許嫁が人気すぎるんだけど、どうすればいい?

第1話

 1日が経ち、今日もまた学校へ行かなくてはならない。めんどくせぇ。

 どうせまた俺が寝てる横で瑠夏に興味ある奴らが騒ぐに決まってる。いっそ、許嫁の事を告白してみんなを黙らせてやろうか?いや、それじゃ今度は俺にみんなが興味持ちそうだし、それに俺のラブコメ計画と俺が築き上げてきた地位が潰れそうだしな……。


 瑠夏は黙ってくれてるし、俺が言うわけにもいかないよな。……俺も瑠夏も我慢するしかないのか。


 俺はため息を着き、待ち合わせのコンビニ向かっていた。今日は谷先輩が現れない事を祈る。


「よっ、光真。そんなびびんなよ。姉貴は来てねぇよ。」

「そ、そうか。ならよかった。」

「それじゃあ行こうぜ。」

「あぁ。」


 よかった。昨日みたいに登校中のイレギュラーはなってはいないようだ。ラブコメにはイレギュラーは付き物だが、今の俺には求めてない。来るのはもう少し後にしてくれ。


 そうして俺と流星は普段のように雑談を交わしながら学校へ向かう。何も変わらない。普通の日常だ。


 主人公を目指している俺だが、最近まで非日常を過ごしすぎたせいで、この普通の日常が愛おしく思えてしまっている。ラブコメは大変なんだな。思ってた以上に。


 それによくよく考えてみると、読者が求めている、主人公達に訪れるハプニングというのは、主人公達の目線になって考えてみると、毎回毎回ハプニングに巻き込まれて迷惑極まりないものだろう。例えば探偵物の漫画だと、どこかへ行くたびに人が死んでいる。そんなのが何回も続くと精神がおかしくなるだろう。


 俺が思っていたより、主人公になる為には覚悟が必要なんだな……。



 そんな事考えながら流星と雑談している内に学校に着いた。俺の計画では、2年生になった時、この学校でようやく俺のラブコメ計画が始動する予定だったんだけどな。


 だが俺には好感度マックスのメインヒロインが出来てしまった。

 その名は清水 瑠夏しみず るか

 同居+許嫁属性ありで更には学校では俺の隣の席にいる。そしてさっき言った通り、好感度はマックス。俺のラブコメが始まる前にこいつのルートがほぼ確定してしまっている。


 2年生になってからヒロイン候補と絡むようになり、誰と結ばれるか悩む予定だったんだけどな……。


 だが、悩んでいても仕方ない。とりあえずは様子見として、瑠夏には完全にはデレないようにしている。


 デレるにしても俺の記憶が戻った後だ。まずは何故瑠夏が俺にデレているのか知らなくちゃいけない。



 教室に着いた俺はいつものルーティーンを行う。


 机に顔を伏せて、目を閉じる。朝読ならぬ朝寝と言うやつだ。

 最近、寝る時間は早くなっているのだが、朝の学校で寝るというのが習慣付いてしまっている。別にその習慣を直す必要がないから俺はこうして習慣通りに寝ているのだ。



 ––––––あれから何分経っただろうか。


 周りから声が聞こえてくる。おそらくほとんどの生徒が教室に集まっているのだろう。

 声は聞こえてくるが、昨日のように隣が馬鹿みたいに騒がしくない。瑠夏の奴、俺の為に本当に言ってくれたのか。


 俺は顔上げると時間は8時30分になっており、ちょうどホームルームが始まる時間だ。仕方ない。起きるか。


 気怠げに体を起こし、なんとなく辺りを見渡す。


 やはりほぼ全員揃っており、まだ朝だと言うのに辺りは賑やかだ。特に俺の隣の席。瑠夏がいる席は賑やかだ。

 てか、もうそろそろ興味を失ってもいい頃合いじゃないのか?他クラスの奴はいなくなったけど、このクラスの生徒の取り巻きの数は転校して来た時とあまり変わってないような……。


 そう思っているとチャイムが鳴り、少し名残惜しそうにみんなは席へ戻って行く。俺は瑠夏の方を見ると、瑠夏と目が合ってしまう。


「お前、疲れねぇの?」

「うん。平気。疲れてないよ。」

「そうか。………何かあったら俺に言えよ。なんとかしてやるからさ。」

「–––––うん。わかった。」


 瑠夏は俺に微笑んだ後、廊下からやって来た先生へ視線を移す。


 俺も先生の方へ視線を移した。

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