第4話

 家に帰って来る頃にはすでに5時を迎えていた。


 俺と瑠夏はリビングにあるソファーに座り、話をする。


「どうする?さっき飯食ったけど、晩飯作るか?」


 俺は正直どっちでもいいのだが、瑠夏が食いたいなら、今回はこの俺が料理を作ってやらんでもない。


「うーん。今日はもういいかな。光真君はどうなの?」

「瑠夏がいらないなら俺もいらないかな。」


 そう言った後、俺はソファーから立ち上がり、リビングから出ようとする。


「どこ行くの?」

「部屋だよ。特にやる事ないからラノベ読む。」


 俺はリビングから出て自分の部屋に入る。


 ラノベを読むのは俺の至高の時間の一つだ。主にラブコメな。登場人物の生き様を見るのが凄い好きなんだ。


「今日はこれだな。」


 手に取ったのは『俺のラブコメはいつ来るんだ!?』と言うラノベだ。


 –––––主人公の少年は優しいが全くモテず、それに加え、さまざまな登場人物達が主人公に恋の手伝いを頼む。

 嫌々ながらも主人公はそれを全て引き受け、恋人になれるように手伝った。

 その後、視点はヒロインへと移り、そのヒロインは優しい主人公に好意を抱いていた。

 ヒロインは主人公に恋を手伝ってもらった人達に頼むのだ。

『彼と近づけるよう、手伝ってほしい」と。


 この物語の主人公は最終的には報われるのだ。主人公の好きな人はヒロインで、物語の終盤では二人は知らず知らずのうちに両思いになる。

 最後は付き合ったのかはわからないが、今まで手伝ってもらった人達はこの後、ヒロインと主人公をくっ付ける為、手伝うのだろう。

 主人公が優しかったから最後はみんなもそれに応えてくれたのだ。


 その主人公の姿に憧れて俺は優しくて良い奴になろうと思ったんだ。

 そうして、俺もいずれ現実でラブコメを堪能してやろうと思っていたのだが……。


 俺の前に清水瑠夏と言うイレギュラーが現れたのだ。


 過去に俺と会っており、既にデレデレ。更には許嫁属性を持っており、同居生活とまできているではないか。いろんな意味で強すぎる。


 ……別に悪くは無いんだけど、急な出来事だから困るんだよな。


 親も親で何でこんな大切な事をしっかり教えてくれなかったんだ………。


 ため息が溢れる。ほんと、何でしっかり教えてくれなかったんだ……。


 俺はベッドに寝転がり、ラノベを読み始める。それから時間はあっという間に過ぎていった。



 ***


 ラノベを読み終える頃には既に8時を越えており、俺は飲み物を飲みにリビングへ向かう。


「あっ、光真君。」


 瑠夏はソファーに座りながらテレビを見ていた。なんか、凄い馴染んでるな。


 俺はなんとなく苦笑し、冷蔵庫を開け、お茶を取り出す。

 それをコップに入れた後、一気に飲み干す。


「光真君も見る?」


 瑠夏は俺の方へと向き、ソファーを少しあける。


 だが、俺は朝から荷物を運び、遊びに行き、更にはついさっきラノベを読み終えて凄く眠かった。


「いや、もう寝るよ。今日はもう疲れた。」


 それを聞いた瑠夏は少し残念そうな顔をしたがすぐにもとの表情に戻し、


「そっか。おやすみー。」

「お、おう。おやすみ。」


 俺はリビングから出て自分の部屋に入る。


 正直意外だった。瑠夏なら、もっとべたべたにくっついて甘えてくるはずなのにな。ま、寝れるしいっか!


 俺はベッドにダイブし、目を閉じた。

 そこから、眠りにつくのには時間はかからなかった。

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