第3話
「緊張するね。」
光真君と朱音が入って2分が経過し、ようやく私達も入る事になった。
「まぁまぁ。俺は何度も入ってるし、安心してくれ!!」
胸を叩き、自分をアピールする。何度も入ってるならちょっと安心かも。
そして、私達も入り口に足を踏み入れ、暗い道をまっすぐ歩き始める。
そして、曲り角を曲がると、流星君が「あれっ?」と小さな声を漏らした。
「どうしたの?」
「いつもならここで血だらけの女の人が驚かしてくるはずなんだけどな………。」
「えっ………?」
私を驚かす為に冗談を言っているのかと思ったが、流星君の顔を見るとどうやら本当の事のようだった。
「うーん。」と声を上げながら歩く流星君を先頭に暗い道を歩いていると、前に置いてあったロッカーからガサッと音がした。
「えっ……?」
「ひっ––––!?」
流星が高い声を出して驚く。
––––もしかして、仕掛けが変わってるかな?
「こ、こんな仕掛け前来た時は無かったぞ!?」
やっぱり仕掛けが変わってるんだ。
という事は流星君も初見って事になる。言い方が悪いかもしれないけど、なんだか頼りなくなった。
ドサッ。
またどこかで音がした。
流星君はどんどん震え始めていく。なんでお化け屋敷に行こうなんて言おうと思ったんだろう。
そう思いながらも、恐る恐る歩き続けると、血塗れの窓ガラスがあるのに気づいた。
「あぁ–––––。」
窓ガラスの奥に血だらけのの女いるのに気づいてしまった。
「ひっ––––––!?」
「うぎゃあああああぁぁぁぁーーー!!!」
思わず叫びそうになったけど、流星君が先に体を跳ねさせて叫んだおかげで、叫ばずに済んだ。
でも、流星君は叫ぶだけじゃ止まらず、そのまま奥へ全速力で走って行った。
「あっ、待って–––––。」
言い終わる頃には既に流星君は消えており、私は一人になってしまった。
「ど、どうしよう……。」
こういう暗い場所。一人でいるのすごく苦手なんだけどな………。
「怖いなぁ–––––。」
そう呟き、前に踏み出せなくなり床に座り込む。
手で顔を囲い、数分が経過したような気がする。
暗い道の中。たった一人で座り込み、孤独という感情が心を蝕んでいく。
「………怖いよぉ。光真君。」
「はぁ、はぁ……。呼んだか?瑠夏。」
私の大好きな人の声が、息を切らしながら、私の名前を呼ぶ。
「–––––光真、君。」
「あぁ。待たせたな。」
山本光真君は疲れを感じさせない素敵な笑みを浮かべた。
***
九条と一緒に屋敷を出ると、そこには慌てた様子の流星が立っていた。
「あっ、光真!」
「おい流星!なんで瑠夏を置いて行ったんだよ。」
「ご、ごめん。仕掛けが変わってるって知らなくて、怖くなって走っちゃった。」
「はぁ……。瑠夏なんて、仕掛けも知らないし、屋敷も始めて入ってるんだからな?」
俺はため息を吐き、出口に一歩踏み入れる。
「こ、光真?何するんだ?」
「瑠夏を見つけるんだよ。あいつが怖いの平気だったらいいけど、もし、苦手だったら、不安でいっぱいだろうしな。」
俺はそう言い残し、中へ入ろうとしたが、まだ言ってない事があった。
「瑠夏が戻ったら謝っとけよ。」
そう言って俺は全速力で走り、座り込んでいた瑠夏を発見した。
「–––––光真、君。」
「あぁ。待たせたな。」
息を切らしてなかったら最高にかっこいい演出なんだろうけど、なんせ九条とも出口まで走って来たもんだしな。そこは許してほしい。
「瑠夏ってなんでもこなせるとか思ってだけど、怖いは苦手なんだな。」
俺が笑ってそう言うと、瑠夏は顔を赤く染めて、下を向く。
「よし。とりあえず出ようぜ。俺に掴まってくれてていいからな?」
「う、うん。そうする。」
瑠夏はそっと俺の左腕に掴まり、ゆっくり歩き始めた。
俺も瑠夏のペースに合わせて歩きだす。
「なんで来てくれたの?」
「なんでって……。そりゃあ心配したからに決まってるだろ。」
「心配してくれたんだ……。」
心配してくれたって何当たり前の事言ってるんだ?
「当たり前だろ。」
「えっ?」
「瑠夏は俺の許嫁なんだろ?そんな大切な人が暗い場所で一人になったらそりゃ心配するだろ?」
逆に聞きたいけど、同じ状況で心配しない奴がいるのか?もしいるんだったら、許嫁の事をどう思ってるのか聞いてみたい。
二人で歩いているとロッカーからバン!と音が鳴り、血だらけの男が出てきた。
「うおっ!?」
「うっ––––––!」
その瞬間。俺の腕の掴む瑠夏の力が強くなったのを感じた。やっぱり怖いんだな。
「ここ、九条に全力で引きずられたから全然仕掛けがわからないな。」
苦笑しながらそう言い、瑠夏とい一緒に屋敷の仕掛けを乗り越えて行く。
そしてようやく、前の方向から光が見えてきた。
「よし、やっと出口についた。」
「うん………。」
俺達は出口ののれんをくぐり、外に出る。
外にいたのは、反省して体を丸めている流星と、それを睨む九条の二人だった。
「ご、ごめん!瑠夏ちゃん!!」
流星は俺達が出てきたのを見るとすぐに瑠夏に駆け寄り、頭を下げて謝罪する。
「瑠夏ちゃんも怖いだろうに、俺だけびびって逃げて!!ほんっとうにごめん!!」
「–––––顔を上げてよ。流星君。私怒ってないから。」
「それでも俺はっ………!!」
今の瑠夏はそんなに気にしていないらしいけど、流星は自分だけ逃げてしまった罪悪感で押し潰されそうなのだろう。
「なら、そこにアイス売ってるから奢ってやれよ。流星。」
「えっ?」
「うん。買って欲しいな。」
瑠夏は流星に微笑みかける。それを見た流星は一瞬辛そうな顔をしたが、すぐに笑顔になる。
「………おう。わかった!」
いつもの元気な流星に戻り、俺達はアイスが売っている屋台へ向かった。
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