第3話

 俺は瑠夏と遊びに行く事になり、今は瑠夏の準備が終えるのを待っている最中だ。


 瑠夏と遊びに行くのか。


「………ん?」


 女の子と遊びに行く?女の子と出かける………。


「デート!?」


 おいおい!まだ主人公の器じゃないのに、もうデートイベントかよ!いや、このイベント作ったの俺だけど!!


 今更だが緊張してきた。

 やべー。上手く喋れるだろうか?上手くリード出来るだろうか?不安になってきた……!


「お待たせ。光真君!」


 そしてとうとう彼女が姿を現す。


「どう?」

「お、おう。似合ってるんじゃないか?」


 白いワンピースを着て、麦わら帽子をかぶった瑠夏だ。夏を感じる組み合わせだな。


「よ、よし。行くか。」

「うん!」


 そして俺と瑠夏は家から一歩踏み出した。




 ***


 どこか遊びに行くと言ったはいいが、どこに行くか決めておらず、家から出た瞬間、俺はとても遅い質問をした。


「どこに行きたい?」と言うと瑠夏は「光真君と一緒ならどこでもいい」と可愛い事を言ってたから、俺は初めてのデートとして無難なショピングモールのネオンモールに来ていた。


「まずはどこに行くかだよな。」

「なら、まずは服を見に行きたいな。」

「おけ。なら見に行くか。」


 俺と瑠夏はすぐ隣で歩く。これって、他人から見たら恋人だと思うのかな?

 そう思うなら残念だな。なんせ、俺の隣にいる女は恋人より上の段階。許嫁なのだよ!


