第2話 変人
小針の通う
進学校は男子校と女子校に分かれている。
男子は
女子は
進学校であるため、もちろん勉学中心ではあるが、部活動も盛んな学校であった。
特に、文化系部活動はどの部も全国大会への常連だ。
小針が部長を務める音楽部(合唱部)も、例年全国大会への切符を手にしている有名高である。
そんな由緒ある部活の取り纏め役に自分が選ばれた時は、本当に驚いたものだ。
歴代の部長は、カリスマ的力を持つタイプが多く、どちらかといえば独裁的だった。
なのに、先代部長が指名したのは小針だったのだ。
当初、同級生や後輩たちからは、「小針では力不足」「
彼は185センチメートルの長身で、すらっとした知的タイプ。
見た目だけではない。
部活には真面目に皆勤賞で顔を出すくせに、成績は上位。
教師陣からの信頼も厚く、同級生や後輩の勉強が遅れている子の指導も依頼されることがあるくらいだ。
冷静沈着で聡明。
そんな適任者がいるにもかかわらず、だ。
小針が指名された時の混乱と言ったらなかった。
もうすっかり自信の
『お前しかいないだろう?』
『お前が大変な部分はおれたちがカバーする。お前一人で抱えるなよ』
副部長の佐野や学生指揮長の大橋、それから。
『おれは向いていない。部長が務まるのはお前だけだ。小針』
後から聞いた話だと、
そう理解していた小針は、やはりどこか卑屈になっている自分がいるということも自覚していた。
元々そうだ。
思い詰めると周りが見えなくなって、みんなから浮いてしまうのだ。
昔から「変なやつ」「変わっているよね」と囁かれてきた。
中学校まで窮屈で仕方がなかった。
みんなと足並みを揃えることがこんなに難しいなんて思ってもみなかったのだ。
だけど、
そういう変わった人たちの寄せ集めみたいな場所だった。
少しは楽になった。
だけど、それも「少し」だ。
結局は、変なやつ扱いは依然として継続中。
みんな友達だし、いい人だってわかっているけど。
それでも、自分は変なやつだと見られているという感覚は拭い去ることができないのだった。
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