第5話
「ん、うぅんん。」
ベッドの横から爆音が響く。
目が覚めた俺は目覚まし時計の音を止め、体を起こす。
昨日のあの後、俺は風呂に入った後、すぐ寝たんだっけ。
俺はあくびをしながら、日課のストレッチをやり、リビングに向かう。
「おはよう。」
「あっ、おはよう。光真君。」
瑠夏を見た時、昨日のあのバスタオル姿がフラッシュバックする。いかんいかん。あれを思い出すな。思い出したらまた元気になってしまう。
首をぶんぶん振った後、俺は椅子に座り、既に出来ていた朝食を食べ始める。
「あぁ〜学校行くめんどくせぇ。」
食事中にそんな事を口にすると瑠夏がそれに反応し、
「それじゃあ休む?」
「え、いや、休まないよ。成績落ちるしな。」
「そっか。」
なんだったんだ、今のは。言い方が母さんと似てたぞ。
「–––––ごちそうさま。」
食事を終え、俺は自分の部屋に向かい、着替えを済ませた後、洗面所に向かい、軽く髪を整える。
「よし、こんな感じでいいかな。」
なんとなく決めポーズして、最高に決まっている自分を鏡で見ていると、鏡の隅っこに瑠夏が映った。
「あっ!いや、これは……っ!!」
「かっこいいよ。光真君。」
「えっ?あぁ。ありがとう。」
えっ、何これめっちゃ恥ずかしいんですけど。これならまだ夢に罵倒されてる方が気持ち的にまだマシだわ。
俺はため息を吐いた後、歯磨きを済ませ、バッグを背負う。
「瑠夏は後から行くのか?」
「うん。光真君は流星君と行くんでしょ?」
「あぁ。まぁな。それじゃあ先行ってくる。」
「いってらっしゃいー。」
そしていつものコンビニで流星と合流して学校へ向かうつもりだったが、今日は違った。
「うぃーす。」
流星といたのは姉の沙耶香だった。ほんと勘弁してくれよ。俺はこの人が苦手なんだよ……。
「うぃーす。」
「………。」
「うぃーす!!」
「ゔっ!?うぃ、うぃーす?」
こ、この人、俺が2回無視したからって、腹パンしてきやがった……っ!?
俺は悶えながらも返事をし、谷先輩はようやく満足した顔になった。
「な、何で谷先輩が一緒に?」
「えーだって光真と遊びたかったからー。」
「ひっ……っ!」
この人の俺に対する遊びは調教だ。あれを受けたら恐怖を植え付けられてしまう。
「それに昨日遊びに行くって言ったじゃん。」
「次の日に早速来るとは思わないですよ……。」
俺は涙目になり、流星に助けを求めたが、あいつはため息を吐きながら首を横に振った。流星の奴、まだ姉に頭が上がらないのかよ。
「て事で光真–––––。」
「あーー!!そういえば今日用事があるんだった!!すいません!そういう事なんで失礼しますね!!」
俺は谷先輩に捕まるより先に走り出した。学校前に調教されたら俺がどうなるかわからん!だからあの人に捕まるわけにはいかん!!
***
「あああぁぁ……っ!!」
なんとか谷先輩から逃げ切り、教室にたどり着いた俺だが、あまりに走り過ぎて死にそうだ。
「………走ったせいで……早く着いてしまった……。」
今の時間は8時だった。いつもならそれより10分程度遅いのだが。
とりあえず……疲れたし寝るか。
席に座り、俺は机に顔を伏せて目を閉じる。
今日九条は朝練が無い。だから俺の眠りを邪魔する奴はいない。あぁ。最高だね!
それから20分程の時間が経っただろうか。周りから声が聞こえてくる。生徒達が集まってきているのだろう。
そういえばもう瑠夏は来ているだろうか?
俺は顔を上げ、隣の席を見る。
「うおっ。びっくりした……。」
隣の席は瑠夏に興味ある取り巻き達に包囲されていたのだ。みんながこんなにいるって事はもう瑠夏は来たって事か。
「どこら辺に住んでるの?」
「ねぇ、連絡先交換しようよ。」
「お昼はどこで食べてるの?」
うわ。意識し始めたら途端にうるさく感じてきた。こいつら、寝ていた俺をもう少し気遣ってくれても良くないか?
そんな俺の思いを聞いてくれたのか、ホームルーム開始のチャイムが鳴り、みんなは自分の席へ戻って行く。
「おい、瑠夏。もう少し静かにしてくれって言っておいてくれ。」
「う、うん。わかった。」
「……どうした?なんか元気なさそうだけど。」
「ううん。大丈夫。」
「そうか……。」
本人が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。俺が気にしすぎなだけか。
–––––何で俺がこんなに瑠夏に気を使ってるんだ?瑠夏が俺の許嫁だからか?
まぁ、そんな事気にする必要ないか。
俺は一限目の準備をしながら先生の話を聞いた。
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