第2話
俺の許嫁と言う事になっている清水瑠夏はあっという間に一年生の間で人気者になった。
そりゃそうだろう。可愛くて、スタイルもいい。更には人当たりも良いなんて……。まさに完璧と言われるほどだ。逆に人気にならない方がおかしいと思えるくらいだ。
そんな許嫁の瑠夏と俺は、学校では許嫁の事は誰にも言っておらず、ただ席が隣なだけの関係となっている。だから、みんな俺の事は気にせずに隣にいる瑠夏に話しかけ続ける。
そのままでいいのだろうか?
少なくても、瑠夏は困っていないようだが、なんでか俺がもやもやする。
俺はどうすればいいんだろうな……。
***
昼休みになった。今日も瑠夏と食べてやりたいが、今日こそは流星と食べる約束がある。
俺は瑠夏に「悪い、今日は一緒に食えない」とだけ言い、流星がいるクラスに向かった。
「よっ。来てやったぜ。」
「おう。まぁ、別に来なくてもいいがな。」
「あぁ?せっかく来てやったんだから感謝しろや。」
「ああはいはい。ありがとうございますー。」
流星の口から出る感謝の言葉には、全くといっていいほど、感情がこもっていなかった。いわゆる棒読みというやつだ。
その様子に俺は苛立ちを覚えたが、こいつにキレるのは馬鹿がする事だ。俺が大人になれば解決する。
「………まぁいい。食べるか。」
弁当の蓋を開けて箸を持ち、次々に料理を口に入れて行く。
「お前の今日の弁当はうまそうだな。なんかくれよ。」
「嫌だね。ってかお前、弁当結構大きいんだからそれで満足しろよな。」
「この大きさじゃ満足できねぇ体になってしまったんだよ。だからさぁ。」
「気持ち悪い言い方すんな。」
流星は何故か「へっ!」と鼻で笑い、俺の弁当からおかずを一つ盗み取る。
「あっ、おい!」
「んじゃいただきまーす。」
おかずを下から食らいつき、全て口の中に入れてしまった。俺のおかずが………。
「………ん!?めっちゃ美味いぞ!!前から美味かったけど、今日は更に美味いぞ!?」
驚きの表情をしながら固まっている流星を見て、俺は急いで弁当のおかずを全て口の中に入れて行く。
「あっ、お前!俺にもう少しくれよ!!」
「ふぁっ!ぃやだぇ。ぉむぇに食ゎれるなら………、先に全部入れておくのさ。」
「食べながら喋るんじゃねぇよ。汚ねぇじゃねーか!」
「ふん!」
勝ち誇った顔で、流星を見てやる。ふん。あいつ、凄く悔しそうな顔をしてやがる。ざまぁねぇな。
「………光真。お前くそ性格悪いな。」
……性格が悪い?
んなわけが無い。俺は主人公を目指している男だぞ?性格が悪いわけがないじゃないか。
「……ふん。何言ってる?俺は最高に良い奴だろうが。」
「そうやって自覚してねぇところが更に悪質だな……。」
流星は何か言っているようだが、俺には何も聞こえない。いったいこいつは何を言っているのだろうな?
流星はため息を吐き、自分のおかずを食べる。
「そういや、お前達のクラスに来た転校生、めっちゃ可愛いな。」
「あぁ……。瑠夏の事か。」
「瑠夏ぁ!?お前、いきなり下の名前で読んでるのかよ!!クソが!死ね!!」
「いやいや、そこまでキレる事ねぇだろ……。」
その瞬間。俺の言葉を聞いた流星は鬼の形相で俺を睨みつけてきた。
「キレるに……決まってんだろ!!」
「は、はぁ?」
「おまっ!あの子、めちゃくちゃ可愛いんだぞ!スタイル良いし人柄も良さそうだし!………そういえば、お前、清水さんの隣の席だろ?」
「そうだけど、それがなんだよ?」
「ふっざんけんなよ!?めちゃくちゃ羨ましいじゃねぇかチクショウ!!」
流星の中に溜まっていた怒りが爆発したらしく、今はとても情緒が不安定になっていた。
怒っていると思ったら突然泣き始める。
ここまで来ると気持ち悪くなってきたな。
……わかってはいたけど、瑠夏の奴、他クラスでもこんなに人気だったのか。この調子だと、他学年の人気も掴みそうな勢いだよな。
自分の許嫁が凄いと改めて認識した俺は苦笑し、弁当をバッグに入れる。
それにしても、瑠夏が俺の許嫁だって事を今こいつに話したら、俺を本気で殺しに来そうだな……。
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