女の子の友達と映画を観る事になったんだけど、どうすればいい?
第1話
今日の授業は全て終了し、俺はあくびをしながら席を立ち、廊下に向かおうとしていた。
「あっ、コウコウ。」
俺を呼び止めたのは
「あつ?なんだ?」
「今日……、暇?」
「うーん。まぁ暇だな。」
俺はそう答えると、九条は少しだけ顔を輝かせる。……ん?なんか、いつもと雰囲気が違うような……。
「なら、映画観に行かない?」
「……えっ?なんで俺?」
「本当は友達と行くつもりだったんだけど、ドタキャンされちゃってさ。チケットあるし、勿体ないから誰かと観に行けたらなーって。」
「それで、たまたま俺の姿が視界に映り、俺に決めたと?」
「うん。まぁ、そんな感じ……。」
なるほど、まぁ、今この教室にはほとんど人はいないし、九条が誘える人もいなさそうだしな。
「………いいよ。映画観に行くか。」
「本当?ありがとう!」
「お、おう。」
な、何故だ。なぜ今、この暴力美少女に照れてしまったのだ……。山本光真よ。
俺はは照れた事を隠し、平静を装って、九条と共に廊下を歩いた。
***
学校を出ると、俺はスマホを取り出し瑠夏にメールで飯はいらないと伝え、学校の最寄り駅に向かう。
「そういえば、コウコウと二人で遊びに行くなんて初めてだよね。」
「あ、あぁ。と言うか遊びに行く事自体初めてだけどな。」
「それは確かに。」
九条が微笑む。
………ん?微笑む?九条が?
今日はなんか雰囲気違うと思ってた理由がわかったぞ。こいつ、いつもより女の子ぽい。雰囲気が違いすぎてなんか逆に怖くなってきた……。
「どうしたの?」
「えっ……、あっ、どうもしないです。」
「?、なんで敬語?」
「……気にしないでくれ。」
あ、あはははと苦笑いしながら歩いていると駅のホームに着き、ちょうど電車が到着し、俺と九条はそれに乗り込む。
人は少なく、席も空いていた。
俺が先に椅子に座ると九条もすぐ隣に座りだす。
……九条から良い匂いがした。
なんで女の子はこんなにも良い匂いがするんだろう。これは錯覚によるものなのだろうか?
……心臓の鼓動が早くなってきた。
いかん。九条を女の子として意識してしまって隣が見れない!やべぇ……、落ち着け俺!俺は主人公になる男だろ!!
「ん?どうしたの?」
「–––––深呼吸をしただけだ。気にすんな。」
「なんで深呼吸?」
「気にすんな。」
「えっ?わ、わかった?」
理解できていなさそうな九条を見る。
……うん。だいぶマシになってきた。これなら大丈夫か。
「……そういえばなんの映画見るんだ?聞くの忘れてた。」
俺はいつもの様子を演じ、九条に聞いてみる。
「えー確か、頑張るヒロインって映画。」
「あぁ、聞いた事あるな。確かジャンルはラブコメ映画だったよな。」
「うん。女子の間では結構人気らしい。」
「へー。」
ラブコメと言う事もあり、一応チェックはしていたが、まさか女子に人気の映画だったとまでは知らなかったな。
それから俺達は何も話さなくなった。というか話す話題がない。
ちらっと九条の方を見てみると、下を向いていて表情がわからなかった。
くっそー。俺にもっと話題があればこんな気まずい展開にならずに済んだのに……。
「はぁ……。」
「ん?どうしたの?」
下を向いていた九条が顔を上げ、俺を見てくる。
………やばい。また鼓動が早くなってきた。
「コウコウ?」
「えっ、あっ、いや……なんでもない。」
「………もしかして、映画観に行くの嫌だった?」
九条が寂しそうな顔でこっちを見てくる……。
「いや、そんな事はないんだ。だから本当に大丈夫。」
「そう?」
「あ、あぁ。」
九条の様子がおかしいせいで、俺まで調子が狂う。
こいつは暴力美少女だ。美少女でも俺に暴力を振るう野蛮な美少女だ。そうだ……。これまでやられてきた事を思い出せ!
俺は今までにやられてきた事を思い出していく。
朝寝に背中を叩かれ、廊下を歩いていると背中を叩かれ、昼休みになると背中を叩かれ……。
いや、どんだけ背中叩くんだよ。こいつは俺に。
–––––おお!なんか冷静になってきたぞ!?
こんな事で冷静になるのはどうかとは思うが、冷静になれればなんでもいい!!
ようやく冷静になれると思っていたら目的の駅に到着し、俺と九条は電車から降りる。
駅を出た後、目の前にあるショッピングモールのネオンモールに入る。
–––––女の子とネオンに遊びに来たのは2回目になるのか。
まさか、こんな短期間で、美少女2人とネオンに遊びに来るとは思わなかったな。
俺と九条はエスカレーターで4階にある映画館にやって来た。
シアターに行く前に、俺はポップコーンを買った。やっぱ映画を見るときにはこれだよな。
その後チケットを使い、シアターに入り、九条の指示され、席に座る。
もちろんだが、九条は隣の席だった。
どうしよう。
手と手が触れ合う展開とか期待してもいいかな?
「……楽しみだな。」
いろんな意味を込めて俺はそう言うと、九条はうなずき、「そうだね」と返した。
そして時間になり、辺りは暗転し、映画が始まった。
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