第4話 かんとくの本気
「んで、んで? ちょっと。なんだか重症じゃないか」
窓辺で何度もため息を吐く小針を見て、部員たちは声を潜めた。
あれから、小針は足繁く図書館に通った。
上限である十冊までだったら、いつ借りても、いつ返してもいいのだ。
最初に一冊借りたものの、数日後には数冊追加で借り、そしてその数日後には数冊……。
そんな調子で、結局二〜三日に一回は図書館に足を向けていた。
交代制だと
「交代制じゃないんですか?」と尋ねると「独り身なので、こういう夏休みはおれたちが踏ん張り時なんですよ」と答えた。
菜花のような未婚職員たちは、そういう時期を外して早めか遅めに休みを取るのだという。
社会人とは面倒なものなのだなと小針は思ったが、彼は「そんなことはありませんよ」と微笑んでいた。
いつも落ち着いていて、こんな自分にも敬語で真摯に対応してくれる菜花は素敵な人だと思った。
会う時間が増えるほど、小針はすっかり彼に夢中になっていた。
最初に吐いた嘘なんて、忘れてしまうくらいに。
「今回ばかりは相手を言わないんだよね」
佐野は秋月を見る。
「そうなんだよ。普通は、すぐにどこの誰それと話が始まるものだが」
「聞いても口を割らないのか」
しかし、大橋はすっかり正解を知っている。
だが、ここのところ、一緒に図書館には足を向けていない。
どうやら、大橋とは出食わさないように通っているのは明白の事実だ。
なにせ、志田が教えてくれるのだ。
『今日も来てたよ? 大橋くんの友達』
そう言われるからだ。
来た日を数えてみると、それは尋常ではない数。
これは、結構。
「本気だ」
大橋は心配している三人を見ながら心の中で決心する。
「今日こそ、現場を取り押さえてやる」
大橋はそう呟いて前を向いていた。
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