 謎の自慢をしているうちに服が売っているDUという店に入る。


「あっ、これ光真君に似合うかも!」


 そう言い、瑠夏はチェック柄のシャツを俺の前に出す。おそらく瑠夏の視点から見ると、俺と服を重ねているのだろう。


「んー。似合うか?」

「うん。似合うよ!」

「そう?えっと、値段は800円か。安いし、買うか。」


 店に入る時に持ち始めたカゴに入れて、俺達はもう少し見てまわる。


 その間、何度か俺と瑠夏に合いそうな服を見つけ、じゃんじゃんカゴに入れた後、レジに行き、とある事を思い出す。


「やばい。金足りるか?」


 今の俺の所持金は8000円。これだけあれば足りるだろうと考えてたが、俺のその考えは甘かったのかもしれない。


 レジに合計の値段が表示される。


「5、5650円……。よ、よかった。足りる。」


 少し安心し、俺は店員に5650円丁度渡す。


 レシートを受け取ると、俺と瑠夏は店を後にする。



「ちょ、ちょっと椅子に座らないか?」

「いいよ。」


 俺と瑠夏は椅子に座り、俺は財布の中を確かめる。


「もう2000円ぐらいしか残ってない………。バイトしておけばよかった。」

「お金、もう無いの?」


 瑠夏は俺の財布を覗き見る。


「無くはないけど、2000円しか無い。ごめん。俺から誘っておいてこんだけしかないって、情けないな。」

「ううん。いいよ。それなら私が払うから。だから、次はゲームセンターに行こっ!」


 瑠夏は微笑み、俺の手を掴んで、ゲームセンターに向かって歩いていく。


「ちょ、ちょっ待て!一人で歩ける!」

「いいの、いいの。」


 いや、俺が良くないんだわ。みんなに見られて凄く恥ずかしいの。俺。


 俺は瑠夏の手を振り解こうとしたが、思った以上力が強く引き剥がさなかった。


 そしてそのまま連行されるような形でゲームセンターのコーナーに着き、ようやく瑠夏は俺の手を離してくれた。


「どこから遊ぶ?」

「さぁ?瑠夏が決めていいよ。」

「じゃあね。プリクラ行こうよ。」

「ぷ、プリクラね。いいよ。行こうか。」


 プリクラ。今の俺にはちょっと早い気もするが、まぁいい。やってやるよ。最高の写真を撮ってやる。


 中に入り、操作は瑠夏に任せて、何回か写真を撮る。

 そして最後の一枚となった時、突然、瑠夏が俺の腕に抱きついてきた。


「えっ!?」


 俺が声を上げた瞬間、シャッター音が鳴り、撮影は終了する。


「ちょ!何やってんだよ!」

「えへへ。」


 俺が怒鳴ると、瑠夏は照れているのか頬を赤くしながら笑う。


 えっ、何この子。めっちゃ可愛いんだが。


 瑠夏は俺の腕を離し、プリクラの操作に移る。……もう少し、胸の感触を味わいたかったな。


 名残惜しさを感じながら、瑠夏が写真に描いているのを覗き見る。


「–––––やっぱ、変な顔してるし、後ハートは恥ずかしいからやめてくれ。」


 ハートの中に俺と瑠夏が入っていたのだ。それも全ての写真に。俺がもし他人でこの写真見たら確実にリア充死ねって、心の中で叫んでるぞ。


 そして俺の要望は届かず、写真は完成する。


「恥ずいな。これは……。」


 完成した写真をショルダーバッグに入れる。


「次はどうする?」

「それじゃあ。あの中に入ろう!」

「ゾンビ系のシューティングゲームか。任せろ。それは得意だからな。」


 瑠夏が指さしたのは、小さな個室の中に入り、座って遊ぶ、ガンシューティングゲームだった。


 さっそく中へ入り、俺と瑠夏は200円を入れる。なぜこのゲームは100円ではなく、200円なのか毎回疑問に思う。まぁ面白いから別にいいが。


 さっそく、ステージ選択から始まった。


「おい瑠夏。どこ行きたい?」

「私自信ないからやっぱりここかな。」


 そう言い、瑠夏は最初のステージに照準を合わせて、トリガーを押す。


 そしてゲームが始まり、自動で進んで行く。


 曲がり角を曲がった瞬間。ゾンビと出会す。


「うお!びっくりした。」


 瑠夏ではなく俺が驚いてしまった。ガンシューティングは得意だが、このゲームは久しぶりにやったのだ。どこから出てくるのかすっかり忘れていた。


 気を取り直し、俺と瑠夏は照準をゾンビに向け、撃ちまくる。


 そして、気づいたのは、瑠夏が意外と上手いのだ。彼女なら立派なサバイバーになれるだろう。


 そして次々進み、あっという間にボス戦となった。

 情けないことに、俺は死にかけになっていた。何が得意だ。ちょっと前の俺を殴りたい。


「あっ!ごめん、やられたわ。」


 ボスの一撃を喰らい。とうとう俺の体力が尽きてしまう。残りはまだまだ余裕の瑠夏だけだ。


「大丈夫。私に任せて!」


 ねぇ。君さっき全然自信無いって言ってたよね?なのになんなの?めちゃくちゃ上手いじゃん。


 簡単にボスは倒され、ゲームはクリアした。


「ふ、ふーん。やるじゃん。」


 クールぶりながら、俺は瑠夏を褒める。すると瑠夏も笑顔になり、俺に抱きつく。


「おい!だから抱きつくなって!」

「みんなから見えないからいいじゃん。」


 えっ、あっ、うん。

 これはまずい。何がとは言わないが、俺の一部が元気になってきた。


 俺は瑠夏に気付かれる前に突き放し、個室から出る。


 危ねぇ。こんなんで元気になるとか……。ラブコメの主人公さんよ。みんなすごいな。


 主人公達を尊敬していると瑠夏も出てきて、俺の隣に立つ。


「次はどこ行く?」


 瑠夏は聞いてくるが、これ以上瑠夏といちゃいちゃしてたら、俺は尊死しかねん。


「め、飯行かないか?」

「わかった!どこで食べようか?」

「それじゃあな––––––。」


 この後、俺達はフードコートで飯を食い、さっさと帰る事にした。

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