第三十八話 どーするどーなる? 試練のゆくえ
「十、九、八、七……」
回転寿司店「ツカン
「んん〜ん! このカッパ巻、キュウリがシャキシャキしてて、いい歯ごたえですぅ」
アイシアは、ちょうど一〇〇皿目となる、最後のカッパ巻を割り箸でつまみ上げると、これまでとまったく変わらない動きで口へと運んでいった。
「……三、二、一、ゼロっ! はい、そこまでっ! しゅーりょーーーー!」
大食いチャレンジ開始からちょうど一〇〇分。制限時間である一時間四十分が経過した。板前の親父の掛け声とともに、勝負の行方を注目していた周囲の客たちからは、大きな拍手と歓声がわき起こった。
「ふう……。ごちそうさまでした」
そう言ってアイシアは合掌すると、手にしていた割り箸をそっと皿の上に乗せ、静かに湯飲みのお茶をすすった。彼女の前には、
「いやあ、姉ちゃ……じゃなかった兄ちゃん。あんたの食いっぷりは大したもんだ! お見それした!」
そう言って、板前の親父はかぶっていた白い和帽子を脱いだ。最後までペースを落とすことなく、ひとつひとつの寿司を丁寧に味わい、
「こちらこそ、どのお寿司もとっても
アイシアはそう言って、板前の店員たちに頭を下げた。
「うれしいこと言ってくれるじゃあねえか! それじゃこれ、賞金の一〇〇
板前の親父はアイシアに、豪華な祝い
「やったー! ありがとうございます!」
「と言いたいとこなんだが……」
「?」
親父は、手にしていた封筒から手を離さないまま、アイシアの隣の席に目をやった。そこではヴェルチが口から泡を吹き、イスにそり返ったまま白目をむいて気絶していた。
「え? ……ええーっ、ヴェルチさん!」
「あー、お連れさんがリタイアだな。
板前の親父はそう言いながら、封筒をアイシアの両手からむしり取った。
「そ、そんなあーーーー!」
アイシアとヴェルチ、二人の獲得金額は
翌日の朝、「
「この二人、なんでこんなとこで寝てんの?」
「さあてな。おい、ヴェルチ! アイシア!」
シクヨロに揺り起こされ、二人はようやく目を覚ました。
「んん……。あー、よく寝た。どこだここ?」
「ああシクヨロさん、おはようございます!」
眠りから覚めた二人にすこし安心したシクヨロは、背負っていた荷物の中から水筒を取り出し、アイシアに手渡しながら言った。
「なあ、お前さんたち。いったいここでなにしてたんだ?」
「私たち、この回転寿司のお店で、時間内に完食すると賞金が出るイベントに挑戦してたんです。シクヨロさんたちは?」
「まあオレたちは、こっちの喫茶店でバイトを少々な」
「ていうかぼくら、お互いにこんな近くにいたんだね」
マルタンは、後ろを振り返りながらつぶやいた。「
「で?
「あのう、いちおう私は、お寿司をぜんぶ食べきったんですけど……」
アイシアはそう答えながら、ヴェルチの方を見た。すると三人は、「こいつ、やっちまったなー!」って感じの表情をした。
「しょ、しょうがないだろ! だってここの寿司、ネタが乗ってる
「ヴェルチさんが食べた分と残した分の支払いで、けっきょく賞金を取り上げられちゃって」
「んー、まあ、しょうがねえやな」
「それで、お前たちの方はどうだったんだ? この喫茶店で稼げたのか?」
ヴェルチの言葉に思わず顔を見合わせると、含み笑いを浮かべるシクヨロとマルタン。二人は先ほどの、
「まあとにかく、この一日しっかり最後まで勤めてくれて、よかったわ。ありがとう」
オーナーのカミィラは、シクヨロとマルタンを前にして言った。
「そりゃあ、ステージのラストはちょっとアレだったけど、あなたたちが悪かったわけじゃないしね。だからはい、これ」
カミィラは、二人に給料袋を手渡した。
「二〇〇
「そりゃすまないな、カミィラ。こっちも、なかなか楽しかったぜ」
袋の中身を確認すると、シクヨロはあらためて礼を言った。
「えーっと、それじゃカミィラさん。ぼくからも刺激をもうひとつ」
そう言うと、マルタンはカミィラの耳に口を近づけてささやいた。
「ぼくたち、ホントは男なんだ」
「……えっ? どういうこと?」
キョトンとした表情のカミィラに笑顔で別れを告げ、シクヨロとマルタンは店を後にした。
その後、カミィラは「
「喜べ、二人とも」
シクヨロは、懐から四枚の一〇〇
「四〇〇
それを見て、アイシアとヴェルチは安堵と歓喜の声を上げる。そこへ、オウムのイーゴーが大きな翼を羽ばたかせながらやってきた。イーゴーはシクヨロの指から紙幣をかすめ取ると、
「オメデトウ ミナサン。ブジ
続く
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