第3話
今日の授業が全て終わり、俺は帰る用意を済ませ、廊下に出て、流星と合流しようとしたその時。
「光真。」
「ひっ……。」
背後から聞こえて欲しくない声が聞こえてしまった。奴だ。奴が来てしまった。
「どうした。こっちを向けよ光真。」
「あ、あははは。わざわざどうしたんですか?……谷先輩。」
「あたしの事はお姉さんでいいっていつも言ってるだろ?」
俺は恐るおそる振り向き、奴……ではなく俺のより1歳年上の先輩を見る。
––––彼女の名前は
金髪のロングヘアで毛先はカールされており、恐ろしい程に制服を着崩しており、そのせいか、服から谷間が見えている。ちなみに顔は美人だが、ちょっといかつい。
そして何故俺がこんなに恐れているかと言うと、俺が小学生の頃から流星の家に遊びに行くたびに可愛がると言う名の調教をほどこされてきたからだ。この女。谷沙耶香は俺に対して何故かドSなのだ。
小学生の頃から調教されてきた俺が谷先輩に怯えるのは必然の事なのだ。
それにしても何で急に会いに来たんだ?
「そ、それで谷先輩はどうしてここに?」
「だからお姉さんでいいってー!」
「え、遠慮しておきます……。で、何で?」
「流星を探しに来たんだよ。さっき親から連絡あってな。今から全員で飯食いに行くらしいから流星にも伝えろって言われてな。」
「それなら流星にも連絡すればいいのに……。」
「あいつの連絡先持ってないんだよ。この前スマホ変えて、流星の連絡先が消えたんだ。」
「な、なるほど。」
だから直接会いに来たと。そしてそのおかげで俺がこの人と接触してしまったと。うん。いい迷惑だね。俺を巻き込まないでほしいな☆
「それで、どこにいるか知ってるか?」
「まぁ。これから一緒に帰るつもりでしたから。」
「そう。なら案内して。」
「はい……。」
そして、俺と谷先輩はしばらく歩き、流星と合流する。
「おう。遅かったな………って何で姉貴がいるんだ?」
「それはだな–––––。」
そして谷先輩は弟の流星に事情を説明する。
「って事。わかった?」
「おう。わかった。めんどくせぇけど行くか。」
「そ、そうか。なら、俺は今日は一人で帰るよ。」
「あぁ。悪いな。」
「いや、俺こそ今日の昼休みは悪かった。これでチャラにしようぜ。」
「そうだな。」
「それじゃあ。悪いね。光真。また遊びに行くから、楽しみにしててね♡」
「……やめてください♡」
***
俺は谷姉弟を見送ると、俺も下駄箱に向かう。
「あっ。」
その時目に映ったのは瑠夏の姿だった。
男女問わずいろんな人に囲まれながら瑠夏は笑顔を保ちながら歩いていた。
そしてみんなで靴を履き替えた後、みんなと玄関から姿を消した。
「くっそ。なんか気になるじゃねぇーか!」
今日は流星と帰らなくてよかった。
俺は急いで靴を履き替え、瑠夏達の後を追った。
………今の俺はこそこそと隠れながら瑠夏とその取り巻きを追っていた。
数はだいたい10人って所か。その中には他クラスの奴もいるな。
「それで清水さんどこ中だったのー?」
「えー。言ってもわからないと思うよ?」
「いいからいいから教えてよ。」
「えーとね––––。」
……凄い。来て初日なのに溶け込んでやがる。俺にもそのコミュニケーション力を分けろよ。
てか何で後ろでこそこそつけてんだ。恥ずかしくなって来た。
俺が隠れるのをやめ、堂々と立とうとした瞬間。
「ねぇ、これから一緒にファミレスでもどうよ?」
「え、えーと。」
チャラそうな生徒の提案に、ここで初めて瑠夏が動揺を見せた。
俺はすぐさましゃがんで、様子を見る事にする。
「えっ?あ、もしかして用事がある感じ?」
チャラそうな生徒はすぐさま瑠夏の異変に気づき、質問をする。
「う、うん。これからちょっとね。……あっ、それじゃあ私はここでいいから。」
「んー。そうか。じゃあね。瑠夏ちゃん。」
「ん、うん。じゃあね。」
そうやって瑠夏は早足で去って行った。
さて、残るは瑠夏の取り巻き達と、ストーカー紛いな事をしている俺が残ったわけだけど……。どうしようか。
「……俺達だけでファミレス行くか?」
「私達は帰るねー。」
「えー。遊ぼうよー。一緒にさー。」
うわっ、すげーチャラいよ。この男達。俺もここまでとは言わないけど女にずかずかと喋りに行けたらな……。
その後、結局女子組は帰り、残った男子組だけでファミレスに入って行った。瑠夏とか女の子の話で盛り上がるんだろうな。
そして一人残った俺もコンビニでコーヒーを買ってから帰る事にした。
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