第3話

「あ〜食った食ったー。」


 チーズハンバーグセットを全て食べ終わり、九条は満足そうな顔で腹をさする。


「お前本当に女子高生か?」

「そーだよ。まだなりたてほやほやの1年生だよ。」

「出来たてほやほやみたいに言うな。」


 ははっ、と軽く笑った後、水が入ったコップを取り、一気に飲み干す。


「あぁ。食った後の水は至高だな〜。」

「コウコウはおじさんみたい。」

「いやいや、俺はまだなりたてほやほやの高校1年生だぞ。」


 俺はおどけながらそう言うと九条が「あー。」と俺を指さす。


「私のネタパクらないでよー。」

「めんご、めんご。」


 軽い口調で謝り、俺は席を立ち、ドリンクバーから水を入れる。


「––––そういえば、コウコウって清水さんの事どう思う?」


 席に座ると九条が何か思い出したかのように聞いてきた。


「清水?あー……。どう思うって、例えば?」

「恋愛対象として見てるとか。」

「れっ……!別に恋愛対象としては見てねぇよ。」


 ……今はまだそういう風に見てねぇけど、一応そいつ、俺の許嫁って事になってるんだよなぁー。


「まぁ、恋愛対象としては見てねぇけど、毎日毎日いろんな奴に絡まれてしんどそうだなとは思うな。」

「あー確かに。清水さん。平気な顔でしてるけど、絶対無理してるよね。」

「そうだよな……。」

「私、みんなに言ってやろうかな。」

「–––––それはやめとけ。」

「えっ、なんで?」

「まだ、あいつ、頑張ってるんだ。それに、何かあったら言えよって言ってあるし、あいつが頼ってくるまで待ってやろうぜ。」

「……やけに清水さんに親身だね。」

「えっ、あっ……。」


 しまった。つい言いすぎた。九条の奴、ちょっと怪しんでるかな?


「あー、席隣だからさ。困ったら言えよって言っておいたんだよ。だからさ……ね?」


 やべえ。全然言い訳出来てねぇ。いっそ、こいつにだけ許嫁の件をバラすか?いや、でも、でもなぁ……。


「ふーん。そっか。もし、清水さんが頼ってきたら、私にも言ってね。私も頑張るから!」

「あ、あぁ。頼む。」


 よ、よかった。なんとかごまかせた……。


「––––そろそろ、店から出るか。」

「うん。そーだね。」


 俺と九条は席を立ち、レジへ行く。

 とりあえず俺が全部払った後、店を出て、九条から自分の分の値段を貰う。


「どうする?もうそろそろ帰るか?」

「うん。そうだね。眠くなって来たし、帰って速攻で寝るよ。」

「風呂は入れよな。」

「……変態。」

「何で!?」

「女の子に風呂に入れって……。私の裸、想像したでしょ?」

「してねぇよ!?いや、でも、確かに俺もデリカシーが無かったな。ごめん。」

「わかればいい。」


 俺は女に何て事を言ってしまったんだ。これからはデリカシーの無い発言には気を付けないとな……。


 俺はため息を吐いた後、1階に降り、ネオンの入り口まで歩く。


「あっ、そういえば私の家この辺りだから、ここで解散だね。」

「へぇー。俺は一回学校の最寄りに戻らないといけないし……。それじゃあまたな。」

「うん。また明日。」


 手を振る九条を見た後、俺は駅へ歩いた。

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