第2話
「よし、入ろっか。」
お化け屋敷に着き、俺は早速入ろうとすると。
「おい、ちょっと待て。」
流星は俺の肩を叩き、笑みを浮かべる。
「……なんだよ。」
「みんな、お化け屋敷は男女のペアになって入ろうぜ。」
「おっ、いいねー。グッとパーしよ!」
「うん。」
「よし、光真。俺達もしようぜ!」
「……わかったよ。」
ため息を吐き、俺はパーを出す。流星はグー。どうやら一回で決まったようだ。
「俺らは終わったけど、そっちはどうだ?」
「うん。私たちも終わったよー。」
「そっか。なら、パーはどっちだ?」
「私だよー。」
九条は元気よく手を上げる。俺と九条。流星と瑠夏か。………流星、めっちゃ喜んでるけど、もし相手が九条だったらどんな反応してたんだ?
「……よし、改めて入るか。」
気を取り直し、俺と九条が先にお化け屋敷に入る事にした。
正直、もう何回も入った事あるからそんなに怖くないんだよなぁ……。
入り口に入り、まっすぐ道を進んだ後、曲がり角に突入する。そこで血だらけの女が脅かしてくる。
「あれっ?」
女がいない。何かトラブルがあって出る事が出来ないのか?
「どうしたの?コウコウ。」
「いや、いつもならここで……。ってか九条はここのお化け屋敷に来た事ないのか?」
「うん。私怖いの苦手だから……。」
「へー。」
意外な事を知った。
九条は怖いのが苦手なのか。いい事聞いたな。いつか、背中を叩いてくる分の復讐をしてやろう。
ぐへへへっと声に漏らしそうになった時、前からガサッと音がした。
「えっ?」
「ど、どうしたの?」
「いや、こんな仕掛け。俺が来た時は無かった。」
「えぇ……?冗談は言わないでよ?」
「いやいや、本当にこんなのなかったんだよ。」
「えっ………。」
俺の言葉を聞いて、九条の顔が徐々に青ざめていくのがわかった。本当に怖いの苦手なんだな。
その時また音がし、九条は怯えた声を漏らし、俺の側に寄る。
「あぁ–––––。」
九条が俺に寄ったその瞬間。壁に付いていた窓の奥から血だらけの女が写った。
「うっ––––!?」
「ひいぃぃぃぃっっ!!?」
悲鳴をあげそうになったが、それより先に九条が悲鳴を上げてくれたおかげで少し落ち着くことが出来た。
九条は俺の腕を掴み、駆け足で進んでいく。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
引きずられながら俺はそう言うが、パニックになっている九条にはどうやら声が届いていないらしく、ひたすら進んでいく。
「ぐっ!!ちょいちょい!!」
俺は足でブレーキをかけ、なんとか九条の暴走を止める。
「お、落ち着いてくれ。」
「あっ……。ごめん。」
ようやく落ち着いたのか、九条は足を止める。引きずられたせいでお尻が痛い……。
「俺を掴んでくれてもいいけど、頼むから引きずるのはやめてくれ。痛くて泣いちゃう。」
おどけながらそう言うと九条は少し冷静になったのか、顔を下に向けて「ごめん」と小さな声で呟く。
「よし。気を取り直して先に–––––––。」
「うぎゃあああああぁぁぁぁーーー!!!」
その時、俺達の後ろから、男の声が聞こえた。その声を聞いて、俺と九条は苦笑する。
「流星の奴。凄い叫んでるな……。」
しかも今だにその叫びは途絶える事なく、どんどん声が近づいて来る。
「うわあああああぁぁぁぁーーー!!!」
そしてとうとう、後ろから流星が姿を現したと思ったら、俺達を見もせず、そのまま走って行った。
「あいつがここを提案したくせに………って瑠夏は?」
さっき走って行った流星の隣に瑠夏はいなかった。まさか……。
「置いて行ったのか……?」
「それじゃあ、今瑠夏は一人って事?」
「多分。」
流星の奴……。瑠夏を置いて行くなよ。
「駆け足で、俺達も出口を急ごう。」
「えっ?瑠夏はどうするの?」
「九条を出したあとに俺が戻る。お前、怖いの無理なんだろ。一人じゃ心細いだろ?」
「………ありがとう。」
「走るから、ちゃんとついて来いよ。」
「えっ!?」
俺は九条の手を握り、出口に向かって走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます