第二十九話 レベルアップは、妖精さんに聞け!
「それにしても——」
レベリルというその
「いやー、ひさしぶりのお客さんだから、私ホントびっくりしちゃった。あ、もちろんいつもは、もうちょっとちゃんとしてるのよ? だってレベルアップベースといえば、なんてったって迷宮内のオアシス。探索者たちの憩いの場。紳士と淑女の社交場。荒野に咲いた一輪の花。渇きを癒す一服の清涼剤。貴方も私もみーんな大好き麗しの
「はあ」
シクヨロは思わず、アホみたいな返事をした。
「しかも、ここって最難関で知られる『第十三迷宮』じゃない? こう言っちゃなんだけど、そんじょそこらのポッと出の
「なるほど。ポ○ケモンのピ○カチュウみたいなもんですね!」
「おいおい、隠れてねえぞ」
レベリルの長
「あのー、それはさておきレベリルさん」
「レベリル
いつになく丁寧な口調で話しかけてきたマルタン少年に、シクヨロは驚愕の声を上げる。マルタンは手を伸ばし、
「……さっそくなんですけど、ぼくたちのレベルアップ判定、してもらってもいいですか?」
「あーらぁ、ごめんなさいね。迷宮攻略でお忙しいのに、私ったら長々と話しちゃって。ううん、いいの。……じゃあ、どなたから見る?」
レベリルは枕元のガラクタの山の中から、彼女にとってはひと抱えもある大きな
「えーっと、じゃあ、私からいいかな? ヴェルチといいます」
そう言って、まず最初にヴェルチが一歩前に出た。
「ま、凛々しくてお
それにしても、よくしゃべる
「……」
ヴェルチの手の甲の上に、自身も両手を置き、なにやら小さな声で呪文を唱えはじめるレベリル。そうして、しばらく集中していたかと思うと
チャラララッチャッチャッチャーン♪
なんだか、どこかで聴いたことのあるファンファーレが鳴り響いた。
「おめでとう、ヴェルチさん。あなたのレベルはひとつ上がって、三十六になったわ!」
「おおっ、ありがとうございます! いやあ、これはうれしいなあ」
ヴェルチはそう言って、素直に喜びを表した。これまでに、三体の
「あっ! つぎ私! いいですか?
そう言ってアイシアが、鼻息荒く手を挙げた。
「はいはい、じゃあ
わちゃわちゃしながら、ようやくレベルアップ判定に入るレベリルとアイシア。すると今度は
チャラララッチャッチャッチャーン♪
チャラララッチャッチャッチャーン♪
なんと、例のファンファーレがつづけて二回も鳴ったのである。
「すごいわ、アイシアさん! 今回はふたつ上がって、レベル二十四よ!」
「ホントですか? やったー!」
いまのところ、
「よかったね、アイシア。じゃあつぎはぼく、お願いしてもいいですか? マルタン・オセロットです」
つづいて、マルタンがレベリルに声をかけた。明るくハキハキとしていて、いつもの生意気でこまっしゃくれた様子は
「ふふ、ずいぶんかわいらしい
レベリルは、これまでと同様に
「マルタンくん、ごめんなさいね。あなたはもうすでに十分にレベルが高いから、今回のレベルアップはないみたい」
「あー、そっかあ……。うーん。ま、しょうがないですね」
マルタンは首を左右に振りながら、両手をひろげてそう言った。だがその言葉ほどは、残念とは思っていないようだ。一般的にレベルというものは、高くなるほどに上がりにくくなるものなのである。
「じゃあ最後は……」
みんなの視線が、一点に集まった。もちろん、「彼」の方にである。
「いちおう、シクヨロもいっとく?」
「いちおうってなんだよ。やるに決まってんだろ」
憐れむようなマルタンの言葉に、シクヨロは憤慨しながら言った。
「あらダンディーな男前さん、お名前は? ふーん、シクヨロさんっていうの。なんだか変わったお名前ね。現在のレベルは、三? ホントにぃ? あなた、これまでよく死ななかったわねぇ」
放っといてくれ、と言わんばかりにシクヨロは、無造作に右手を
「まあ、なんてったってオレは
目を閉じて、一心にシクヨロのレベルを測っていたレベリルは、そのままの姿勢でこう言った。
「えーっと、あなたのレベルは……二ね」
「下がってんじゃねえかよ!」
「やめろ、シクヨロっ!」
「
思ってもみない判定結果に、レベリルに掴みかからんとするシクヨロ。ヴェルチとマルタンが、それをあわてて止めに入った。
「それにしても、オレだけレベル下がるのっておかしいだろ!」
「もしかして、前回のレベル判定の人が激
「んぁー、納得いかねえ」
続く
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