偵っつーのはねえな。だから、オレのジョブは便宜上『
「その
「ん、まあそうだな」
「……あのぉ、こういうこと言うと大変失礼なんですけど、それでホントに大丈夫なんですか?」
「あー大丈夫大丈夫。ほらオレ、頭脳労働担当だから」
「はあ」
心配と不安の色を隠せないアイシアに、胸を張るシクヨロ。この男は、一見すると軽薄そうだが、なにかを内に秘めているような雰囲気もある。それがなんなのかは、まだわからないが。
「それによ、このマルタンは
「よ、四十七なんですか? その
マルタンのレベルを聞いて、アイシアは思わず称賛の声を上げた。
「それなら、あの『第十三迷宮』でもなんとかなるかもしれませんね!」
小躍りして盛り上がるアイシアには聞こえない声で、マルタンとシクヨロは小さくつぶやきあった。
「どっちかと言うと、問題はこの
「ま、オレが抑えればなんとかなるだろ。——さて、それじゃあそろそろ出かけるか」
シクヨロの言葉に、アイシアが振り向いた。
「あ、迷宮ですか?」
「いや」
シクヨロは、ネクタイを手早く締め、黒いシルクの
「探索者ギルドだ」
続く
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