第四十話 最大サイキョーの敵、ここに現る!
いま、シクヨロたち四人の探索者のまえでは、見上げるほどの身の丈を持つモンスターが、刺すような眼光でこちらを
鋼鉄にも似た漆黒の
「これ、ドラゴンですよね……?」
アイシアが、だれにともなく聞いた。だが、だれに問われても答えられるはずなどなかった。なぜなら——
この『ドラゴンファンタジスタ2』に、ドラゴンは存在しない。
それが、この
それなのに彼ら探索者たちは、これがまぎれもなく「ドラゴン」であることを確信していた。まるで、生まれる前からあらかじめその知識を刷り込まれていて、いまここでその記憶が呼び起こされたような……そんな感覚だった。
「ようこそ、探索者の諸君。我の名は、邪鬼竜。オウガドラゴンと呼ぶがよい」
「
そのドラゴンが名乗った名前を、シクヨロは
「ここは、いったいどこなんだ?」
シクヨロは、
「ここは第十三迷宮の最下層のさらに下。地下十四階、といったところか。無論、いままでここに足を踏み入れた探索者など、だれもおらぬ」
「迷宮の地下十四階に、
その言葉を聞いたマルタンは、信じられないといった感じでかぶりを振った。
「あのう、魔法の護符は……。『マカラカラムの
アイシアは、いきなり核心を突いた質問をぶつけてきた。早い、早いよ駄エルフちゃん! もうちょっとお話をうかがってから……と、シクヨロの口から出かかったが、正直これが吉と出るか凶と出るかは、もはや神のみぞ知るところである。
「それが、そなたらの望むものか。ならば——」
「我を倒して、手に入れるがよい!」
うわっちゃー、凶だったわ。シクヨロは口元を歪めた。
「正々堂々、勝負するというのだな。いいだろう、
そう言って、ヴェルチが一歩前に出た。彼女は王国魔獣騎士団『
「我が名は、ヴェルチ・ヴェルサーチ! 魔獣騎士道にかけて、キサマを成敗するッ!」
その口上を聞いて、背後にいたシクヨロが思わず軽く吹き出した。
「……おまえのフルネーム、ヴェルチ・ヴェルサーチだったの? へー、知らなかった」
「あのなあ。
振り向いてそう言った、まさにその直後だった。シクヨロの視界から、ヴェルチが消えた。
「ヴェルチ?」
シクヨロにはそのとき、なにが起こったのかわからなかった。だが右の方を向いたとき、ヴェルチが遠くの壁にめりこんでいることに気がついた。
「そんな……。
目の前で起こったあまりの出来事に、マルタンは驚愕した。パワーも、スピードも。これまでのモンスターと比較しても、圧倒的に次元がちがっていた。
「ヴェルチさん!」
アイシアはヴェルチのもとに駆け寄ったが、
「……ぼくがやる」
「行けるか、マルタン」
「マルタンさん……!」
軍帽をかぶり直し、
「…………………………」
レベル四十七の
「ふむ。若いのに、なかなか落ち着いているな。だが——」
「……食らえっ!」
しかし、
「えっ? ……なんで?」
「自らの
「ちがう! ぼくは……」
この光景に、不思議と
「レベルは高いが、若さゆえに
「マルタン……。ちっきしょう!」
シクヨロは、目の前でその動きを止めたマルタンの姿に触れ、怒りをあらわにした。
「さあ、つぎはだれが相手だ? そこのエルフの女剣士か?」
「し、シクヨロさんっ!」
「こっちだ、アイシア!」
シクヨロは、アイシアに覆いかぶさるようにして彼女をかばった。
「んむ? ……んぐぐぐっ」
鋭い牙で、二人を確実に仕留めたと思った
「おのれぇ!」
「なあアイシア、ちょっと聞いてくれ」
「えっ? なんですか、シクヨロさん」
シクヨロは、そばに横たわったままのアイシアに短く耳打ちをした。
「——————————。わかったな?」
「そ、そんなぁ! シクヨロさんは……」
「オレのことは気にするな。じゃあ、頼んだぞ」
シクヨロはゆっくりと立ち上がると、土ぼこりで汚れたダークスーツを手で払った。
「おい、
「だぁれだ、おまえは!」
帽子に手をかけると、彼は力強くその名前を言い放った。
「オレの名は、迷宮探偵
続く
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